レベッカ(映画) 1940年 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

 

監督    アルフレッド・ヒッチコック
脚本    ロバート・E・シャーウッド他
原作    ダフニ・デュ・モーリエ

キャスト
「わたし」名前なし         : ジョーン・フォンテイン
マキシム・ド・ウィンター  : ローレンス・オリヴィエ
ダンバース夫人 *      : ジュディス・アンダーソン  家政婦長
ジャック・ファベル  : ジョージ・サンダース 従兄弟
フランク・クローリー : レジナルド・デニー 管財人
ベアトリス・レイシー   : グラディス・クーパー マキシムの姉
ジャイルズ・レイシー :ナイジェル・ブルース ベアトリスの夫 
ジュリアン大佐   : C・オーブリー・スミス 事件捜査の関係者
ベン               : レオナルド・キャリー レベッカの船の管理人
バン・ホッパー夫人  : フローレンス・ベイツ 「私」の雇い人
ベイカー医師           : レオ・G・キャロル レベッカの主治医
*ウィキペディアでは「ダンヴァース夫人」だが映画の字幕に従った。

感想
初めて観たのは小5の時。高校が近くにあり、そこの定時制の上映会に暗幕をめくって紛れ込んだ(夜遊び少年だったか?)
一番恐怖だったのは、下からの明かりに浮かび上がるダンバース夫人の顔と、ラストの炎上シーン。その後小説も買って数回読んだ。
ヒッチコック映画の中ではこれが一番好き。

素直で伸びやかな女性が名家に嫁ぐ、シンデレラストーリーと思いきや、亡き妻の影に悩まされる。
ダンバース夫人の執拗な嫌がらせ。

だが今回改めて観てみると、それほどのものじゃない。

やはり日本のドラマのいじめシーンに慣れてしまったのかな・・・

小説も、映画でも主人公の名は明かされない。

小説を読んだ時、確か「キャロライン」というのが名だと思っていたが、今回の再視聴で舞踏会の衣装の元になった「ご先祖様」だったと判明。

しかし忘れていた事もあった。マキシムは無実だったと思い込んでいたが、レベッカが仕向けたにせよ暴力を振るったせいで転び、頭を打って死んだ。立派な過失致死罪。
ヒロインについても、ただおとなしいだけの女じゃなくて、レベッカの事を海の底に沈んでいれば良かったとか、死人に口なしとか、ちょいちょいキツい事を言っている。
マキシムが手を出した事を知っても守ろうとする。

それが愛の力なのか、そうなのか?
いやー、レベッカ以上にスゴい女かも知れない・・・

原作者は、私の若い頃は「ダフネ・デュ・モーリア」と言われていた。
物語の「マンダレイ」は架空の場所だが、イギリス最南端のコーンウォールにあるフォーイという町の「Menabilly(メナベリー)」という屋敷だったという。彼女はそこで25年に亘って住んでいたらしい。 
明るい、南フランスのモンテカルロで恋を育んだ後、陰鬱なマンダレイでの新婚生活。
こういった地域、気候の違いも味わわせてくれる。

オマケ
しかし、序盤で彼女が描いたマキシムのスケッチが笑えた。

父親が描いていたという風景画にしとけばよかったのに。


ホッパー夫人が彼女に嫌味を言う時、火の点いたタバコを化粧クリームにネジ込んだのにはビックリ。傍若無人ぶりの演出が効果的。

あらすじ
マンダレイの夢を見る「わたし」
門を潜り、抜け、曲がりくねった道の先に現れる屋敷。

モンテカルロ。崖のふちに立ち下の海を見ている男。

てっきり自殺しようとしていると思い、大声で止める「わたし」

気分を悪くした男性は彼女を追い払った。
 

ホテルのロビーでバン・ホッパー夫人に付き添う「わたし」
そこへ先ほど会った男性マキシミリアム・ド・ウィンターが通りかかり、ホッパー夫人に声を掛けられてコーヒーを共にする。

だがすぐ立ち去ったマキシム。

彼が、妻を失った痛手を引きずっていると話すホッパー夫人。

レストランで花瓶を倒してまごつく「わたし」にマキシムが声をかけ自分のテーブルに座らせた。
自分の立場を、生活のため雇われのお供をしていると話す「わたし」
亡き父が画家だったので自分もスケッチを描くという話のついでに、父と行ったマンダレイの話をする。


自分が生まれた場所、かつての家だったと話すマキシム。

だがもう戻ることはない。
泳ぎの話から溺れた人の話をすると、不機嫌になるマキシム。

後のホッパー夫人の話では、マキシムの妻レベッカは船で水死したという。そして美しかったとも。
テニスに出掛けようとした「わたし」を見つけたマキシムがドライブに誘った。
それからも連日ドライブに誘うマキシム。

その事を快く思わないホッパー夫人は、仕事を押し付けて邪魔した。

このひとときも、そう長くないと思った「わたし」はここ数日の思い出を瓶に詰めたいと言った。
冷たくあしらうマキシムに、なぜ誘ったのですかと問う。
「哀れみ?」と聞いた時、急に車を止めたマキシムは「哀れみと思うなら一人で帰れ!」と言い、今後ド・ウィンター様とは言うな。マキシムと呼んでくれと言った。
もう一言「真珠とサテンはつけるな」

娘が婚約したので、急きょ戻ることに決めたホッパー夫人。
最後の別れをしようとするが、マキシムと連絡がつかない。

時間が迫る中、彼の部屋まで行き別れを告げる「わたし」

「ニューヨークとマンダレイ、どちらがいい?」と言うマキシム。
結婚を申し込んだんだと言われ、ふさわしくない、住む世界が違うと言ったが彼は「私が決める」
ホッパー夫人を呼びつけて結婚を宣言するマキシム。

彼のいない所で、

「よくもぬけぬけと・・・本気で愛されていると?」と言う夫人。
役場で結婚証明書を受け取って、マンダレイに向かう二人。

コーンウォールにあるマンダレイの屋敷では、家政婦長のダンバース夫人を筆頭に、全員が揃って挨拶。

ダンバース夫人は前の妻レベッカと共に来た。

レベッカの死後も屋敷を仕切っている。
財産管理をしているクローリー。
いたる所にレベッカのイニシャル「R」が目についてプレッシャーを感じる「わたし」
書斎の置き物を壊してしまい、引き出しの奥に隠した「わたし」

マキシムの姉ベアトリスが夫婦で訪れた。

ダンバース夫人はレベッカを崇拝していたと言う。

「わたし」に髪形、服装などのアドバイスをするベアトリス。

マキシムと浜辺を散歩する「わたし」
小屋の近くで、飼い犬のジャスパーがそこに向かって走り出す。

制止を聞かずに追う「わたし」
小屋の中には男がおり、中の調度品には「R」のマーク。
「あの女は海に消えた」と言う男。
戻るとマキシムは怒っており、二度と行くなと言った。
マンダレイには来るべきではなかった・・・

クローリーに小屋の事を聞く「わたし」
小屋の男はベン。小屋はレベッカが使っていた。
ある日レベッカが小屋からボートを出して海に出たが戻らず、二か月後に60キロ先で遺体が発見されたという。
常にレベッカと比べられて引け目を感じると言うと、あなたは新鮮、染まっていない。彼を過去かれ引き出せる、と励ますクローリー。
だがどんな人だった?との質問には「知る限り最も美しい人」

「わたし」はドレスを新調したが、マキシムはふさわしくないと言った。
ダンバース夫人が使用人に、書斎の陶器の置き物を盗んだと言い立てて騒ぎになっていた。
「わたし」は自分で割ったと白状
黙っている方がバカだと言うマキシムに不安を訴える「わたし」
ほどなくしてマキシムは仕事でロンドンに行った。

屋敷の窓から顔を見せる男。ダンバース夫人と馴れ馴れしく話している。ジャック・ファベル。レベッカのいとこだと言った。


レベッカが使っていたという西棟に入る「わたし」
いつのまにか近づいていたダンバース夫人が、レベッカの衣装を見せ、生前の彼女のことを話す。


いたたまれず逃げ出す「わたし」
書斎でレベッカの残した手紙の束を見る「わたし」その中にはファベルがレベッカに宛てた密会の約束もあった。
それらを全て捨てるように命じる「わたし」
そしてロンドンから帰って来たマキシムに、仮装舞踏会を開きたいと頼んだ。
ダンバース夫人に手伝わせなさいと言うマキシムに、秘密にしたいから自分でやりたいと言う「わたし」
ダンバース夫人が、廊下に掛かっているご先祖キャロラインの肖像画を指して、再現したら?と提案。

舞踏会当日。「わたし」は肖像画の衣装、帽子を着けて階段を降りた。

振り返って驚愕したマキシムは「着替えてこい!」と命令。
走って部屋に戻った「わたし」に、一年前の奥様を見ているようだった、とささやくダンバース夫人。

奥様のものを奪った、足元にも及ばない・・・・

開いた窓。ぼう然自失の「わたし」のうしろにダンバース夫人。
あなたは邪魔、生きてる価値がない。踏み出すのよ・・・・
動画
その時に大きな火花が散り、我に返る「わたし」
騒ぎは難破船によるものだった。
クローリーに話を聞くと、難破船の下からレベッカの船が出たらしい。

小屋に駆け付けるとマキシムがいた。
この日が来た。レベッカの勝ちだという。船室から遺体が出た。
墓地にいるのははレベッカじゃない。レベッカじゃないのに嘘をついた。
隠し事はしないで、と頼む「わたし」
レベッカを憎んでいたという。最初は心を奪われた。

美人で、応対は完璧。ユーモアもある。
だが優しさ、愛、品位はなかった。
結婚四日目で本性を現した。だが四日で離婚では体裁が悪い。
最高の夫婦として演じて見せるという。

取引きに応じたのが間違いだった。
一族の名誉のための取引き。私を見損なったか・・・
 

良妻を演じたが、脇が甘かった。
ファベルの事は知ってる、と「わたし」
二人はここで密会していた。
ある晩、決着をつけるためにここへ来た。

彼女は体調が悪そうだったが、お腹に子がいると言った。

世継ぎが欲しいでしょ。他人の子を育てるのよ・・・
笑いながら、どうするつもり?私を殺せば?と言った。
殴った記憶がある。つまづいて倒れた。待ってもそのまま。

頭を打って死んだ。
何とかしなければと船に乗せた。船底に穴を明けて沈めた。
他に知っているのは君だけ。
黙っていましょう、と「わたし」
リングでレベッカと分かる。 死人に口なしよ。

そこにクローリーから電話。警察のジュリアン大佐が、遺体確認に出向いてくれと言っている。前の遺体を見間違えた。
世間は注目し、船も調査される。
明日行われる審問に付いて行くという「わたし」
君だけが気がかり。私の愛した無邪気さはもうない。私が奪った・・・

審問でベンが質問を受けるが、病院送りはイヤだと言って要領を得ない。次いでボート業者のタブ。レベッカの船の整備を請け負っていた。故人の操船の腕は確かだったという。

そして重大な問題を指摘。海水弁が開いていた。
航行中は閉めるもの。それで沈んだ。

更に船体の各所に内側から開けられた穴もあった。
次いでマキシムに審問が移る。穴のことは?--知らない。
他にも質問が続き、イラ付くマキシム。
奥様との関係は?と聞かれた時「もう我慢ならない!」と叫ぶマキシム。その時「わたし」が倒れ、騒ぎになる。
おかげで審問は中断。

そこにファベルがやって来る。船の内側から穴が開けられたと聞いて他殺の推理を行い、自分がレベッカの死の当日、彼女からの手紙を受け取っていた事を告げて自殺を否定。
そしてマキシムに、今の仕事の不平を言い、高級車が欲しいとまで言い出した。
ジュリアン大佐を呼び出し、ファベルが見返りを求めたと訴えるマキシム。ファベルが見せた手紙は、病院で診察を受けた後に逢うという密会の内容。
診察は自分たちの子供の事だと言って、ダンバース夫人に主治医を明かせと迫ったファベル。
結婚前から主治医だったロンドンのベーカー医師の事を告げるダンバース夫人。

ベーカー医師を訪れる関係者だが、ド・ウィンターの名には心当りがないという。死亡当日の来訪患者の中に「ダンバース」の名がありレベッカが特定された。
守秘義務を言うが、捜査に必要と云われて語り始めるベーカー医師。
重い病気。妊娠ではない。この日はレントゲン検査の結果を聞きに来た。ウソは通じないと思い真実を話した。病名は「ガン」
進行していて手の施しようがなかった。モルヒネが必要になる時期。

それを聞いても微笑んでいたという。
妙なことを言った。余命は数ケ月と言った時「もっと短い」と。
自殺だという証言を了承する医師。

マキシムの疑いは晴れた。妻に電話を入れるマキシム。
フランクに「黙っていたことがある」と言うマキシム。
私は殺していない。彼女は妊娠したと嘘をついた。

私に殺して欲しくて。だから笑っていたんだ。
もう終わったことだ、とフランク。
ダンバース夫人に電話を入れるファベル。

帰りを急ぐマキシムとフランク。向かう先がやけに明るい。
オーロラじゃない、マンダレイだ!
燃え上がる屋敷に着く。妻は無事だった。


ダンバースが火を点けた。幸せな私たちを見たくなかった・・・
西棟の中にいるダンバース。燃えさかる材木がそこに落ちて来た。
寝具に描かれた「R」のマークが火に包まれる。