ソロモンの偽証 2012年 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

監督  成島出
脚本  真辺克彦
原作  宮部みゆき

 

キャスト
藤野涼子   - 藤野涼子
神原和彦   - 板垣瑞生
三宅樹理   - 石井杏奈
大出俊次   - 清水尋也
浅井松子   - 富田望生
野田健一   - 前田航基
柏木卓也   - 望月歩
井上康夫   - 西村成忠
藤野剛     - 佐々木蔵之介 涼子の父

藤野邦子   - 夏川結衣    涼子の母
三宅未来    - 永作博美    樹理の母
森内恵美子  - 黒木華    
佐々木礼子  - 田畑智子
浅井洋平    - 塚地武雅
浅井敏江    - 池谷のぶえ
小林修造    - 津川雅彦
河野良介    - 嶋田久作
上野素子   - 余貴美子
北尾教諭   - 松重豊
今野努     - 大河内浩
津崎正男   - 小日向文世
中原涼子   - 尾野真千子

 

 

 

予告編(前編)

 

予告編(後編)

 

感想
TVで放送していたもの。その前週に「前編」やっていたのは知っていたがスルー。後編で急に観る気になった。
長い、登場人物が多すぎる、という宮部みゆきらしい映画。

 

中学校の屋上から転落死した生徒を巡る話。学校が抱える校内暴力の歪みと、内向的な少年の心の闇が絡み合う。

複雑に入り組む伏線と、それの回収、後半での和彦の告白。原作がしっかりしているので、長編ながらも破綻なく進められている。

ただ、和彦の行動には違和感が残る。

酒乱の父親が、母親を殺して自身も留置場で自殺。

その後養父母に引き取られて、穏やかな生活を手に入れた和彦。
そんな身の上の和彦に、一種の羨望を抱いていた卓也。

 

この映画で、どうしても気持ちの悪い感覚が残っている・・・・
この告白は、あくまでも和彦の側だけからの証言。そんなに死にたきゃ勝手に死ね、と突き放して自分が有罪だと叫んではいるが、追い詰められて発した言葉だ、という予防線もキッチリと張っている。
これがもし卓也に、生きては行けない様な辛らつな言葉をぶつけ、彼が飛び降りるところまでを和彦が確認していたのだとしたら・・・・

 

この涼子と和彦が、結婚した事を匂わせるような表現もあるが、題名にある「偽証」の一枚下に何かあるかも、と考えるのもひとつのミステリー・・・・


エンディングの、U2の「With Or Without You」。U2が、邦画の主題歌として曲を提供するのは初めてとの事で、この映画の格調を格段に引き上げている。映画の画像とマッチさせたものは全て削除されているので、オリジナル曲で。
和訳を読むと、このドラマとのマッチングの良さを感じる。

 

主演の藤野涼子は当時、役の名前を芸名にしてデビューし、話題になったようだ。
最近では朝ドラ「ひよっこ」の豊子役で、メジャーになっている(ナマイキで、ちょっと嫌いだったが・・・)

 

前編ストーリーはウィキペディアに譲る。

あらすじ
<前編・事件>
江東区立城東第三中学校。クリスマス・イブの夜に、学校の屋上から転落して死亡した男子生徒:柏木卓也。
警察は自殺と断定したが、告発状が学校、担任、クラス長:藤野涼子に配られ、クラスの不良少年、大出俊次が犯人として名指しされる。
告発状がマスコミに流れ、注目が集まる中、女子生徒:浅井松子が事故死。
柏木の友人だった他校生の神原和彦の出現。
真相に近づけず、騒ぐばかりのマスコミに失望した涼子は、生徒たちだけで裁判を行う事を計画。
告発状を真実として検察側につく涼子と、大出の弁護側に立つ和彦。

 

<後編・裁判>
大出家の火事は、父親の自作自演。だがその実行者が、前日の俊次のアリバイを証明した。
涼子は以前、俊次が三宅樹理をいじめている所を見ながら咎めなかったところを卓也に見られており「偽善者、一番悪質だ」と罵られていた。一方野田健一と和彦の説得で、裁判への出廷を決める俊次。

 

卓也の死の直前の行動が問題になっていた。公衆電話からの四本の電話が、午後4時半から一時間半おきに掛けられていた。生徒らで電話近くの聞き込みをするが、誰が話していたかは不明(卓也の可能性含め)。

告発状を、松子と共に出した三宅樹理。松子の死によるショックで声が出なくなっていた。学校の屋上に居て、卓也や俊次を見たという証言を確認する涼子に、筆談で「裁判で話す」。

和彦に対する疑惑。ニュースで知ったという和彦に対し、通夜に来ていたと話す友人。
それに対し「今はまだ話せない」。

 

夏休みに五日間かけて、生徒による裁判が開かれた。

 

初日
担当刑事:佐々木礼子の証言。
卓也は自殺だと断定。俊也の不良行為と昔から対峙して来た。俊也は、瞬間的に手が出るが、長い間恨み続けるような根気はない。
屋上のドアのカギは主事室にそのまま残っており、もし開けるとしたらドライバーの使用か。だが現場にはなかった。
涼子の追及。礼子のやった、俊也への確認に対して、アリバイも調べなかったと断じる。認める礼子。

 

二日目
前校長:津崎正男の証言。
自殺の可能性を指摘。俊也の不登校に対して、説得を続けたが歓迎されなかった。人生に悲観していた。
告発状を隠蔽した。学校運営上取り返しのつかない事をしたが、自分としては生徒を全力で守ろうとした。
涼子の指摘。先生は辞職した事で責任を取った。誠実だった津崎先生を忘れません、と礼をする。

担任:森内恵美子の証言。
告発状を盗んだのは隣人(許せない)。うそつき呼ばわりされた。
担任としての印象。教師二年目。担任は初めて。生徒の目を気にした。俊也には見透かされていた。扱いづらかった?→Yes。

面倒になって、それ以上考えなかった。
死んだと聞いた時、ショックだったが、同時に安堵した(場内ザワつく)。生徒に向き合う覚悟がなかった。申し訳なかった。

二度と教壇に立つつもりはない。

 

三日目
三宅樹理の証言。
出廷してくれた勇気に感謝します、と涼子。
12月24日夜の行動についての確認。夜、外出しましたか? いいえ、家に居ました。
目撃したのは松子。告発状をポストに入れるのにつきあっただけ。

疑うなら松子に聞いて!(怒号が飛び交う)。
本当の事を話して、と言う涼子に「今、話しました。私は何も見ていない」。母親に連れられて、逃げるように退廷する樹里。

 

四日目
大出家に放火した犯人の代理人が出廷。俊也に会った時刻をNHKニュースがやっていた午前0時と証言→喜ぶ俊也。だが、デタラメな告発で嵌められた、とわめく。

どうしてか、原因をどう考えているか?と弁護側の和彦。
そして俊也の今までの悪行を列挙。体育館裏での喫煙。女子生徒を土足で踏みつけ。同級生を殴打。父親の金と権力での揉み消し。
そういう相手は泣いて嫌がりませんでしたか?君を恨み、いじめられてどれだけ苦しかったか、一度でも考えましたか?
嵌められたと思うのは間違い。
暴力で傷付けられた差出人の気持ち判る。それは差出人の命綱。
どんなに苦しかったか。君が追い詰めた。

 

倒れた樹里が、医務室で涼子に話す真相。

告発状の事を俊也に謝ろうと言い出した松子に「あいつらに何されたか忘れたの?私を裏切るつもり?」と返した樹里。
樹里ちゃんの事、嫌いになりたくない、と言って走リ出した直後、車に轢かれた松子。

神原の両親に、ある事を訊ねる涼子。

四つの公衆電話の付近の写真。
・宮川産婦人科→和彦が生まれた場所

・亡くなった両親が住んでいた団地 など

 

五日目
本当の事が判ったら、お前も傷付くかも知れない、と涼子の父。

開廷時、追加の証人を二名申請する涼子。そのうち一名はまだ名前を公表出来ない。
一人目の証人。通話の最後の場所近くの電気店主:小林修造。
該当時刻に公衆電話で話していた相手。出された写真には居なかったが、ここには居るという。そして和彦を指さす。
涼子は、和彦を第二の証人として申請した。

和彦が指定された時刻に、指定された場所へ行き、卓也に電話を掛けた。二人の間では意味のあるゲーム。
久しぶりに会って、死のうと思っていると言われた。
親があんな風に死んで、何でやって行ける。
-平気じゃないけど、忘れたい。
自分の過去から逃げているだけ。口先だけの偽善者。
-どうしたらいいのか。どうしたら信じてくれる?

家族との思い出の場所から電話をかける→それを断らなかった。
僕自身、両親と向き合うのに逃げていた。辛かった、でも楽しかった事も思い出せた。
両親がいつも不幸せだったわけじゃない。七歳の時には判らなかった。
同じくらい、今の両親の事を思った。
卓也は、和彦が途中で落ち込む事を期待していた。

最後のチェックポイント。疲れていた和彦は、明日にしてと言ったが、卓也は11時半に学校の屋上に来いと命令(今日中に会えなけりゃ死ぬ、と)。
雪の降る屋上に卓也が一人。
いい事も思い出した、と言う和彦に怒った卓也。ウソをついている、と非難。
このゲームをやって良かったと言う和彦に「本気で思っているならもっと悪い」。

僕は生きて行く、という言葉に
アル中の人殺しの息子が偉そうな事言うな。お前もそうなる。
-決められたくない。
悪い血の人間は人並みに生きる資格ない。
-友達じゃなかったんだね。僕にはもう無理だよ。
お前が帰るなら、今すぐ飛び降りて死んでやる!
-そんなに死にたきゃ、勝手に死ね!

死んだのを知ったのは?-次の日のニュース。
怖かったですか?-ハイ。

和彦は、自分が有罪だと主張。卓也を見捨てて逃げた。殺意があった。
浅井さんも死ななくてすんだ。僕を殺人罪で裁いてください。

 

審議の後、評決の結果を発表。
大出俊也は無罪。
これで終わらせるな!と叫ぶ和彦に判事の井上は「この裁判は君を裁く法廷ではない」。

和彦は続ける。
母を酔った勢いで殺した父は、留置場で首を吊った。
弱い人。自分が出来る精一杯で清算した。

裁かれなくてはならないのは、あなただけじゃない、と涼子。
俊也にいじめられていた二人を見捨てた。浅井さん、三宅さんは泣き叫んでいた。踏み付けられて、口から血を出して。怖くて助けられなかった。二人を見殺しにした。
浅井さんがいたから、三宅さんは死ななくてすんだ。
勇気があれば、松子さんも死ななくてすんだ。ごめんなさい。

この裁判やった意味ない。→そんな事はない。

未来に立ち向かう勇気。
自分の罪は自分で背負って行くしかない。

いつか自分が乗り越えるために。


涼子の後日談。教師になっていた。
三中の校長と、昔の思い出を話す涼子。私たち、誰も負けなかった。