老害の人(TVドラマ)NHK 5/5~6/2放送 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

原作 内館牧子
脚本 小嶋健作、大島まり菜、渡辺克彦
音楽 安川午朗
エンディング曲 各話の最後で紹介

キャスト   高齢者の年齢を併記
戸山福太郎  伊東四朗 「雀躍堂」前社長 (86)
戸山明代   夏川結衣 福太郎の娘
戸山純市   勝村政信 明代の夫(娘婿)
戸山 俊           望月歩  明代の息子
戸山梨子   木竜麻生 俊の姉
戸山八重   田島令子 福太郎の亡き妻(75)

吉田武      前田吟(80)
吉田桃子   日色ともゑ 武の妻(82)
竹下勇三         小倉蒼蛙(小倉 一郎)クリーニング店(72)
竹下安志   テイ龍進 勇三の息子
竹下剛    室井響 勇三の孫
林 春子           白川和子(76)
林 里枝           羽田美智子 母春子と二人暮らしの娘(未婚)
村井サキ   三田佳子(82) 
松木達夫   斉木しげる 「松木ファーム」の農園主(74)
松木美代子  久世星佳 達夫の妻(58)
藤田聡    今井悠貴 梨子の夫
佐多道彦   宇野祥平 レストラン「シェ・サタ」のシェフ
山本和美   高橋惠子 福太郎の元部下(69)

熟女パブ「とば口」
マスター   風間杜夫(75)
ヴァネッサ  根岸季衣(70)
ケイト    松金よね子(74)
ジェシカ   柴田理恵(65)
スーザン   三田佳子(82)

感想
内館牧子の作品は一つも読んだことがないが朝ドラの「ひらり」の原作者とはびっくり。横綱審議会委員で良く知られていた。

主人公の伊東四朗を中心に高齢男女のオンパレード。
社長を娘婿に譲った筈の福太郎が、仕事の邪魔をして娘 明代にこっぴどく叱られるが、華麗(加齢)なる逆襲。物置同然だった「商品戦略室」をサロンにして近所の老人たちと活動を始める。
福太郎が当初から口にしていた伝説の女子社員「山本和美」が出て来るのは第4回から。完全スッピンの潔さ。

ドラマとしてはそれほどの「老害色」は感じなかったが、熟女パブ「とば口」の破壊力はスゴかった(笑)

この店、原作にはないらしい(びっくり!)
高血圧ランキングなんて掲示もあるし・・・

後半特に描かれるのは専業主婦として子育てをこなし、孫まで儲けた明代と、未婚のまま母と暮らす里枝との対比。
そこへ、同じく未婚のまま介護の末母を亡くした和美が加わる。

さほど深いものはないが、こうした老人俳優の使い道は十分にあるなと感じた。ガンバレ!(お互い)
特に三田佳子の82歳はアッパレ!

あと毎回エンドロールに流れる昭和歌謡が、なかなか良かった。
さらば恋人     山本潤子(1話)
歓送の歌      中西保志(2話)
女の証し      加川良(3話)
涙くんさよなら   ダ・カーポ(4話)
あなたがいるから  森山良子(5話)

各話の最後に曲のリンクを貼ってある。


あらすじ
第1話 5/5
相関図

 

ボードゲーム製作会社「雀躍堂」の社長 戸山福太郎は妻 八重の死をきっかけに娘 明代の婿 純市に社長の座を譲った。


数年前の、八重の通夜風景。


俳句好きの友人吉田武と、その妻桃子。クリーニング店の竹下勇三。一番元気そうな林春子と、その娘 里枝。


引退を宣言する福太郎に「商品戦略室長」を授ける純市。
これからは旅行をする、と張り切る福太郎。

 

現在はコロナ禍の始まり。急に思いついた福太郎が出社し、物置状態になっている「商品戦略室」を嘆く。
そして、かつて優秀な女子社員「山本和美」を登用して業績を上げた自慢話を社員に撒き散らす。
野菜農園「松木ファーム」でアルバイトをしている明代の息子 俊は、高校を卒業したら松木に弟子入りして農家になると言い出した。反対する両親に対し「5年やってみろ」と祖父の福太郎。

松木夫妻

戸山一家



さらば恋人 山本潤子

 


第2話 5/12
明代に言われ、松木のところへ弟子入りの件を撤回に行った筈の純市だが、農作業を手伝ううちに「よろしく頼みます」状態に。
松木ファームが野菜を納めているイタリアン・レストラン「シェ・サタ」に福太郎を招待する俊。
そこでクレームを出す老婦人に遭遇。
ランチにバジルを入れない様前回言った、と言い張る。
結局食べずに料金だけ払って出て行った老女。

明代の付き添いでワクチン接種会場へ行った福太郎は、そこで係員とトラブルになっている、先日のレストランのクレーマー老女を見つける。

何とかその場から移動させて自己紹介すると、相手が名刺を出した。元公民館 館長「村井サキ」だという。
その後会社に顔を出した福太郎は、商談に来た若い経営者に、ウチと協業出来る事を誇りに思えとブチ上げる。
それが原因で商談が潰れた事を純市から聞いた明代は、福太郎に「今後会社に口を出さないで」と通告。

素直に引き下がる福太郎。


 

一方吉田武の妻 桃子がコロナで入院した。

錯乱して病院の壁に頭を打ち付ける武を、明代らが引き戻す。
家から居なくなった武。公園で武を見つけた俊が連れ帰る。

歓送の歌 中西保志

 


第3話 5/19
重症化することなく桃子が退院した。不幸中の幸い。


明代は福太郎に、以前は言い過ぎたと謝る。

福太郎も「自分を見失っていた」と素直に返す。
夏も終わり平穏な日々が過ぎるが、福太郎があのクレーマーの村井サキと喫茶店で話し込んでいるのが発見された。
 

新年となり、古参社員が純市宅に「大変です!」と駆け込む。
皆で慌てて会社に行くと商品戦略室に「若鮎サロン」という看板が掲げられ、中には福太郎始め例の老人たちが。サキも居た。


俺たちは世間からの厄介者。だから老人を励ますサロンを作る。
どうせ一ケ月も続かないから、と静観する明代たち。
ある日娘の梨子を訪ねる明代。彼氏が出来て入籍したという。あと7ケ月で生まれる。相手は22歳で臨床工学技士(エクモ担当)
後日福太郎がそこへ訪れる。緊張の夫 藤田聡。「君かー」と挨拶する福太郎。謝る聡に「エクモ使える奴は善人・・」
お父さんには直接伝えるんだな。受け止めてくれる、と福太郎。
だが度量はなかった・・・

カフェを開くために老人たちが奔走するが「まんぼう(まん延防止等重点措置)」のため開店が何度も延期。吉田夫妻、勇三も家人に止められて参加中止。結局福太郎とサキだけが集まる。
ようやく会社にカフェがオープン。俳句に花札等のコンテンツで、カフェは順調に続いた(明代たちの読みは外れる)
 

コロナで面会出来ない中、梨子が男児を産んだ。福太郎に、子供の名は寿太郎にしたいと言い出す聡。「めでたすぎるな・・・」
春子が娘の里枝とあんみつを食べながら、いつものグチ「いずれ私が死ぬんだよ」を言うと里枝が急に
「私、そのあとどうしよう」と深刻になる。
それを相談した春子が明代に、あなたから結婚するよう勧めてみてと頼む。「私からだとカドがたちますよ・・・」

女の証し 加川良

 


第4話 5/26
「シェ・サタ」で食事をする春子と里枝。
そこに呼び出されて来た明代。

福太郎が孫の寿太郎の写真を見せると言い「梨子ちゃんは偉い」とこれ見よがしに褒める春子。
シェフの佐多が挨拶に来た。

料理の説明の時、野菜は俊君か持って来てくれると加える佐多。

佐多が独り身と聞いて、里枝の事まで持ち出す春子。

何なの?この集まり!と言って席を立つ里枝。
追う明代に、佐多とは付き合う前に振られたと話す里枝。

当時彼女がいた。夫、子、孫もいる明代に不満をぶちまける里枝。それでも大変だと言う明代に「苦労自慢?」と切り返す。
ボランティアの事までけなされた明代が怒る。立ち去る里枝。

竹下クリーニング店の剛が俊と話す。父親がパブ通いをしていると言う。母親は昔、客と駆け落ちして去ったと話した。

そんな剛には少し悪そうな友達がついていた。
帰宅した純市に、体臭が気になるから別で寝ると言い出す明代。
ある日の会社帰り、竹下クリーニングの二代目 安志に飲みに誘われる純市。そこは熟女パブ「とば口」だった。


酒も飲めないのに付き合う純市。

そこに勇三が現れ親子対面。
家にあったクーポン券で来たという。孫の剛に悪い友達がついていると心配。安志に「お前が欲してたのは母性かー」と勇三。

2023年春。「若鮎サロン」開設から一年。覇気のない純市。
「とば口」の常連になった純市だが、水割りはウィスキー3滴。
福太郎のグチを話す純市は、新人のスーザンを紹介される。


「スーザン・サキ・アンダーソンです」と挨拶。
何とそれはサキだった。店でも人気を得ている。
バレちゃった。もうサロンには行けないと嘆くサキは「(口)チャックでお願いします」福太郎には私から話すと言った。
毎晩飲んで帰る様になった純市に閉口の明代。

例によって「とば口」で純市が飲んでいると、勇三が福太郎を連れて来た。

状況を知られてしまった純市は、悪酔いして福太郎にネチネチと絡む。そのあげく酔いつぶれた純市。
帰宅した純市をリビングまで引きずるのを手伝った俊に「こいつの本性を見た。早く社長になってくれ」と頼む福太郎。
明代が、今日世話をした秋田の客から聞いた伝説の事務員「山本和美」の消息を福太郎に話す。母親の介護を長年していたが、3年前に亡くなり、引きこもり生活をしているという。

数年前に途切れた年賀状を見る福太郎。


明代と共に山本和美を訪ねる福太郎。だが玄関は開かない。


玄関先で様々な話をするが応答なく、福太郎が帰ろうとすると玄関が開いた。埼玉に行かないか?と誘う福太郎に頷く和美。


福太郎の家で思いを吐露する和美。

近くにアパートを借りる事になる。

 

和美をサロンにも連れて行ったが打ち解けられない。
サキは「なかなかのツワモノね」と評した。
ある時、歌を歌うことを誘うと一人で歌い出した和美。
「涙くんさよなら」しみじみと聴き入るメンバー。
一人で帰ろうとする和美を追いかけるサキ。事情はあろうが、ここ数日の態度は褒められない。歌もしみったれてる・・・
福太郎さんは、あなたに自分を取り戻して欲しいと思っている、と言って立ち去るサキ。
そんなサキに、どこまでも付いて行く和美。
あげくの果てに、サキの背に倒れ込んだ和美。


涙くんさよなら ダ・カーポ

 


第5話 6/2
和美の不調は空腹からだった。ラーメンを奢ってもらう和美。


生活保護を受けている身で、福太郎から少し金も貰っているが、入るアパートの敷金ぐらいは作ろうと節約しているという。
年取った者は世の役に立たない。

嘘をついてまで人と付き合いたくない・・・
サキはそこで別れようとするが、和美のスラックスの裾がほつれているのを見て、自分のアパートに上げる。


缶ビールを出されて速攻で飲む和美。直しを褒める和美に、パートでやっていたと言うサキ。図書館の元館長だったと聞いていた和美が聞くと、パートで働いていた図書館を辞める時、記念に「元図書館 館長」の名刺を作ってくれたという。
たまたま福太郎にその名刺を出したら訂正出来なくなった・・・
サキは亭主と別れて娘を育て上げ、今は孫が居るが娘も離婚して一人で子育て中。コロナのせいで3年会っていない。
バイトに行くから、と出掛けようとするサキが
「あなた、賃金欲しくない?」と和美に持ち掛ける。

熟女パブ「とば口」でサキが和美を連れてフロアに来た。
客に「ジャクリーンです」と挨拶する和美。(胸に若葉マーク)
「生活保護のひきこもり」というサキの紹介に大ウケの客。


喫茶店で春子と話す和美。隣のテーブルには福太郎。
慌てて飛んで来た里枝は、私の事で勝手に相談しないで!と春子に怒った。

自分の話を始める和美。


私は今でも後悔している。母の認知症が出始めた時に、母の友人が見舞いに来ようとしたのを自分の独断で断った。
私が守らなきゃ、という思い込み。母は友達に会いたかったのかも知れない。母なりの人間関係、世界を狭めてしまった・・
母が亡くなると、自分がどう生きればいいか分からなくなった。
お母さんと自分の人生を一緒にしないで。

誰かのためだけに生きないで下さい・・ じっと聞き入る里枝。

姉の梨子に剛の事を話す俊(アブない奴らとつき合っている)
それは剛が決めること、見守るしかないと言う梨子。
「人間関係にも寿命あるのかな・・」と俊。
公園で追われている剛。顔に殴られた傷がある。
見つけ出されたが、その情けない姿に見放される。
 

明代を訪れて謝る里枝。これからは自分のために、したい事をしようと思う、と話す里枝。「幸せでいて欲しい」と返す明代。

福太郎を連れて熟女パブ「とば口」に来た純市。

そこに並んでやって来た二人。
「スーザン・サキ・アンダーソンです」
「ジャクリーン・カズミ・シュナイダーです」


胸を押さえる福太郎。「心筋梗塞の一歩手前だ・・・」


私、演じていた。元館長じゃないの、と打ち明けるサキ。

「若鮎サロン」で、嘘をついていた事を謝るサキ。
和美が弁護する。サキさんの娘は一人で子育てをしており、その援助をするために働いている。気高い人。私に生き直せって言ってくれた。見習いたい。
そして福太郎についても、私を連れ出してくれたと感謝する。

福太郎、明代、俊がリビングに居る。風呂上がりの純市がやって来る。その様子から席を外す福太郎と俊。
体を洗い過ぎると体調が悪くなる、と真剣な純市。
ゴシゴシ洗わなくていいと言う明代。「何か言いたいことがあったけど、とけちゃった」「どこかへ行った?」「行った」
和美さんを連れ帰った時、純ちゃん何も言わなくてホッとした。
何で好きになったか考えた。昔、私たちには二人だけしかいなかった。一度手放したら二度と手に入らない・・・
明代がいたから今までやって来れた、と返す純市。


福太郎と和美がボードゲームをやっている。


福太郎さんは私の初恋の人だったと話す和美。恋に恋していた。
気付かなかった、と言う福太郎は和美に「あなた、くにへ帰れるよ。お母さんの墓参り出来ます!」と言った。
「私も、それ言おうとしてました」

和美と会うサキは、手作りのハンドバッグをプレゼント。


「明日帰るのね。ここでお別れしましょう」
あの時、サキさんについて行って良かったと話す和美。
久しぶりに人に叱られて、嬉しかった・・・

クリーニング店を手伝うようになった剛。
「松木ファーム」で働いている俊のところへ、勇三と安志に連れられて剛が来た。黙々と作業をする俊だが、作業で刺している棒を剛に分け与えた。


レストラン「シェ・サタ」で佐多から料理の説明を聞く里枝。
ヘタな冗談で受け答えをする佐多。



2023年6月。

福太郎の、85歳の誕生祝いパーティーが開かれた。
準備が出来るまでの間、亡き妻八重との思い出に耽る福太郎。


今生きているのはお前のおかげ。今言う。ありがとう。
もうすぐそっちへ行くからな。でもまだだぞ。


明代の呼ぶ声が聞こえる。

 

あなたがいるから 森山良子