ペンギン・ハイウェイ     2018年 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

 

監督    石田祐康
脚本    上田誠
原作    森見登美彦

主題歌  宇多田ヒカル「Good Night」

 

キャスト
アオヤマ君           - 北香那
お姉さん            - 蒼井優
ウチダ君              - 釘宮理恵
ハマモトさん           - 潘めぐみ
スズキ君         - 福井美樹
アオヤマ君のお母さん   - 能登麻美子
アオヤマ君の妹        - 久野美咲
アオヤマ君のお父さん   - 西島秀俊
ハマモトさんのお父さん  - 竹中直人

 

予告1

予告2

 

感想
最近アニメ観ていないので「未来のミライ」と天秤にかけてこちらに。
科学好きの少年が、不思議な体験をするストーリー。

賛否が分かれている様だが、自分的には「アリ」。

 

サワリで相対性理論が出て来たが、この現象はちょっと方向性が違うだろう。お父さんとの会話や終盤で良く言われているのが「世界の果て」。ただ、お父さんの言っていた「袋を裏返すと、外の世界が内側に潜り込む」というのとの食い付きはあまり良くない。
これで思い出したのはTV版の「新世紀エヴァンゲリオン」に出て来た使徒レリエル。ディラックの海という厚さ3ナノメートルの虚数空間。

それのダミーとして白黒ツートンの球体を出現させる。
球体に入る事で広大に広がる空間に取り込まれる。
今回ストーリーで扱うとしたら多分「虚数」カナ?

まあ、いいけど・・・・
そういえばエヴァでも「ペンペン」とかいうペンギンがミサトの家の住民だったナ。
「スタニスワフ症候群」は「ソラリス」の作者スタニスワフ・レムへのリスペクトやね。

 

お姉さんの存在が、結局はっきりとは判らない。自分がペンギンを出せる理由、最終的にアオヤマ君が導きだした「人間ではない」事などを最初から知っていたのかどうか。
映画ではアオヤマ君に「調べてみなさい」と言って、彼の研究が進むにつれて自分も知って行くという体裁を取っているが、最初から全部判っていたという見方も出来る。
事件が終わった後で、お姉さんの部屋の荷物が出される場面があったから、それまで確かに生活していた証しは残っていた。

謎は謎として、か・・・・・
予告で蒼井優の声にすごく違和感があったが、人間でない設定ならむしろアリかも(笑)

 

「おっぱい」の連呼にどうも違和感。小4のガキが憧れるものとして、お母さんとは違う物体という意識は判るが、別にこれをストーリーに持ち出す必要はない。

小4にもなればおっぱい(その他含む)見ればまず勃起してもおかしくない。生々しくなる覚悟もなくネジ込むのは軽率(研究対象にするのはキケンだよ、アオヤマ君)
単なる年上の女性に対する憧れの象徴とするなら、もっと控えめ(上品)に。

 

今回ストーリーは海がなく、緑が残る中堅都市で「海」を見た子供たちのファンタジーという解釈をしている。

街並みや、研究対象の「アマゾン」小川の源流を追う中の景色、森の中の広場に出現した「海」。これらの風景が、心地よい空気感を持って流れて来る。
この辺はジブリ映画の得意とするところだが、くっきりとしていない、ちょっとパステル系が入った様な表現は郷愁を誘う。

 

マスコミまで巻き込む事件ではなく、あくまでもローカルな出来事として扱った方が良かったか。

研究者が寄ってたかって小4に敵わないというのも情けないし・・・
それから、お姉さんがペンギンと共に出してしまうジャバウォック。ペンギンを食べてしまうらしいが、これの位置付けがイマイチ不可解。

単に物語の増量剤というのなら、入れてもしようがない。

水路の源流が見つからず、ぐるぐる回っているという事も、途中で打ち捨てられ、中途半端・・・

 

「海」の解釈(アオヤマ君なりの)

この世の破けたところ、もしくはこの世の内側に潜り込んだ、世界の果てかも知れない。

 

「おねいさん」にちょっと憧れる、少年時代の甘酸っぱい記憶は男なら誰でもあるだろうし、その辺をくすぐられると、まあ許してしまうか・・・・
最後にアオヤマ君の決意表明のような独白。

それに続いて宇多田ヒカルのテーマ曲は、十分余韻を楽しめた。

 

トレイラー(エンディング曲)

 

 

あらすじ
小学4年のアオヤマ君。

勉学に努力する事で偉くなれると信じるマジメな少年。
朝の通学時、空き地でペンギンを見かける。

この件について研究しなくてはならない。


ペンギンの話は学校でも騒がれていた。
その件でウチダ君に暴力をふるうスズキ君。いじめっ子。
ウチダ君とは研究仲間。今の研究テーマは「プロジェクト・アマゾン」。近くを流れる川の源流を突きとめるもの。

クラスの女子ハマモトさんはチェスがすごく強く、負ける事が多いアオヤマ君。彼女はアオヤマ君が読んだ「相対性理論」も読んでいた。

 

放課後歯科医院に行くアオヤマ君。そこに居たスズキ君に虫歯の病気(スタニスワフ症候群)で全部抜かないと死ぬ、と脅す。
医院で働いているお姉さんとは友達。彼女もペンギンの話は知っていた。「謎だね」

 

ペンギンが海から陸に上がる時、決まって辿るルートを「ペンギン・ハイウェイ」と言う。これをプロジェクト名としてノートを作るアオヤマ君。

ウチダ君と共に目撃者へのインタビュー。

喫茶店でお姉さんとチェス勝負。彼女が師匠。

疲れて寝てしまったところへアオヤマ君のお父さんが迎えに来る。
調査中にペンギンを見つけて追いかけるアオヤマ君とウチダ君。森の入り口で見失った。この先は「銀の月」が出るという噂。見た子は病気になるという。
帰り道でスズキ君たちに見つかり、歯医者での仕返しだと自販機に縛られるアオヤマ君。
その後顔を出すお姉さんに助けられる。乳歯が抜けそうなので、それを抜くのに歯を糸で縛られる。勢いをつけるため、缶コーラに糸を縛って投げるお姉さん。
投げた缶コーラがペンギンになった。血を垂らしながらあ然とするアオヤマ君。
「この謎を解いてみなさい」。自分でも良く判ってないと言うお姉さん。

翌日様々なものを持参してお姉さんに投げさせる実験。

でも全然出ない。

 

ウチダ君がペンギンを隠していた(屋上)。ずっとご飯を食べていない。


ペットケースに入れ、電車で水族館に向かう二人。だが途中でペンギンが弱り、途中駅で降りてケースから出すと、飛び上がって破裂し、水になってしまった。最後に残ったコーラの空き缶。
ノート記載。ペンギンは未知のエネルギーで動いている(例えばペンギン・エネルギー)。町から離れると力をなくす。
喫茶店でお姉さんとチェス。最近眠れなくて怖い夢を見る、とお姉さん。夢に出る怪物ジャバウォック。
急に停電になると、チェスの駒が突然振動を始め、空中に飛んだ。それはコウモリ。

それを見てもう一度実験を申し出るアオヤマ君。

 

同じ場所でタイミングを待つアオヤマ君。その場所が日陰から日なたになった時「今です!」
お姉さんの投げた缶コーラはペンギンになった。ペンギンが出た日は太陽が照っていた事から仮説を立てた。

くもりでは出ない。暗闇だとコウモリが出る。
今の状態ではお姉さんが何を投げてもペンギンになる。

お姉さんの家に誘われるアオヤマ君。パスタをごちそうになる。
チェスをすると「腕を上げたね」とお姉さん。
お姉さんが疲れたという。ペンギンを出し過ぎたから?

わかんない。出すのは好き。
眠ってしまったお姉さんの胸を見つめるアオヤマ君。

ペンギン・エネルギーの元はお姉さんかも知れない。

 

夏休みに入り、お姉さんと会う機会がなくなった。
世界の果てについての、お父さんとの会話。

もっと遠くにあるのは判っているんだ。
そうとは限らない、とお父さん。世界の果ては遠くにあるとは限らない。折り畳まれて内側に潜り込んでいるかも知れない、と言って袋を取り出す。この袋に世界を入れることは出来るかい?
そして袋をひっくり返す。外の世界が内側になって袋の中に潜り込む。

 

ハマモトさんに呼び出されるアオヤマ君とウチダ君。連れて行かれた先はペンギンを見失ったところ。銀の月の噂はハマモトさんが広めた。
森を抜けると巨大な水の球が広場の中に浮いている。彼女は海と呼んでいる。なぜ浮いているか、原理は判らない。

研究を手伝ってという申し出を受けるアオヤマ君。
観測開始。ビーチパラソル他様々なものを持ち込み。

 

夏祭りでハマモトさんのお父さんに会うアオヤマ君。お父さんは大学の研究所で働いている。そこに偶然お姉さんが来る。

ペンギン研究中断の理由を知るお姉さん。

 

海の研究は続く。アオヤマ君の提案でセンサーを付けた「ペンギン号」を海に入れる。どんどん引っ張り込まれ、糸もろとも取り込まれる。

直径からは考えられない入り込みかた。


そこに現れるスズキ君たち。つけられていた。ハマモトさんを好きだろうと言われて逆上するスズキ君が暴れ出し、手がつけられない。
そこにお姉さんが現れ、多くのペンギンをけしかけて追い払う。
「ふしぎなもの見つけたね」とお姉さん。
だがその時、海の様子が変化。表面が尖り、水の塊を放出。
「離れろ!」だがウチダ君が逃げ遅れた。その時お姉さんが缶コーラを投げると、それがペンギンになって水の塊を分解。そして小さくなった水玉を突いたペンギンが消えてしまった。
その現象は回りでも起こっていた。

ペンギンの事を前から知っていた事にハマモトさんは激怒。お姉さんが捕まる事を恐れて言えなかったアオヤマ君。

だがこれでペンギンと海が繋がっている事が明らかになった。
お姉さんも加わってもらう提案を拒否するハマモトさん。

 

アオヤマ君の考察。ペンギン・エネルギーの源は海かも知れない。

水族館に連れて行く途中でペンギンが消えたのは海から離れすぎたから?
ペンギンは海を目指してここに集まって来た。それで海を壊す。

何か矛盾していない?とお姉さん。
森に大人がやって来た。何かおかしな物を見なかったかという問いに「いいえ」
ペンギンを出せるお姉さんが心配なアオヤマ君は、お姉さんにペンギンをあまり出さない様に頼む。

 

ニュース報道。ここ数日見つかっている未確認生物。

過去にない。

ジャバウォックだ、とアオヤマ君。
街の人の言葉。今度は街灯がなくなった。隣は自販機が。
変な事が起こっている、森に走る三人。ウチダ君の話。「プロジェクト・アマゾン」の源流探しは、同じ水路に戻る。この川には果てがない。

周囲を見ると大きな動物がペンギンを追っている。ジャバウォック。
広場に着くと海は更に大きくなっていた。
僕たちの手に負えないとハマモトさんに話す。でもお姉さんの事を研究者に言えない。だからこの研究を凍結すべきだと言った。
アオヤマ君はお姉さんを庇っているだけ、と反発するハマモトさん。

 

歯科医院へお姉さんを訪れるハマモトさんのお父さん。大学で気象の研究をしている。娘のノートを読んで森の物体、ペンギン、そしてあなたの事を知った。協力して欲しい。
その後お姉さんに会いに行ったアオヤマ君。

お姉さんは明日海辺の町に行こっか、と誘う。

 

出掛けたものの、途中で具合が悪くなるお姉さん。ペンギンを降ろしたのと同じ駅で降りる。周囲が砂地に変わり、ひざまずくお姉さんの回りをぐるぐると動く。そこにジャバウォックが。
しばらくすると、それは収まった。
ここ2、3日何も食べていないのに平気、どうしてだろ、と言うお姉さん

 

出張前のお父さんに相談するアオヤマ君。難しい、みんなつながっている気がする。

お父さんのアドバイス。一枚の紙に全てメモしてそれを何度も眺める。
それでも判らない時は考えるのをやめる。

みんなが突然つながる瞬間がある。「エウレカ」だ。

 

始業式。スズキ君が変な動物を水槽に入れて持って来た(ジャバウォック)。学校に来た研究者に呼ばれて鼻高々のスズキ君。
海の事が完全に研究者に知られてしまった。

家に帰って断食実験を始めるアオヤマ君。夢に出て来る妹。お母さんが死んじゃう、と泣く。みんないつかは死ぬ・・・

翌朝熱が出て学校を休むアオヤマ君。ずっとお姉さんの夢を見る。

 

次の朝目覚め、ガツガツと朝食を食べて出校するアオヤマ君。

教室で今までの出来事を全てノートに記載。
校内が騒がしくなり、教室のテレビをつけるスズキ君。避難勧告発令。海は膨張を続け、現場にいた研究者を巻き込んだ。ハマモトさんのお父さんも飲み込まれた。
保健室に行くふりをして教室を出たアオヤマ君たち。

だが外は大人が多数。スズキ君が脱出の手助け。
こうなったらお姉さんの力を借りるしかない。

 

お姉さんの前にいるアオヤマ君。「謎が解けたようね」
ペンギンは本当のペンギンではなく、お姉さんとも人間ではない。
海からは何らかのエネルギーが出ていて、お姉さんとペンギンはそれを受け取って生活している。その海をペンギンが壊すのは、何か重要な意味がある。
海は空間を歪めたり時間も狂わせる。だからこの世には存在してはいけないもの。
海は物体としてそこにあるのではなく、むしろ穴だとしたら。
この世の破けたところ、もしくはこの世の内側に潜り込んだ、世界の果てかも知れない。
ペンギンたちは海を壊していたんじゃなく、世界を修復していた・・・・
「私がペンギンを作るのは世界の穴を塞ぐためだった?」
だから僕がペンギンを作らない様にお願いした事は間違い、と嘆くアオヤマ君。
君のせいじゃない。道草食ってたのは私かもね。

この世界に未練でもあったのかね?
よく考えてくれたね、少年。

 

海に向かう二人。直径は数百m。ハマモト先生、大丈夫かしら?
送り込んだペンギン号の話をするアオヤマ君。
「まあ、入ってみるしかないね」一人で行くというお姉さんに、どうしてもついて行くと言うアオヤマ君。
大丈夫、私たちにはペンギンがついてる。

道いっぱいにペンギンが充満し、二人を押し流して行く。

 

ものすごい数のペンギンと共に海に入って行く二人。中にはまた街並みがあり、水に浸かっている。
連なったペンギンのボートに乗っている二人。「連れて行っておくれ」
今までの記憶について話すお姉さん。海辺、お父さん、お母さんや今まで生きて来た思い出。それも全部作り物?
僕には判りません。でもお姉さんと過ごした記憶は間違いなく本物です。
ハマモト先生たちが居るところに行き着く。

助けに来たと言われて驚く先生たち。

そろそろだね、と言うお姉さんに、海を少しだけ残せばお姉さんは元気で居られるかも、とアオヤマ君。
だけどこんなもの残しちゃマズいんだろ? ・・・・・・ハイ。
「それではお家に帰りましょう!」と手を上げるお姉さん。

乱舞するペンギンたち。
「何が起きてるんだ?」とハマモト先生。
「僕には判りません」
「君は本当は、判ってるんじゃないのかい?」
「僕は判ってるのかも知れません。でもこれは僕の大事な研究。この研究の秘密を誰にも教えないのです」

 

「少年、行こっか」とお姉さん。
「おい、危険だ、ここにいなさい」とハマモト先生。
「私たちは大事な用事があるんです」とお姉さん。
「だから先生、さようなら」

 

全ての決着がついて喫茶店に居るお姉さんとアオヤマ君。
「少年、やっぱり海は残せなかったみたい」 「ハイ」
「ねえ、私はなぜ生まれて来たのだと思う?」「判りません、でもいつか僕は判るかも知れません」
「私は人類じゃないんだってさ」「信じられません」
「私はキミが本当の大人になるのを見てみたかったんだよ。

キミはみどころのある少年だからな」
「そうです、僕は立派な大人になる、もっともっと偉くなって、宇宙にも行く」
「偉くなったら私の謎も解ける。そしてら私を見つけて会いにおいでよ」

 

「それじゃ、そろそろさよならね、君はここにいなさい」
と言ってお姉さんはドアから出て行き、広場の前まで行って、手を振ると   消えた。

 

皆のところに現れるアオヤマ君。ハマモトさんが飛びついて来た。
「あの人は?」「お姉さんは行ってしまったよ」
TV報道。昨日県境に現れた巨大半球体が消滅してから一夜明け、周辺地域に出ていた避難勧告は解除・・・


僕が大人になるまでに、あと3748日ある。僕は一日一日、世界について学んで、昨日の自分を上回る。
世界の果てを見るのは、悲しい事かも知れない。それでも僕は世界の果てに向かって大変早く走るつもりだ。

なぜなら、世界の果てに通じる道はペンギン・ハイウェイである。
その道を辿って行けば、もう一度お姉さんに会うことが出来ると僕は信じる。
その時僕はお姉さんに教えてあげたい。

僕がどれだけお姉さんを大好きだったかを。