私がボディワーカーとして探求しているテーマの一つとして
「現代人のストレスマネジメント」があります。
「耳ひっぱり」、「わりばしワーク」など様々なセルフケアのワークを提案しつづけていますが、世の中に幅広く認めてもらうには「エビデンス」があることが重要です。
なんとか実験データを出したいと思っていたところ、「日経トレンディ」さんより企画のご提案があり、ついに実験を行うことができました。
結果、大変重要な知見が得られましたのでご報告します。
この内容の詳細につきましては、月刊「秘伝」4月号(P122-126)をご参照ください。
今回の実験では、7つのセルフケアワークを行った際の「脳波」と「心拍変動」を測定して効果を確認しました。
得られた重要な知見は以下です。
***********************************************
何もしないでボーとしている状態は、
「頭は休まる」(脳波はリラックスモードになる)が、
「身体(自律神経系)はストレス状態になる」(心拍変動は低下する)。
***********************************************
これはまさしく「壊れてしまった現代人の神経系の状態」を如実に物語る結果でした。
重要なことなので少し丁寧に見てみましょう。
まず、ストレスマネジメントがうまくいっているとはどのような状態なのでしょうか?
一つの答えとしては「自律神経系の調整力が高い状態」であるといえます。
緊張しすぎたらリラックスして、ゆるみすぎていたら少し張りをもたせる、というのが調整力です。
自律神経系の調整力を測るには「心拍変動」(心拍数ではない)をみることが重要です。
今回の実験では、ワークの結果、心拍変動幅(心拍のゆらぎ)が増え、調整力が改善するという傾向が確認されました。
現代人は調整力が低下しているため、緊張したら緊張しっぱなし、ゆるんだらゆるみっぱなしの状態になっています。
では調整力を上げるにはどうすればいいのでしょうか?
「神経系のスイッチを入れ直す」こと、
つまり「覚醒度を上げる」ことが重要です。
私はこの20年間、現代人の神経系の状態を生で観察しつづけてきました。
私が、この仕事についた20年前はみんなピリピリしていました。
つまり、緊張しっぱなしでリラックスできない、つまり過敏状態にある人が多くいました。
ボディワークはリラックスをもたらすという意味で、これらの人々に有効でした。
そして、2018年現在、私は、20年前とは明らかな違いがあることを感じています。
例えば、「お風呂に入ってもリラックスしているかどうかわからない」というような人が増えています。
ピリピリを通り越して、凍りついて無感覚になっているのです。
つまり、「ピリピリ」過敏だった状態から、「カチカチ」に凍りついて無感覚になっている人が多いのです。
カチカチの人は、反応性がとても鈍くなっているのでリラックスを提案しても思ったような反応が得られません。
それよりもまず必要なのは「脳神経系」を一度起こす、つまり「覚醒させること」なのです。
脳神経系の覚醒は「脳幹」が司っています。
脳幹を刺激するには、脳幹にある脳神経12対(目鼻口耳、首、及び内臓)を働かせることが有効です。
耳ひっぱりや割り箸ワークが現代人にとって有効なのは、
ただのリラックスではなく脳神経系の調整力を取り戻すことができるからなのです。
そして、ここから面白いところなのですが、脳神経系の覚醒に関しては、「赤ちゃんとの関わり(子育て)」に大いにヒントがあるのです。
赤ちゃんは、脳神経系が未成熟であるため自分で緊張とリラックスをコントロールできません。
泣き出すと一人では泣き止むことができなかったり、眠いのに眠れなかったりするのはそのせいです。
抱っこして歩くと泣き止んだり、寝たりするのは、脳神経系に覚醒をもたらして調整力を改善させるからなのです。
この視点で赤ちゃんと向き合うと、従来の育児理論とは異なる育児のあり方が見いだせるのです。
(スマホに子育てさせるのは反対の立場です。念のため!)
「現代人のストレスマネジメント」と「育児」。
一見全く無関係な二つをクロスオーバーさせることで大変興味深い知見が得られるのです。
引き続きのご報告を楽しみにお待ちくださいませ!