「新世紀エヴァンゲリオン」1995~1996年 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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一時期「エヴァ現象」とまで言われ、全国的に話題をさらった事もあるTVアニメ。放映されたのは1995.10.4~1996.3.27までの全26話。

監督:庵野秀明、企画・製作:GAINAX
残念ながら、リアルタイムでは見ておらず、たまたま映画化された時についフラフラと観てしまい(シト新生)、その時全く話について行けず、あまり悔しいのでビデオを1巻から全て借りまくり、ほぼ中毒状態になった・・・・・

作品というより、監督の「庵野秀明」に興味があった。

 

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舞台は西暦2015年の第3新東京市(箱根あたりにある)。人類は2000年に「セカンド・インパクト」と呼ばれる大爆発を経験し、その半数を失う。
それを契機に「人類補完計画」というプロジェクトが極秘のうちに推進 され始める。 物語は、そのプロジェクトの中心的存在である汎用人型決戦兵器「エヴァンゲリオン」(身長約40mの擬似生体構造を持ったロボット)とそれをオペレートする14歳の少年少女、また彼らを取り巻く大人たちのドラマ。
「使徒」と呼ばれる侵入者たちとの戦いの中で、次第に謎の核心に迫っていく・・・・・・・・・

 

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「EVANGELION」はEvangel(福音もしくは福音書--マタイ伝以下四福音書の一)から命名されているのは明らかであり、ストーリー展開のベースになっているのは聖書。
南極で発見された「アダム」と呼ばれる第一使徒と、同時に発見された「死海文書」をもとにEVA(エヴァンゲリオン)が建造された。「セカンド・インパクト」は使徒の覚醒を阻止しようとして失敗した結果起きた事の様だ。

 

次々と第3新東京市に現れる使徒。”なんでここばっかに来るの?”というギモンもあるが、使徒迎撃用に作られた都市だから、まっいいか(使徒は仕組まれた試練の様です)。
使徒との戦いを描いた第24話までは、ロボットアニメ、学園ラブコメなりのいいノリがあったのが、クライマックスとして今までの謎を解き明かすべき25話、26話(最終回)でも「人類補完計画」の詳細は明らかにされず、最後のドタン場でファンを突き放すという冷酷さ。ヲタク殺しの終わり方が却って話題を呼び、その後公開された劇場版で全てを明らかにするという流れになった。

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TV版について:入れ込んでビデオ借りまくった者としては、何とも欲求不満の残る終わり方だったが、基本的にはロボット・アクションものの形を借りたAC(アダルト・チルドレン)へのトリビュートであると評価します(ACとは機能不全家族の下で育った人間のことを指す)。
EVAは、精神的なシンクロを行う事により初めて操縦が可能となるものであり、これが出来るのは母親の居ない14歳の子供に限られる(彼らはチルドレンと呼ばれる)。また、彼らと関わる大人たちも幼い頃、父親または母親から深い精神的ダメージを受けた過去を持っている。

これらの自閉的で分裂症気味の群像から、作者の伝えようとしている心を読むことは出来る。機能不全の家族の中で育ち、精神面での欠損を持っているからこそEVAとシンクロ出来る、というステータスの与え方。これがごく一部の者に非常に強い共感となって支持された。ただし一部のヲタクだけでなくもう少し広範の者にも支持されたのは、現代社会が抱えている病的な側面を現したものだからとも言え、ごく普通に育てられた(と思われている)子供たちにも、親・社会を通じていくばくかの問題が感染していると考えるべきかも知れない。

 

主人公のシンジは、戦いを重ねても精神的成長が特に見られず、最終回でも自分の心の中で誇張の多い葛藤を重ねたあげく、「この世界にいてもいいんだ」という程度の開放で心が補完されたというのは、ちょっとつまんない、とその当時は感じていた。やはり「ガンダム」のアムロの様な、「成長していく姿」が心地よいのは当然(この印象は映画版を観てやや評価が変わったが・・・・)。
話の本質がACであるとしたら「自己認識が出来る」という事がその最も重要な目的であり、最終的にシンジの精神が「補完」されたのは、結末としてはほぼナットク。
ただしEVAを建造し、17もの使徒を倒してまで推進した「人類補完計画」という言葉の重みに耐えうるだけのアイデアは出し得なかったというのが、このドラマが未完であると思わせる最大要因(だってロボットアニメなんだから)。
とは言うものの、ロボット・アニメの制約の中で、よくスポンサーと折り合いをつけ(時にはダマし?)ここまでこぎつけたとホめてあげたい気持ちもある(最後の2話は、確かに作るのも、放送するのも勇気が要ったと思う・・・・・)。

 

企画兼総監督の庵野秀明氏、「オネアミスの翼」を手がけた事までは良く知られている様だが、「風の谷のナウシカ」でもスタッフとして参加している。これに出て来た「巨神兵」のドロリとしたイメージはまさに「エヴァンゲリオン」の中核をなすものであり、この映画の公開が1984年であった事を考え合わせると、この人けっこうシタタカ者やなー、と思わせる。
ハマったあげくに買った庵野秀明の解説本「スキゾ・エヴァンゲリオン」と「パラノ・エヴァンゲリオン」。まあビミョーだが、アンノ解説本としては好適。「父親が身体障害者で、肉体の欠損という事に小さい頃から興味があった」などとサラリと言い、相当カゲキなインタビュー録になっています。

 

まあ、とにもかくにも「ハリウッド超大作映画」なんていう底の浅いものよりは、よほど上質なアイデアが満載されたテレビシリーズでした。それから忘れてならないのは「音楽」。鷺巣詩郎のセンスはすばらしい。

1つだけ観るとしたら、ビデオ屋で第19話「男の戦い」だけ借りてみて下さい。ただし、あとハマっても当局は一切関知しません・・・・・

 


映画版 THE END OF EVANGELION 

 (第25話「Air」、第26話「まごころを、君に」)

TV版の25、26話をリメイクした形となっている。
今回提示された「人類補完計画」とは、個人の肉体を滅し、生命の集合体として自己と他の区別なく融合体となるもの。
地球を生命体としてとらえ、一つにまとまるか、また自己と他を改めて分けたものとするのか・・・・
その選択が主人公のシンジ一人に委ねられる。アニメとしてはちょっとズレていると思える様なバカげた壮大さがあり、まさにスキゾイド好みの出来になっている。特に、地球サイズにまで膨張した綾波レイの狂った顔なんてのは、夜うなされそうな迫力。
「月」と「狂気」なんて まんま「ピンク・フロイド」だが、もっと狂って精神世界にどっぷり、ってのもちょっと期待してたりして・・・・・・・

 

オマケ
庵野秀明がEVAの後手掛けたのは、美少女学園アニメ「彼氏彼女の事情(略してカレカノ)」。
優等生だが、人から注目される事だけが生きがいの「宮沢雪乃」と本物の優等生「有馬総一郎」を巡る典型的学園ラブコメ。ただ、最初は軽いノリだったのが、イジメや登場人物が背負っているトラウマ等がジワジワと明るみになるに従い、単なる「オンナのコアニメ」から次第にスピンアウトを始める・・・・・
娘がたまたま借りてきたのを「おー、庵野の脚本かー」と思わずのめり込み、2週間ほどで征服。
結局、ロボットを使わない「EVA」的なおはなし。

 

注、「本ホームページに使用した「新世紀エヴァンゲリオン」の画像 は(株)ガイナックスのガイドラインに沿って掲載しています。配布や再掲載は禁止されています。」

 

参考

アダルト・チルドレン(AC)について