新聞小説「荒神」(3) 宮部みゆき | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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「荒神」(3) 作 宮部みゆき  画 こうの史代

レビュー一覧

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感想

いよいよ怪物が姿を現した。体はガマ、脚はトカゲ、尻尾はヘビなんて、けっこう俗っぽいなー、という印象。ただ、さすがに挿絵で全体像を具体化するという愚を犯さなかったのは賢明。
はっきり知りたいという気持ちの反面、知ったとたんにスケールが小さくなるという弊害があるのも確か。

この物語は、何に重点を置くのかがポイント。宗栄、園秀の正体と、小日向直弥、達之介の関わり、藩主の曽谷弾正がどう収斂して行くのか。
山あいで対立する二つの藩を丁寧に描いている先に、何があるか。
そう考えると、この怪物はやっぱり陳腐な気もする。

 

あらすじ

第二章 降魔 120~180(7/14~9/14)

朱音らに助けられてから三日ほど経った蓑吉。
次第に体も癒え、食欲も出て来たが、あの時の事がどうしても思い出せない。朱音と蓑吉を前に軽口をきく宗栄。

だが、ここが潮時と蓑吉にこの場所が香山ではなく、永津野領内の名賀村である事を教える。驚く朱音。
自分は捕まっているかと聞く蓑吉に宗栄は、それが判るという事は永津野と香山の関係をキチンと理解していると諭し、しばらくは自分の周りの者以外には姿を見られない様にと話す。

 

機屋に見慣れぬ若い男が来ているのが気になり、機屋の女の一人に聞くと、絵師だと言う。
朱音に気付き、自らを菊池園秀と名乗る男。

陸奥の各地を旅して行く先々の物事を描きとめているという。
朱音が機を織り、その様子を園秀が描いている時に、庄屋の茂左右衛門が園秀を探してやって来た。茂左右衛門と園秀が話す、当地での絵馬に関する事情。禁制になって焼き捨てられる運命だった絵馬を隠している寺があるとの情報を聞いて、園秀はそれを見たいと申し出た。
朱音は園秀に、こちらへ来る前はどこに居たか聞くと、仙台、遠野といった地名をいくつか挙げた。香山に立ち寄っていない事に少し落胆する朱音。

 

山を少し歩いて首が凝った蓑吉に、活法を施す宗栄。

異常な経験をしたせいで、体に歪みを生じていた。

宗栄と朱音が話している時に蓑吉の悲鳴が。
青大将がいたとの加介の話。だが蓑吉の様子が異常で、宗栄は正気に戻すために蓑吉の頬を平手で打つ。


落ち着いた蓑吉に宗栄が、なぜそんなに蛇を怖がるかと聞いたところ、あいつは蛇に似ていたと言う。あいつは何だと聞く宗栄。それは番小屋より大きいという。恐怖を吐き出す様に叫ぶ蓑吉。


 

蓑吉が出会った怪物について話す宗栄と朱音。

蓑吉が嘘をついているとは思えないが、にわかには信じられない話。蓑吉の体に点々とあった傷あとは怪物の歯形か。
何が起きたのかを調べようと話す宗栄。

永津野の関所近くまで行った時に二人の番士を見たという。

彼らもまた、何かを探している様だった。
関所での不可解な出来事。

二人の男が捕われ、その後居なくなり、埋めたと思われる場所を見ると、もっと大人数を葬った跡が窺えた。

宗栄の推理。怪物は関所近くまで迫っており、いずれ名賀村までやって来る可能性がある。
ここは正面から関所へ出掛けて様子を見たいという宗栄に「私が参ります」と言う朱音。

 

第三章 襲来 152~

関所へ「笠の御用」を口実として朱音が茂左右衛門に同行するという申し出を聞いて茂左右衛門は喜ぶ。

どこからかその話を聞きつけて同行したいと申し出る園秀。

あの晩の出来事を話してから落ち着きを取り戻した蓑吉。
宗栄と加介が出掛ける支度をして現れた。裏山へ筍を掘りに行くという。だがまだその季節ではない。

蓑吉は何かを感じ、一緒に連れて行って欲しいと申し出る。


出発して溜家が見えなくなった頃、宗栄は蓑吉に、埋められた者を確かめるという今回の目的を話す。
更に山を登り、目印をつけておいた所に着いた三人。皆で掘り始め、やがて宗栄が女のものと思われる腕を掘り出した。
続けて作業を進める三人。次いで人の頭。
宗栄は、あるものを見て体が動かなくなってしまった。
宗栄の視線の先に、巨大な三本指の足跡が広い間隔で点々と続いていた。
足跡は、加介と蓑吉が言うには塚の手前まで来て、また森に引き返しているという。その道を辿ろうという宗栄。のけぞる加介。
蓑吉が教える、森の匂いに紛れる方法。

 

物音を聞いて警戒を強める三人。まるで鼾の様な音。
森の先に関所の建物の一部が黒く見えていた。

関所に居る朱音の事を思い出す宗栄。
加介が、森の開けたところにこんもりとこぶの様に盛り上がっている場所を指指して、変だと言った。大きなこぶが胴ぶるいして起き上がった。体の下に巻き込まれていた尻尾が現れる。
小山の様な体。体は蝦蟇、脚は蜥蜴、尻尾は蛇。

そして皮膚はだんだら模様。

怪物は突然動き出し、あっという間に消えていた。

宗栄は加介に、蓑吉を連れて名賀村へ帰り、村の守りを固める様に言った。
蓑吉は宗栄に附いて仁谷村の人を探すという。

加介が一人で村に向かった。
「あいつはいったい、何ものなんだ?」