小学生の頃、祖母ハギはよく僕の背中をかいてくれた。程よい圧力で祖母の指先が初めて僕の背中を上から下へと移動した時こんなに気持ちいいものがこの世の中にあるのかと驚き、何度も何度も背中かいて!とせがんだことを今でもはっきりと覚えている。
 僕がうとうとすると 祖母が手を休める。それに気づいた僕が 背中を左右にゆすって もっとかいて!とリクエストするものだから中々終わらない。たぶん一回平均30分位。
 今思えば祖母も大変だったに違いない。

 祖母ハギは言っていた。「ビルマで戦死したお前のおじいちゃんにも 結婚当初よく背中をかいてあげてたよ。今のお前と同じように随分気持ち良さそうにしとったよ。お前の父さんも、小さい時によくかいてあげたら喜んでた。」

 当時の僕が 祖母が亡くなると日が来ると知っていたら、お返しの背中かきをもっともっとしてあげたのに、僕はしてもらうのがほとんどだった。

 時は流れ 僕にも息子ができた。彼が小学生の時、祖母を思い出し 隣で眠る息子の背中を初めてかいてあげた時がある。よほど気持ち良かったのだろう。疲れて手を止める僕に 思いがけず 息子が背中を左右にゆすり、もっと!をせがんだ瞬間 驚きと嬉しさが込み上げて来て 僕は思った。

 これ!遺伝してる?

 天国で 背中を左右にゆする おじいちゃんの後ろ姿が目に浮かぶ。

 あぁ〜懐かしのハギの手よ!

 僕にも妻と子どもが出来たよ。
 だいぶ年とったけど
 あなたのおかげで みんな元気です。
 ばあちゃんは 元気なん?