NHKスペシャル「高倉 健という生き方」11月23日 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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「プロフェッショナル・仕事の流儀」として2012年に放送されたものの再放送。
同年に公開された「あなたへ」の収録に密着取材したもの。
前日にこの映画の追悼放送をやっていたので、思わず観てしまった。


「一度きりを、生きる」
「幸せの黄色いハンカチ」収録でのエピソード。刑務所から出所してから、初めて食堂でビールを飲み、食事をするシーンで、一発OKの後、山田監督がその秘訣を聞いたところ、この1シーンのために2日間絶食したとのこと。


「生き方が、芝居に出る」
朝はシリアルと牛乳でしっかり摂り、夜までは食べない。体重は70キロを超えない様にコントロール。歯をキチンと噛み締めるため、マウスピースを常用(4mm)。
常に持っているもの:東日本大震災の写真と、少年の書いた詩が2作。好きな曲は「希望という名の光(山下達郎)」。愛読書「男としての人生(山本周五郎の描いた男たち)」。目指すものは「樅の木は残った」の原田甲斐。
一つの作品が終わると姿を消す(長い時は数年)。
「あなたへ」のサブテーマ:職を賭けて見逃す。
北九州、中間市、昭和9年生まれ。本名:小田剛一。


「俳優とは何か」
45歳で東映を辞めフリーになった。内容、ギャラ、スタッフ含め納得出来るものをやる姿勢。一番厳しい内容でやる。八甲田山では零下20℃の山中での撮影。3年間、他の全てを断って取組んだ。


再度「生き方が、芝居に出る」
俳優人生の中で肉親の葬儀に出た事は一度もないというのがプライド(俺はプロ)。私事で撮影に影響を与えてはいけない。俳優と引き換えに捨てているものがある。母親が死んだ時には「あ・うん」の撮影中だった。
「あなたへ」撮影現場。平戸に漂う独特のもの悲しさ。日本で最初に外国船が来たところ。傾斜地の墓には毎朝花が供えられている。
大滝演ずる大浦老人の「久しぶりにきれいな海ば見た」との言葉に、撮影後本当に落涙する。
撮影後のコメント:命には限りがある。もう1本撮れないかも知れない。



感想
素顔の健さんは、スクリーンでのイメージよりは気さくでユーモアのある人。ビートたけしを「タケちゃん」と言って無茶振りする愛嬌がある。
一方で役に対するストイックさは尋常ではなかった。
愛読書の「男としての人生 」はこの番組の後、古書市場では高値が付き、今回の死去を受けて更に高騰しているという。


ただ、健さんがもし原作を読まず、このエッセンスだけで男の生き方を学んでいたとしたら、ちょっと残念ではある。

ここで取上げられた小説の中で「樅の木は残った」「さぶ」「赤ひげ診療譚」「四日のあやめ」「虚空遍歴」「ながい坂」は既読。一番好きなのは「さぶ 」の”さぶ”。主役は栄二だが、彼の根本に影響を与えているのが”さぶ”。


いずれにしても、この大物俳優の死去で、当分話題が続くのだろう。