術後早期のイレウス | 救急医の戯言

救急医の戯言

元呼吸器内科医であった救命医が、患者として2回手術を受けたこと、最近の医療について思うことを思いつくまま書いてみました。

30才位の妊娠出産歴のない独身女性が、長年子宮筋腫による過多月経に悩んでいたそうだ。

ホルモン療法など余り効果なく、子宮動脈塞栓術なども提案されたようだが、最終的には子宮全摘を選んだ。

術後10日で退院されたが、10日後に上腹部痛で救急を受診された。

お腹は柔らかかったが、腸蠕動音は金属的な響きで嫌な予感がした。

 

果たして、CTでは余り酷い状態ではないが腸閉塞の兆候を示していた。

この方は再入院となり、とりあえずは保存的に腸管安静(絶食、補液)で症状は改善しつつあるそうだ。

おそらくは、手術に踏み切るにあたって相当の葛藤があったろうに、術後間もなくイレウスで再入院になるとは夢にも思っていなかったろう。

 

開腹術後にイレウスを発症するのは2%程度とそう高い頻度ではないが、ひとたびイレウスと診断された場合、再手術を余儀なくされる頻度はそのうち80%にも及ぶという。そもそも最初の開腹がイレウス発症の原因となったのにイレウスを治療するために再開腹しなければならないジレンマも問題だ。もちろん再回復が更にイレウスの原因となる頻度を上げるからだ。その頻度は初回開腹によるイレウス発生率の2倍に及ぶという。

 

この患者さんが、再手術となることがなく、順調に回復し退院することを切に願っている。