「さぶ」山本周五郎 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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sabu

 

トラバステーション から

この本も良く読み返します。「さぶ」と言いながら、基本的には「栄二」の話。ただ、愚直で何の取り得もないさぶが、栄二を思うあまり自分の事も忘れて奔走する。世間に背を向けた栄二も、さぶや周りの人間との関わりの中で次第に変化していく。平易な言葉の中に深い愛情が込められている。

自分が住み込んでいた質屋の店主の名前をペンネームにしてしまった、彼の敬愛精神。また、直木賞他の文学賞を全て辞退したのも、読者の支持が最大の賞であるとの信念に基づくもの。


あらすじ

子供の頃から表具の老舗「芳古堂」で働く栄二とさぶ。栄二は幼い頃、火事で両親と妹を亡くし、帰る場所もない。腕は確かで目先が利く。さぶは貧しい農家で何をするにものろま。食い扶持減らしのために家を出された。仕事の出来る栄二は得意先の「綿文」でも人気があり、そこの娘2人のどちらかを嫁にするとの噂も出る。
「綿文」での仕事の最中に、栄二は仕事を外される。不審に思い、追求するが教えてもらえず、自暴自棄になる。栄二は店の金を盗んで女将さんに意見された過去があった。
事件を起こした栄二。身元を黙秘したため、軽度の犯罪者等を隔離する「人足寄場」に送られる。かたくなに自分の殻に閉じこもる栄二。
護岸修理中の事故により栄二は穴の中で岩に挟まれる。命がけで栄二を救おうとする男たち。危ういところで命を救われる栄二。


様々なエピソードの中で次第に心を開いていく栄二。さぶは探し回った揚句何とか栄二を見つけ出し、一緒に仕事をしようと持ちかけるが、寄場のみんなに借りがある、と拒む。
凶悪な男が入り込み、部屋の雰囲気を悪化させる。博打も始まり不穏な空気。小競り合いの末に、栄二が男を撃退。寄場の治安は回復した。

さぶが身元を引き取ると申し出て、栄二は再び世間に。さぶと共に仕事を再開。
かつて「綿文」で中働きをしていたおすえと所帯を持つ。
仕事の目鼻がつき始めた頃、栄二はさぶの書いたものを見る。
あとは読む人のために・・・・・・