「究極の椅子」に出会いました | 進化するココロとカラダ
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ボディワーカー(公認ロルファー)の藤本靖がボディワークをはじめとする身体業界および他業界の魅力的な人たちのつながりをサポートする活動を紹介します。朝日カルチャーセンター新宿教室を中心に様々なコラボ企画を提案します。

みなさん、どんな椅子をお使いですか?

 

 

私は高校時代に学校の椅子がまったく合わず身体のバランスを崩したことをきっかけに、かれこれ30年近くも自分にあった椅子を探し続けてきました。

会社員時代は所定の椅子とは別に健康椅子を2脚も持ち込んでローテーションさせてなんとか身体の不調をごまかしていました。

私の椅子三昧のせいで稟議ファイルがとても取りづらくなっていたので同じ課の人には大変なご迷惑をおかけしたかとおもいます。いまさらながら本当にごめんなさい。

 

その後も本命の椅子と出会うことなく、「人間工学に基づく・・・」のフレーズに乗せられるがままに高額な高機能チェアを買ってはすぐ使わなくなって買い換えるというボディワーカーにはあるまじき行為を繰り返していました。

もう本命の相手とは出会うことはないとあきらめて椅子のことはできるだけ考えないで見て見ぬふりをして自分の心と身体に嘘をつきながら生活しておりました。

 

そして「自分に合った椅子が欲しい!」という気持ちがもう無くなりはじめた頃に、突然怪しいメールが来ました。

「藤本さんの身体理論に基づいて『椅子』を作ったのでご覧になりませんか?」

30年かけて、やっと椅子のことを忘れることができたのにこの誘惑。

数日悩んだのですが、この誘惑に抗えるはずもなく椅子を製作した方の展示会をのぞいてみることにしました。こじんまりとした会場の中心にこの方がいらっしゃいました。

 

椅子職人、中根和広さん。

 

理学系の研究者のような鋭い眼光で不思議な椅子の上に腰掛けてらっしゃいました。そして、これが例の椅子です。

 

アート作品のような「シリオ3」。

 

健康椅子とは似ても似つかぬアート作品のような魅力的な流線型をもったシンプルなオブジェのような出で立ち。そして、坐ってみると私が長年求め続けていた椅子であることがすぐにわかりました。

 

「自然に骨盤が立つ、背筋が伸びる」

「目がパチッと開いて、頭がスッキリする」

「椅子と身体が一体化する、義足のような椅子」

「自分の脚が椅子の脚の一部であり、椅子の脚が自分の脚の一部である」

 

その他実際に椅子を使っている方からは

 

「とにかく座り続けたくなる」

「声が出しやすくなったので放送スタジオで使っている」

「身体とのつながりを感じる」

 

などの声をいただいています。

 

私が最も衝撃を受けたのは、「鼠径部(股関節)の詰まりが全くないこと」。

逆にいうとこれまでの人生、椅子に座っている間はずっと鼠径部を詰まらせ続けてきたのかとおもうと、いまこの椅子に出会えて本当によかったと感謝しています。

 

勿論、身体に関わるものなので個人の好みがあります。万人にこの椅子が合うかどうかはわかりません。自分の身体には合わないという方もきっといるはずです。

 

ただ、既存の人間工学とは全く異なる発想で作られたこの椅子を一度は体験してみる価値があるとはおもいます。

尊敬する中根さんと、究極の椅子「シリオ3」。

 

 

少し話を戻しますが、私の「身体理論に基づいた椅子」とはどういうことなのでしょうか?

拙著「疲れない身体をいっきに手に入れる本」(講談社)の中で、楽に坐る方法を紹介しています。

 

『疲れない身体をいっきに手に入れる本」(講談社)より

 

 

「立つ時は、左右の足裏という二つの支持面がある。坐る時はこれにお尻というもう一つの支持面が増えて、三点で身体を支えるので身体重心は自由に変動することができ、姿勢が固まったり、疲れたりしない」というのが「楽に椅子に座る」ためのポイントです。私が椅子のことをあまり考えなくなったのはこの「三点支持」の座り方を覚えたからということもあります。

 

 

中根さんからお伺いして、まさしく椅子から転げ落ちるほどびっくりしたことがあります。

 

私が長年信じてきた「人間工学」では「座面と背もたれの間に身体重心がくる」ように椅子は設計されているというのです。これは、立位で働いている二本の足を休めることが目的とおもわれますが、実際には二本の足を「殺して」しまっていることが多いのです。

 

「立位:二点支持」→「座位:三点支持」になるはずが、「立位:二点支持」→「座位:二点(お尻と背中)支持」となっているのです。さらにいうと背中は姿勢の支持面としては有効に機能しないので、「座位:一点(お尻)支持」となり、身体の可能性を狭めることとなっているのです。身体重心の変動も制限されるので身体が固まり特定の筋肉ばかりに負担がかかります。

 

例えば、ソファのように安楽を求めるのであれば抗重力筋(背骨をまっすぐにささえる筋肉)を休める、背もたれに重さを預けるような座り方も悪くはありません。ただ、抗重力筋を弛緩させると「脳神経系の覚醒度」は下がります。つまり、背もたれに重さを預けるタイプの高機能チェアはボーとした状態でネットサーフィンをするには最適ですが、まともな思考を働かせるにはイマイチということなのです。

 

一方、三点支持で身体重心の可動性が増えると内耳神経経由で脳神経系が活性化します。集中して仕事のパフォーマンスを上げるにはこちらを選ばない手はないのです。

 

ただ、通常の椅子、特に座面が後傾しているタイプのものは三点支持が非常に難しく、むしろシンプルな丸いす(スツール)のほうがよかったりします。しかし、骨盤(お尻)の感覚が鈍くなっているわれわれ現代人にとっては固くてフラットな丸椅子の上で長時間心地よく座っていることが難しくもあります。

 

 

中根さんのつくった三脚のスツール「シリオ3」は三点支持での安定座位のエッセンスをすべて盛り込んだ究極の椅子なのです。

 

 

それにしても私が長年信じてきた「人間工学」っていったい何なんでしょうか?

現在、枕など、その他の身の回りの生活用品や住宅環境についても調べています。ボディワーク的には人間の身体にはあまり優しくない視点で設計されているものが多く見受けられます。

これからも「既存の人間工学を越えるもの」の開発を進めていく予定なので、ご興味のある方がいらっしゃいましたらぜひ一緒にやりましょう!

 

 

話がずれましたが、中根さんの三脚スツール「シリオ3」です。

中根さんは丹沢の山奥で自然と向き合いながら本当に身体に優しい椅子とはなにかを探求されており、職人というよりは研究者、そして求道者であります。

精緻かつ人間味溢れる椅子をつくる中根さん。

 

そんな中根さんの椅子を必要とされている人の手元に届けたいと願いつつ、あちこちをうろうろする日々を送っておりますが、本日11月15日発売の「アンアン」(マガジンハウス)の「カラダにいいもの大賞」で「シリオ3」がファイナリストに選出され紙面(P23)で紹介されました。

こんなマニアックなものを紹介してくれて「アンアン」さん、本当にありがとうございます!

「アンアン」11月15日発売号「カラダにいいもの大賞」。

 

なお、「カラダにいいもの大賞2017」は、私が推薦した「ドクターアーチ」が選ばれました(P16)。これ本当に気持ちいいんです。

前回の「ヒモトレ」に続いて2年連続で私の推薦した商品を大賞に選んでくださった「アンアン」さん、マニアックすぎます。本当にありがとうございます。これからもボディワークの普及にぜひご協力下さいませ!

 

大賞の「アーチドクター」。

 

中根さんの「シリオ3」は、「身長、机の高さ、使用目的」に合わせてセミオーダーで注文する形になっています。ご興味を持って下さった方は下記サイトをご覧くださいませ。注文や商品に関する質問などはサイト内にある連絡先から中根さんにお問い合わせ下さい。

https://www.yukichair.com/ 

(中根さんのサイト。連絡先はこちらにあります。)

 

 

こちらは中根さんが作って下さった「シリオベビー」。これに坐ると9ヶ月の息子は大変上機嫌になり、表情が凜々しくなります。やっぱり椅子は大事ですね。

「シリオベビー」にすわってご機嫌の9ヶ月の息子。