衆議院選挙が終わりました。各種報道機関の事前予想以上の自民党圧勝です。自民単独で過半数どころか3分の2以上の議席獲得という歴史的事態となりました。いよいよ悪夢が現実になるかもしれません。極右政権が全権委任を受けたかのように,とんでもないことをしでかす恐れがあります。民主主義を誇ったワイマール体制がナチにより蝕まれていった歴史とダブります。

 

 国民主権,基本的人権の尊重,平和主義という戦後日本を曲がりなりにも導いてきたはずの理念は風前の灯火です。これまでもなし崩しにされてきたとはいえ,自民単独で衆議院3分の2以上となれば,暴走を食い止めるのは至難の業です。憲法改正の発議も単独で行えます。参議院はそこまでの議席ではないですが,改憲勢力を足し合わせれば,参議院でも憲法改正の発議は可能でしょう。「戦後民主主義」は終焉を迎えつつあります。

 

 スパイ防止法も,敵基地攻撃能力を伴う大規模軍拡も,原発の再稼働・新増設も,労働規制の緩和も,場合によっては核武装も,どんどん進められるのでしょう。その昔,中曽根政権は「戦後政治の総決算」と銘打った政策を推し進めましたが,高市第二次政権は,圧倒的な議席をバックに,戦後民主主義を終焉に導きそうです。

 

 形骸化し,何がどう自分の生活に関わっているのか分かりにくいかもしれないけど,民主主義の大切さになぜ気づかないか。第二次世界大戦で数多くの犠牲者を出しながら築き上げられた日本の民主主義が危機を迎えていることになぜ気づかないか。政府の公式発表では「310万人」が日本の戦没者数となっていますが,社人研の林玲子氏が明らかにしているように,実数としては「376万人」を下りません(『人口問題研究』2025年6月号)。これだけの犠牲のうえに成り立っているのが戦後民主主義なのです。

 

 選挙制度の問題があり,得票率以上に議席数を獲得できてしまうとはいえ,有権者は何を期待して,自らの首を絞めかねない政策を遂行する政権を支持したのでしょうか。

 

 選挙が終わってから(!)厚労省が発表したように,実質賃金は2022年から4年連続で下落。賃金上昇は物価にまったく追いついていません。アベノミクスの異次元金融緩和がもたらした円安は,サナエノミクスで加速するでしょうから,庶民は物価上昇でさらに苦しむことになります。「この国民にして,この政府あり」。歴史的警句は今も生きています。あとになって,「こんなはずじゃなかった」と嘆くのでしょうか。

 

 「空がまた暗くなる」のかもしれませんが,まだ間に合います。踏みとどまるためには,憲法改正を阻止すること,そのためには,憲法改正をもくろむ安易な国民投票を阻止することです。改憲勢力は,インターネットを駆使して若者の洗脳に走るでしょうから,様々な分野の専門家,政治家,市民運動家,ジャーナリストがまっとうな情報を発信し,ファクトに基づく熟議の重要性を訴え続けなければならないでしょう。

 

 「決められない政治」を揶揄し,政治にただスピードを求める風潮があります。強そうなリーダーに即断即決してもらい,目の前の課題を一気に解決してもらいたいと願う空気も漂っています。ファシズムの温床はすでに日本でもできあがりつつあります。

 

 全体主義とは,一度に完全かつ最終的な確実性を獲得しようとする試みである。民主主義とは,制度化された不確実性である。

 

 今こそ,ヤン=ヴェルナー・ミュラーの言葉をかみしめなければなりません。