民法条文研究~代理:その1~ | やぱたんのブログ

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専門学校で20年超講師をしている行政書士・宅地建物取引士です。
また公務員対策として経済・財政、民法、憲法、行政法分野も担当しております。
宅建試験情報、行政書士試験情報、公務員試験情報をはじめ、経済・財政分野の記事も書いてまいります。

 

  12 代理とは何ですか?

 

【代理】(だいり)・・・代理人が本人のためになすことを相手方に示してする意思表示の制度

(代理行為の要件及び効果)

第99条 

1 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。

2 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

一.私的自治の補充

未成年者や成年被後見人、被保佐人、被補助人は

✅自分一人で契約ができない

✅自分一人だけでは不利な契約を結ばされる

リスクがかなり高いです。こうしたリスクを回避するために、「法律上」一定の方に「代わりにやってもらう」ことを想定しています。一人では完全な契約行為ができない方の保護を図ることで、不完全な私的自治の補充をするのが「法定代理」です。

 

二.私的自治の拡充

✅世の中には複雑なことや高度な専門知識を必要とする事柄が多いです。

✅そんな複雑なことや高度な専門分野を「その道のプロ」に頼むこともあるはずです。

民法はこうした、「他人を使って自らの活動範囲を広げる」想定をしています。

 

三.代理の基本要件

99条1項の条文を分析してみます。

✅「代理人が」

・本人と代理人との間に「基本代理権」が存在します。

・この代理権が法律の規定で発生するのが法定代理

・この代理権を任意に(委任状を交付するなどして)発生させるのが任意代理

✅「本人のためにすることを示して」

・顕名と言います。

・「私は(本人)の代理人である(○○)です」と代理人が相手方に名乗る必要があります。

 ⇒ここで顕名がない場合が問題になります。

(本人のためにすることを示さない意思表示)

第100条

代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第1項の規定を準用する。

1)代理人が顕名をしない場合=代理人の個人的な意思表示となる

2)相手方が、①本人のための意思表示と知っていたり、②本人のための行為だと知ることができた時は、99条1項の規定を適用して、「有効な代理行為」と扱います。

 【事例】

 A(本人)

  ↓

 代理権

  ↓

 B(代理人) ←法律行為(意思表示)→ C(相手方)

 

①Bの顕名・・・BはCに自分の立場を顕か(あきらか)にする必要がある。

⇒いきなり「契約しましょう」と言われればCとしてはB個人との契約と思ってしまうから。
 

②ただし、Bが顕名を失念しても、CがBとお話する中で、Aの存在を知ったか知りうるべき状況にあれば(悪意または有過失)有効な代理として扱われ、AC間の契約関係が有効となる(100条但書による99条1項の準用)。
⇒もともとAとしてはCとの契約を望んでおり、CとしてもAの存在を知っている以上Aとの契約を有効にしても特に利害関係において不利な立場に立つものではないから。

✅「代理人が~した意思表示」

・代理行為では意思表示をするのは代理人です。

 

✅「本人に対して直接にその効力を生ずる」

①基本代理権が有効に存在し、

②代理人が顕名して(顕名なくとも、相手方が本人に帰属することについて、悪意または善意有過失ならば、)

③代理人と相手方との間で成立した契約は、

④本人に直接その効果が帰属します。(効果帰属)

⇒したがって、本人と相手方との間に法律関係=債権債務関係が発生します。