7月13日、その日は午後から出掛ける予定があったので
その前に、と午前11時半頃、ダンナは予約をしていた本を
受け取りにマンションから数分の所にある図書館へと向かった。
いつものように、マンションの裏手階段を降りていくと、
降りきった場所に何やら黒い物体が落ちている。
(なんやろ?)
気になったダンナは、黒い物体を凝視する。
(動物?猫?)
(死んでるんかなぁ)
どうにも気にかかったダンナは、その黒い物体を思わず…ツンツン。
(ね、猫? う、動く…)
まだ生きてることを確信したダンナは、なんの迷いもなく
(助けねば!)
と思い、命の次に大事(?)な本の用事を放棄して(ダンナの
一番の趣味は読書なのだ)黒い物体を抱き上げ自宅へとUターン。
「えらいもん拾ってしもた~。どうしよう~。」
ダンナの焦った声と共に随分と早い帰宅に何事?と思った私は、
当然の如くダンナの方に目をやる。
(はぁ?)
すると、ダンナの手には何やら黒い物体が。
(へっ?)
そりゃそうでしょ、状況を呑み込めない私。
更によくよく見る。
…。
えーーっ、顔のぐちゃぐちゃなちっちゃな子猫やん!
私は時計を見た。
「動物病院の診察時間にまだ間に合うわ。(診療時間は12時まで)
とりあえず病院に行って!」
そう急き立てると、「おおー」と慌てながら、ダンナはひとり病院へ
向かったのであった。
こうなったら、午後の予定どころではない。
「もう少し遅かったら、カラスの餌食になってるところやって
言われた~」
「命には別状ないらしい~。(先生が子猫に向かって)助かって
よかったなぁやて~」
暫くして、抗生物質と目薬を貰ってダンナが子猫と共に帰ってきた。
症状は、野良猫によくある猫風邪とのこと。
目ヤニと鼻水で顔はぐちゃぐちゃのメチャクチャ。
顔右半分はお岩さんのように腫れ上がって、右目の瞬膜
(のちに角膜と知る)が飛び出している。
左目はそれよりはましだけど、やっぱり膜が張ってて黒目が
ホンの少し、やっと見えるかなぁといった状態。
果たして、本人(猫)は見えているのかいないのか。
歯は生えているので、おそらく生後1ヶ月くらいだろうとのこと。
しかしながら体重は300グラムも満たない。
一体どんな風に育ってきて、どんな風に捨てられたのか?
とりあえず、空腹のはずだから、まずミルクをあげて、そのあと
落ち着いたらフードをあげたらいいだろうとのこと。
急いでスーパーへ走り、猫用の缶ミルク(液体)を購入。
ぐったりとしている子猫を抱き上げながらミルクをあげるのだけど
一向に飲んでくれない。
頑なに拒否をする子猫を前に、猫子育ての経験のない私達は
オロオロするばかり。
「なんで飲んでくれへんのん」
「この期に及んで選り好みかぁ~」
「助かりたくないんかぁ~」
自分達の知識不足を棚にあげて、子猫を責める始末。
(一体この先どうなるんやろ~)
こうしてる間にも衰弱していく子猫。
初めてのこんな状況に、
「えらいもん拾ってくれたなぁ」とチクリと愚痴る私。
「死にかけのヤツを人として見過ごせと言うんか!」と怒るダンナ。
だけどね、どれだけの責任が持てるん?
オロオロとイライラとフラフラ。
なすすべもない私達の怒涛の子育てがこうして始まったのであった。
つづく








