8月8日、雨 | 熊猿の仲 ~ゆうえんのなか~

熊猿の仲 ~ゆうえんのなか~

モンチッチのようなヨメが、ツキノワグマのようなダンさまとのゆる~りとした日常を綴ります。
果たして熊と猿は仲がいいのか悪いのか…。
今日も中年夫婦はとことんマイペースに暮らします。

いつからだろう。
あまりに綺麗なものに相対すると、嬉しいよりも切ない気持ちが勝つようになったのは。

若い頃は、明るい未来だけを夢見るパワーがあった。
常に大切なのは現在で、その一瞬一瞬を最大限つなぎ合わせて、いかに謳歌するかだけを考えていた。
30歳を過ぎれば世間的には立派な大人で、それ相応の生活や態度が求められた。
経験を積み重ねて、過去から学び懐かしむ。
もはや、楽しいだけでは生きていけない。

そして走り去った日々を振り返って気づく。
今ここにあるモノは永遠ではない。

キラキラと輝く宝石。
目映いほどの光は人々を魅了して止まない。
ずっとこの煌めきを堪能していたい。
だけど、あたしが離婚でもしたら?
いきなり大きな負債を抱えたら?
明日にでも手放さなければいけなくなるかもしれない。
吸い込まれそうな海。
揺れ動く波の様子を飽きることなく眺める。
ずっとこのまま自然の神秘にふれていたい。
だけど、このまま温暖化が進んだら?
リゾート開発で環境が変わってしまったら?
明日にも魚や珊瑚が消えてなくなってしまうかもしれない。

幸せも悲しみも、やがて消える。
ワクワクするような時間も、はらはら流す涙も長くは続かない。
それがわかるようになったから、今の一瞬は適度に噛み締め、後から振り返って楽しめるようになった。

儚さを味わえるのは年齢を重ねた者だけの特権。
だから桜がことのほか美しい。
散りゆく姿にこそ生命力を感じたりする。

花への想いは人それぞれあるだろう。
桜に関して言えば、好き嫌いとは別に、誰しも何かしらのエピソードを持っているような気がする。
卒業、入学、花見…

なぜだろう。
桜には、胸を少しきゅっと掴まれるような思い出が似合う。

あたしにだって、そんな思い出の1つや2つ…
あれ?酔っ払ってやらかした記憶しかないぞ。

多少の儚さが味わえたとて、粋な大人になれるわけではないらしい。