〈民音ハートフル・インタビュー 明日へつなぐ芸術の力〉 中国雑技団 芸術監督 孫力力さん2024年3月27日

 ――民音公演「中国雑技団 MIRACLE☆ZATSUGI」を拝見し、ダイナミックさと繊細さを兼ね備えた演技に驚き、感動しました。孫さんは、いつごろから雑技に興味を持たれたのでしょうか。
 
 喜んでもらえて、光栄です。私の父は黒竜江省の省都ハルビンの雑技団で団長を務め、母も京劇院の団長でした。そのため、物心がついた時から雑技が大好きでした。しかし、家族は「雑技よりも勉強をしなさい」と大反対。そこで、こっそり雑技団に通って練習していました(笑)。
 
 何度もお願いし、ようやく雑技団への入団が認められました。その後、練習を重ねる中、物おじしない性格が良かったのか、9歳でステージに立つことができました。
 
 1985年からは、現在の中国雑技団に所属しています。今は芸術監督となり、舞台に立つことはありませんが、雑技への情熱は変わりません。団員たちと一緒に演目をつくり上げる喜びは、何ものにも代えがたい。
 
 ――雑技の魅力とは何ですか。
 
 人間には不可能だと思われる限界に挑戦する。そして常に新しいことに挑み、向上し続ける――そこに、雑技の魅力があると思います。この飽くなき向上心が、観客に勇気や感動を与えているのだと確信します。
 
 また、言葉が分からなくても、雑技は演技で心を通わすことができます。そういった意味で、雑技は“世界の共通語”だと自負しています。
 
 雑技の世界には「以人駕物」(人が物を操作する)という言葉があります。例えば、人が単に宙返りするよりも、宙返りしてリングをくぐる方が感動します。
 
 ディアボロ(中国こま)や自転車など、物を使った演目が数多くあるのも、雑技の魅力の一つです。ただ、あまりに完璧な演技を行うと、「あの皿回しのお皿と棒は、くっついているんじゃないの?」といったように、疑われてしまう場合もあります(笑)。
 
 皆さんに喜んでもらえるよう、日々、試行錯誤しています。
 
 ――中国雑技団は1950年、周恩来総理の指導のもとで誕生した、中国で初の国家級の雑技団です。民音創立者の池田先生は74年12月、周総理と会見しました。
 
 その歴史はよく存じ上げています。周総理と池田先生の絆は、中日友好の礎となっています。
 
 かつて周総理が、雑技団のメンバーとお会いしてくださったことがあります。団員の経済状況から食生活に至るまで、こまやかな配慮をしてくださったそうです。
 
 周総理と同じように私たちを最大に尊重してくださったのが、池田先生です。民音公演で来日した折、真心の励ましを送ってくださいました。
 
 私は、先生に直接お会いしたことはありません。しかし、先生が平和や文化を愛されてやまなかったことを肌身で感じました。大変に尊敬していますし、家族のような親しみを抱いています。
 
 池田先生は「文化は、その民族や国家を理解する、最も有効な手がかりとなる」と述べておられます。その言葉のまま、先生は文化の力を通して、中日友好に多大な尽力をされました。
 
 この功績をたたえたいと、中国雑技団は2010年、池田先生に団として最高の栄誉である「最高顧問」の称号を贈らせていただきました。
 
 私は「中日友好子々孫々」という言葉を大事にしています。私たちは、周総理、池田先生が開いてくださった友誼の道を広げる“中日友好の継承者”として、これからも最高の舞台を追求していきます。

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