年末は夫婦で過ごす時間が長くなる。
時間に比例してケンカも増える。
些細なことでイライラする。
注意が口論に発展し、罵りあい、やがて全く話さなくなる。
皿でも叩き割ってやろうかと思うのだけど、結局自分で片付けることになるからやらない。
台所道具はお気に入りばかりだから、きっとすぐに後悔するだろうし。
それならばいっそ、つきのわさんの持ち物を壊してやろうかと考える。
でも、色々面倒になるのは目に見えているから、やっぱりやらない。
じゃあ、この怒りはどこにぶつければ良いんだ?
こんな時、あたしがオトコだったら憂さ晴らしに飲みに行けるのに…
オンナにはそれが出来ない。
勝手に行けばいいと言われるかもしれない。
けれどそれは、独り呑みおばさんに向けられる、世間の冷たい視線を知らない人間のセリフだ。
向けるところのない、行き場のない感情。
モヤモヤをたっぷり込めて、しばらく放置していた置物をゴミ箱に投げつける。
あー、すごくスッキリ!
知らなかった、捨てるってストレス発散になるんだ。
イライラ、ポイッ。
ムカムカ、ポイッ。
部屋もキレイになって一石二鳥。
だんだん楽しくなってくる。
喜びも束の間、せっかくあたしが空けたスペースに、気付けばつきのわさんが何かしら置いている。
捨てることに幸せを見出だした女vsとにかく捨てられない男
終わりなき戦い。
あぁ、さっぱり暮らしたい。

持たないことに強く憧れる。
ここまで潔くはなれないけれど、今よりもっとシンプルに生活したいと切に願う。
ひとつひとつ捨てていって、いつしか家がスカスカになり…
ついに、嫁も消える。
なんて、ね。
でもね、つきのわさん。
そろそろ物を減らしてくれないと、ホントにそっといなくなるよ。