舟を編む 〜私、辞書つくります〜 1~5話(全10話) NHKBS 2/18~ | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

レビュー 6~10話

 

原作 三浦しをん『舟を編む』
脚本 蛭田直美
演出 塚本連平、麻生学

キャスト
岸辺みどり   - 池田エライザ(幼少期:宮崎莉里沙)
馬締光也      - 野田洋次郎 辞書編集部主任 
西岡正志      - 向井理 宣伝部 元編集部。馬締の友人
荒木公平      - 岩松了 社外編集者
佐々木薫      - 渡辺真起子 契約社員
天童充         - 前田旺志郎 学生アルバイト
松本朋佑      - 柴田恭兵 国語学者。『大渡海』の監修者
宮本慎一郎   - 矢本悠馬 「あけぼの製紙」の用紙担当
馬締香具矢   - 美村里江 馬締の妻。割烹「月の裏」の料理長
周辺人物
渡瀬凛子     - 伊藤歩 「VIVIAN」編集長(1話)
中村昇平             - 鈴木伸之 みどりの彼氏(1、2話)
秋野蘭太郎          - 勝村政信 明峰文化大学 教授(3話)
夏川実          - 肥後克広 イラストレーター(4話)    
夏川颯太     - 戸塚純貴 夏川の息子(4話)
小林愛斗(まなと) - 阿久津将真(5話)
小林恵美     - 村川絵梨 愛斗の母(5話)

岸辺若葉             - 森口瑤子  みどりの母(5話)
岸辺さつき          - 金澤美穂  みどりの姉(5話)


感想
映画の「舟を編む」は数年前のTV放送時に観ている。辞書出版というスパンの長い事業が丁寧に描かれて印象深かったが、映画の尺に収めるのにはやや無理があった。
今回馬締を演じるのがRADWIMPSのボーカル野田洋次郎。

そして岸辺みどり目線の話、という事で視聴を始めた。
野田がイイ。以前朝ドラの「エール」で作曲家の木枯正人を演じており、けっこう印象に残っていた。
ニュートラルな演技が心に沁みて来る。
池田エライザの演技を観るのはほぼ初めてだが、好感が持てる。
本人自身の左利きが見事にマッチしている。

物語は、ファッション誌の編集に携わっていた岸辺みどりが、その社の辞書編集部に移動した事で様々な経験をして行くもの。
基本「いい人」の集まりで、最初アウェー感満載だったみどりも慣れるに従い、辞書作りの魅力にハマって行く姿が心地よい。

毎回何かしら「ホロっ」とさせられるエピソードがあり、長尺なりの魅力が引き出せている。
「あぶない刑事」の柴田恭兵が国語学者なんて!と思ったがさすが役者、何の違和感もなく演じている。

辞書制作作業と共に、みどりと母親との確執の原因も判明。それの根底にあったのも「言葉」だった。いいエピソード。

後半は、紙の辞書にクレームを出す社長の出現で波乱含み。


あらすじ
第1話 2/18
朝日の海辺で涙する女性。「嘆息」「涕泣」「嗚咽」「慟哭」
・・・
出版社 玄武書房のファッション誌「VIVIAN」の編集部に居る岸辺みどり。編集長の渡瀬凛子から、同誌の廃刊を告げられる。
大部分はWeb版に移行するが、みどりは現業部門に残るという。

移動した部署は「辞書編集部」担当主任は馬締光也。
その名の通りマジメ一本。以前ランチの時「上がる」の言葉について訊かれた事を思い出すみどり。

部署には契約社員の佐々木薫と学生バイトの天童充が。

何かにつけ舌打ちする天童。
家に帰って恋人の昇平にグチをこぼすみどり。
昇平は応募する写真の題材に朝日を選ぶが「朝日なんて」と否定的なみどりに穏やかでない雰囲気。

引き出しのキッチリした収納を見て「あなたは辞書作りに向いている」と言う馬締。意味が良く分からないみどり。
みどりの歓迎会が小料理屋「月の裏」で開かれる。会社の3人に加えて辞書監修者の松本朋佑と、社外編集者の荒木公平が参加。紹介された時荒木が「右の語の解釈は?」と問い、みどりは右向きの矢印を出した。場が凍り付く。
「辞書なんて持ってないし、作りたいなんて思ったことない」
それを聞いて天童がキレて退席。
松本がとりなして「檄オコプンプン丸」でしたね、とフォロー。この言葉が人の心を軽くしていると言った。


自分らの辞書「大渡海」を「言葉の海を渡る舟」だと話す松本。
取り組んで12年。完成にはあと3年かかる・・・
言葉には全て生まれる理由があると説く松本。「私なんて」と呟くみどりに「なんて」を辞書で調べてみて下さいと言う松本。

帰宅すると昇平が居なかった。「なんて」を辞書で引くみどり。
その用例に「軽視する気持ちを込めて」とあるのを見て愕然。
皆が離れて行った原因はこれだった・・・なんて なんて
昇平のカメラが全てなくなっているのに気付き、彼が行った撮影場所の海岸に立つみどり。慟哭して涙を流す。右の頬を撫でた。
翌日、右の解釈を「朝日を見ながら泣いた時、先に涙が乾く側のほっぺた」と馬締に伝えるみどり。
「なんて、素敵な右でしょう」とメモる馬締。


第2話 2/25
私から生まれた「右」をどうしても伝えたくて会社に行った。
そして2時間後「やっと2ページ・・・」私はそれを後悔した・・
銀河堂書房から発売された銀河国語辞典 第五版。それを手分けして第四版と比較する、と説明する馬締。その辞書は小型。

我々が取り組んでいる「大渡海」は中型。
天童は「あ、か、さ」行を担当すると申し出る。
辞書表現の基本を話す馬締。見出し-その意味が「語釈」-使い方の例が「用例」これをセットで「項目」と言う。
作業は、大渡海の見出し語リスト照合と、この辞書の項目の新旧比較を行う事。内容を全部読む膨大な作業。
みどりの担当は「た、な、は、ま、や、ら、わ、ん」行。不公平だと言うみどりに、含まれる語彙数がまるで違うと言う馬締。
試しにとあ行の「愛」見るみどり。そこには
・恋を感じた相手を特別で大切な人だと思う気持ち、 とある。
昇平を思い出し、しばらく放心のみどり。

それで作業は始めたが、2時間経って進んだのは2ページ。
まともにやったら5ケ月かかる。

夏休みは学生バイトが入るから2ケ月程だとフォローする馬締。
そんな時にあけぼの製紙の用紙担当 宮本が訪ねて来る。大渡海で使う紙の試作が出来たと言って持って来た。1年かけた開発。
だが馬締はヌメリ感がなくなっていると指摘。広辞苑のページを繰って説明。納得して「やり直します」と言う宮本。
宮本の忘れ物をみどりが渡す時、彼が「星の王子さま」の中の「それが好きなのは時間を使ったからだ」という文章を取り上げ貴方は辞書、僕は紙に時間を使いましょう、と提案。

父にメールで「星の王子様」を探してと頼むみどり。

食堂で、以前の仲間と顔を合わせられず事務所でパンを食べるみどり。様子を心配してちょくちょく声をかける馬締。

「単なる失恋です」と言ったみどりに「あきらめて、あきらめて、あきらめて欲しいです」と言った馬締。
その流れで「恋愛」の項を調べ始めるみどり。全部の辞書が異性・男女間の恋愛の事しか書いていない。辞書は典型的事例を提示する必要があるとの見解。馬締は松本と荒木を呼ぶ。
2017年時点では、異性を残す判断だったと言う松本。
同性愛の項はあるが「恋愛」に入ってないのは差別・・・
辞書は時代を追いかけるものだと説明する松本。
ただ、みどりは「恋愛」の語釈検討を指示された。
苦闘するみどりに、天童からLGBTに関するネタメールが届く。
家に戻り馬締の言った「あきらめて」を引いたみどりは昇平に「一回ちゃんと話したい」とメールする。そして会ったみどり。

恋はあったけど愛じゃなかったと謝るみどり。昇平も、愛じゃなかった。甘えてたと返す。「もう1回、無理かな?」と訊くみどり。しばしの沈黙のあと「なーんて」と昇平の肩を一突き。
その時が一番「愛」でした・・・

あきら・める【明らめる】物事の事情・理由をあきらかにする
あきら・める【諦める】望んでいたことの実現が不可能であることを認めて、望みを捨てる。断念する。思い切る。
あい【愛】相手をいつくしむ心。相手のために良かれと願う心。
そして本当に別れた二人。

会社で「恋愛」の語釈を披露するみどり。
「特定の二人の 互いへの思いが 恋になったり愛になったり
時に入り交じったりと 非常に不安定な状態」
「なるほど」と松本。「推敲は必要だが発想は面白い」と荒木。
また「右」について辞書では「お箸を持つ方」とは書いてないと言うみどりに「君のような左ききの人がいるから」と返す荒木。
みどりは日本人のLGBTの割合が7.6%だと資料を見せる。

これは日本人の左ききの割合とほぼ同じ。2020年の刊行ギリギリまで言葉を観察し結論を出そう、と言う松本。
屋上で天童にコーヒーを差し入れるみどりは、天童のパートナー画像を見せられる。それは同性だった。
家賃の安い上司の家に下宿する事になったみどり。その上司とは馬締(実は妻の実家)出迎えた妻 香具矢は、歓迎会の時の

「月の裏」の料理長だった。


第3話 3/3
引っ越し作業を進めるみどり。途中で「縛る」「括る」の言葉で他の事がお留守になる馬締。
作業の合い間に香具矢が、馬締のプロポーズの話をする。手紙が凄かった(便箋15枚!)もう13年。大渡海の編集が始まった頃。あの頃から「どっかに行っちゃう人」だった(言葉の国へ)
 

恋愛の語釈を進めるにあたり漱石の「こころ」を読みなさいと言う松本。「三角関係ドロドロ・・・」と怯むみどり。
その話からもう一人の辞書編集部員の事を話す馬締。
「血潮」の言葉から「~僕の血潮~」とみどりが口ずさむと、やなせたかしの作った歌詞だという。また、辞書に載るのはその人が亡くなってから(行動等で語釈が変わる恐れがあるから)
「生きるって、変わる事なんだ」のみどりの言葉をメモる馬締。
あけぼの製紙の宮本が訪れ、ヌメリ感がなくなったのは「しょうしき」が変わったからだと言った。技術者の定年退職も原因。

今後のフォローを担当させようとする馬締だが固辞するみどり。みどりとの別れ際、星の王子さま」の話をまた持ち出して、共に頑張りましょうと言う宮本。

そんな時、秋野教授からの「水木しげる」の原稿を馬締に渡す佐々木(死亡したため候補に入った)

執筆要領を無視した1頁フルの大作。みどりと一緒に要約をまとめた馬締は佐々木に、秋野先生へ送るよう頼む。
勝手に要約まとめて大丈夫ですかと訊くみどりに、かつて「西行」の語釈で執筆者を怒らせた話をする馬締。

それを収めたのが、もう一人の編集部員だという。
翌日、皆に用事があってみどり一人だけが出社。
そこに秋野教授から激怒の電話。慌てて向かったみどり。水木しげるは秋野が子供の頃に知り、心の支えになって来た作家。
あんな要約は誰でも書ける、自分の原稿を全て使えと言った。
絶望的な状況で戻ると、そこに以前馬締と話していた男が来る。
それが西岡だった。馬締の便箋15枚のラブレターの事も知っていて、西行の時は先生の、学生との不倫ネタで脅したと言う。
また「こころ」の遺書も若い者に自分を伝える手紙だと言った。自分の事を「休んでいる編集部員」だと馬締が言っていたと聞き「じゃあ行こうか」と秋野のところに向かう西岡。

全く譲る気のない秋野に西岡は「想像してみて下さい」と言う。


水木しげるという言葉を耳にした少年が辞書を開く・・・
それは入り口。そのたった数行が「世界」に繋がっている。
どう説明しますか?・・・「漫画家・・・代表作は「ゲゲゲの鬼太郎・・・」
話を知った馬締が宿泊出張を変更して会社に戻って来た。
「大丈夫、解決です。西岡さんか助けてくれました」とみどり。
どうして西岡さんが西行なんですか?と訊くみどりに大渡海で編集中の「西行」の語釈を見せる馬締。
西岡の提案で「遍歴する」を取らずに残した。辞書に「遍歴」は①諸国を回って歩くこと ②いろいろな経験をすること とあった。--あっちこっちフラフラしていた者が、辞書でたまたまこれを見つける。そいつはきっと心強く感じる筈だ。

西行さんも俺と同じだったんだって・・・
馬締に「紙、担当させて下さい」と言うみどり。
家で「しょうしき」を調べるみどり。抄紙機(かみすき)
これが、もう一つの入り口でした。

第4話 3/10
紙の勉強をするために早く家を出ようとするみどりを見送る馬締。玄関の姿見から「みる」の定義に迷い込む馬締。


職場で辞書の紙の色や匂いの違いに驚き調べ回るみどり。また天童の席の辞書が上下逆に並んでいるのを親切で直すと、出社した彼が怒る。逆の方が読むまでのアクションを一つ減らせる。

見て学べ、の言葉に「親方かー」と返すと天童が「ちょっくら肩揉めやー」そこですかさず佐々木が揉みついでにくすぐる・・・

午後からあけぼの製紙に出向き、宮本と打ち合わせるみどり。
馬締は紙の軽量化の要求を出しており、宮本が前回出したものは1㎡当たり2g軽くなるものの、ぬめり感が減ると共に腰もなくなった。そうなるとジャムり易くなる(印刷機に詰まる)・・・

確認にはテスト抄造(試作)が必要だが年1回しかチャンスがないと言う宮本。日程を書き出して2020年/7月刊行から逆算し、試作を作るチャンスは2回あるという。

みどりが「辞書は入り口」という西岡の言葉を伝えると、深く感じ入る宮本。

馬締に連絡を入れて直帰する事にしたみどりに「接待させて下さい」と言う宮本。みどりは香具矢の「月の裏」を選ぶ。

香具矢が馬締の妻と知って驚く宮本。料理の写真を撮って「FACEBOX」に上げると言う宮本。みどりはやっていない。
帰宅時馬締と一緒になるみどり。みどりが越して来て、香具矢と話していた時の事を話す馬締。あんなに声を上げて彼女が笑うのは年1回ぐらいだと言う。編集部でも皆が笑う様になった。

すばらしい才能だと褒められて恐縮のみどり。
実家の話になり、父が1人で住んでいると答えるみどり。
「母は生きてます。フツーに離婚・・・」
部屋で昔の事を思い出すみどり。母親との確執。

宮本のFACEBOXを見ると料理の写真がアップされていた。

そこに「入り口を作る作戦会議」とあるのを見て微笑む。


夏休みになり、天童の後輩5人がバイトで銀河国語辞典の見出し語チェックに参加する事になった。1ケ月ぐらいで・・・と言う馬締に天童が「2週間!行けるよな、お前ら!」「押忍!」

昼食の蕎麦を食べる松本と荒木。13年前を思い出す2人。

荒木の定年延長が叶わず後任を決めるのに苦労したが、馬締君を紹介された。彼を見つけたのは西岡。「馬締君でなかったら、今の辞書編集部はなかった」と言う松本。

岸辺さんが後を継いでくれたら・・・

予定より早く見出し語チェックが終わったため、図版検討に入る馬締。絵に疎い馬締が先送りにしてデッドラインに来ていた。
本来図版は西岡の担当だったが、宣伝部に移動になった。

営業部だった馬締を荒木に推薦したのが西岡。
検討開始。
①アルパカの首、短くないか問題


各資料確認の結果、毛を短く描くことを作者に提案。②河童って徳利持ってたっけ?問題

河童の恩返しの伝説もあるが、俗用の可能性あり修正依頼。

③赤ちゃんが全員天パ問題

4ケ所で掲載の赤ちゃん全て天然パーマ→散らばっており容認

④イグアナ、スペース取り過ぎ問題


尻尾丸めては?と言ってイラストを描くみどり。

混乱を招く、と作家への送付は却下。⑤丑の刻参り、頭のろうそく二本か三本か問題

鉢巻では二本、五徳を逆さにして付けるのは三本。三本と主張する佐々木。午前二時に藁人形を打ち込むには二本では暗すぎ。
何で知ってるんですか?と訊くみどりに
「訊くな(天童)」「訊かないで(佐々木)」・・・ハイ

→三本に決定

 

これらの絵が描かれたのは、一番古いもので10年前だと聞いて驚くみどり。写真でなくイラストが使われるのは、より誇張して特徴を掴み易くするためだと言う馬締。

それに河童は写真が撮れない・・・


のイラストを描いた夏川実さんが2年前に亡くなっていたと伝える佐々木。その息子がイラストの仕事をしていると言う。
編集部を訪れた息子は、翌日データで送ると軽く引き受けた。
抵抗はないかと訊くみどりに、父は仕事に何のこだわりもなかったと返す息子。

父からのメールを受けるみどり。星の王子さまはなかった。
お母さんに聞いてみたら?の追伸に「大丈夫」
家で香具矢に「こだわり」を訊くみどり。お客さんに「おいしい」って思ってもらう事。子供の頃から好きだった人から言ってもらいたい言葉はたった二文字だと言うみどりに、自分も言いたい人の筈だから言っちゃえば、こだわりなんか捨てて、と言う香具矢。

翌日、手ブラ河童と三本ロウソクのデータが届く。「完璧!」
夏川実氏の自宅に線香を上げに行った馬締とみどり。息子が描いた油絵があった。そちらで食えずに父と同じ道を行っている。
父もそうだったが母にも去られ、食うために仕方なくやっていた仕事・・・お父様はこだわりを持たない事にこだわっていたと思う、と言う馬締。辞書の図版に求めるのは、作家性よりその対象物の本質を描ける技術。図版は改訂があっても残り続ける。
父親の遺影が横顔なのに気付いたみどり。

写真がなくて1枚からトリミングしたという。

元の写真は息子を抱いた姿だった。


あの③天パ問題の作者も、このお父さんだった。

「お父さんはメッチャこだわってました」と言うみどり。
送られて来た天パ問題のイラストを見て涙する息子。


第5話 3/17
本日よりみどりに「大渡海」のゲラチェックが指示される。
担当は「」本丁(ほんちょう)ゲラがマスター。
コピー1(校正者チェック)、コピー2(専門家チェック)、コピー3(ファクトチェック:事実確認)
これらを纏めて本丁ゲラに書き込む。「全てを疑って下さい」
「信じられるように、疑う・・・」
「今週末、空いてますか?」と訊く馬締。
辞書引き学習会」の準備打ち合わせ。30年続けている。


対象は小1。学習指導要領では辞書を使い始めるのは小3から。
「小1で始めるとハマる」と言う荒木。引くのではなく「読む」
「ジーションズ」の練習を屋上でやらされるみどり。


その途中、姉からの電話で次の日曜母の誕生祝いをそちらでやるからと、場所の予約を頼まれるみどり。
幼い頃の事を思い出す。--あの子、いつもからかって・・・


・・・ちがう、からかってない・・・

今も続くトラウマ。
家で香具矢に、今度の日曜店へ予約入れたいと聞くみどり。

定休日だが「じゃあ開ける。二文字の人でしょ?」

「辞書引き学習会」当日。「辞書引き戦隊"ジーションズ"」のオープニングを天童と踊るみどり。続いて松本がやり方説明。

ランダムに辞書を開き、知った言葉があったら付箋を付ける。
愛斗(まなと)君をフォローするみどり。「くつした」に付箋。

下の漢字を知っており「中にあるのに下?」と訊かれて「下」を引くと「外からはみえないうちがわ」の意味もある。

知りたい言葉があると言って調べる愛斗だがその辞書にはない。代わりの辞書を探しに行くみどりだが、その間に隣の女の子の辞書を取ろうとして揉めた愛斗は、教室から逃げ出した。

松本の指示で愛斗を追うみどり。

今度ここに来て一緒に調べましょう、と名刺を渡した。


そこに居た宮本に戦隊コスチュームを見られる。話しているうちに姉からメールが来る。それを見て落ち込むみどり。
宮本に心配されて昔の話をするみどり。実家の店を継ぎたい母と東京で仕事をしたい父とがぶつかって離婚。姉は母の方へ行き自分は父の方へ。母とは自由に会えたが山梨なのでごくたまに。
そんな時には、いつも抱きしめられたくて気を引いた。ある日内緒で、店に母の誕生祝いの飾り付けをして驚かせたが、抱きしめてもらえなかった。母が客に話した「あのコ、いっつもからかって・・」の言葉。「・・ちがう、からかってなんかない・・」
それを延々と引き摺っていた。慰める宮本には、親から疎まれて育った過去があった。うまく行かなかったらオゴると言う宮本。

「月の裏」を訪れる母と姉。少し遅れてみどり。


食事も終わり姉が中座した時、母に「今は何作ってるの?」と訊かれ「別に、大したもんじゃないよ・・」と返すみどり。
話のきっかけが掴めぬまま会食は済み、散開となる。二人は明日19:15分のバスで帰ると言って別れた。母が、包んだ金を渡す。

編集部。受付けにみどりの名刺を持った少年がいるとの連絡。
愛斗だった。学校から歩いて直接来たらしい。
知らせを聞いて飛んで来る母親。「いやだ、見つかってから」


松本がその言葉を訊くと「うむん」だと言う。皆が真剣にリサーチする。タイの寺院、沖縄地方の方言等出すが違うという愛斗。


その言葉をいつ、どの様にして知ったの?と訊く松本。お母さんが買ってくれるソケブーのレアカードが欲しいけど出ない。

お母さんが泣いてた。「うむんじゃなかった」って。だから「うむん」を見つけて、母さんにあげれば泣かなくなると思って・・
駆け付けた母親。

天童が愛斗の相手をしている間に母親から話を聞く皆。

夫との口論の中、勢いで「産むんじゃなかった」と言った(愛斗は寝ていると思って)

心に言葉が追い付かないのでしょうね、と言う松本。

息子を叱るより先に悲しくなるという母に「悲しい」を引かせる。別の意:身にしみていとしい。切ないほどかわいい
愛斗君は「うむん」をそのままの意味に受け取っていると思う、と言う佐々木。大人が思う以上に言葉を知っている・・・
信じるために疑ったと言う馬締。この先もお母さんを信じるために。お母さんがそんな事言う筈がないって、言葉を疑った。
「愛斗さんが納得する「うむん」を生み出しましょう」と松本。

愛斗を呼んで松本が「やっぱり「うむん」はソケブーの仲間でした」と言った。母も頷く。

「でもソケブー百科事典には・・」と言う愛斗に、辞書や百科事典には改訂があり、うむんは次の改訂で入る筈だと話す荒木。「見たい」と言う愛斗に「あります」
馬締が見せたのは例のみどりが描いたイグアナ。


「へんなの」と笑う愛斗は母に「よかったね」

夜、母に電話して「・・私のこと、好き?」と訊くみどり。
「大好きよ」と返す母は「みどりは?」と訊き返す。
僅かな沈黙のあと「当たり前じゃん」「そうか、よかった」
何を言おうとしてたの?と訊かれてあのサプライズの日、どうして抱き締め返してくれなかったかを問うみどり。
「悲しくなっちゃったの」あんたの事がかわいくて、抱きしめちゃったらお父さんのところへ返したくなくなっちゃうって・・
ごめんね、気にしてたんだね、ずっと。
電話は電池切れで切れた。
姉のメール。母からの伝言で
「あんなにからかってくれてありがとう」
どうして疑わなかったの・・・
辞書を調べまくるみどり。そして、ある意味を見つけた。
家を出てバス停に走るみどり。
【からかう】方言 山梨では「手を尽くす」という意味でも使う


母親のバスに間に合った。「私ね、今辞書作ってるんだ・・・」
辞書は言葉の海を渡る舟。しっかり抱きしめてくれた母。


「みどり、しっかりからかうだよ・・・」