数の力を背景として、高市内閣は、とんでもない政策・法案を次から次へと実施・制定しています。市民の権利・自由を大きく制約することになる「国旗損壊処罰法」もその一つです。

 国家権力は、もっともらしい理屈をつけて「反動性」「強権性」を隠蔽し「小さく産んで大きく育てる」という手法を好みます。国旗損壊処罰法は国民主権・基本的人権・平和主義という日本国憲法に反します。国旗損壊罪制定を目論む連中は、日本国憲法改正=壊憲も実現しようとしていますが、それがどのような意味を持つかは、本法案の中身にも現れています。スパイ防止法(名前はもう少しソフトに工作されるでしょう)制定にもつながる一連の動きであることは認識しておいた方がいいでしょう。

 当然ながら、数多くの人々・団体が国旗損壊罪制定に反対を表明しています。
 以下に、全国80以上の歴史研究関連学会を束ねる「日本歴史学協会」、また「アムネスティ・インターナショナル日本」が最近出した反対声明を掲げておきます(アムネスティは抜粋)。ほんの一例に過ぎませんが、考慮すべき論点はほぼカバーされています。矢野ゼミの良い子のお友だちには、権力の甘言、ネット上の雑な情報に惑わされることなく、本法案の危険な本質を理解してもらえればと思います。あとで泣きをみないように。

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【日本歴史学協会】
「国家主義の台頭と思想・信条の自由侵害をもたらす「国旗損壊罪」制定に反対する」

 「国旗損壊罪」制定に向けての動きが加速している。自民党総務会で法案骨子が了承されたのに続き、日本維新の会、参政党、国民民主党との調整を経て、6月16日には法案(正式名称「国旗損壊処罰法案」)が国会に提出され、今国会での成立がめざされている。同法が成立すれば、「人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法」により、「公然と国旗を損壊し、除去し、又は汚損」した者には2年以下の拘禁刑、もしくは20万円以下の罰金が科されることになる。私たち日本歴史学協会は1950年の設立以来、国家主義と軍国主義の暴走がもたらした戦前の日本の痛恨の経験に学び、平和で民主的な社会建設に貢献する歴史学の発展をめざして活動してきた立場から、この動きに対し深刻な危惧を表明し、同法の制定に反対するものである。

 同法案制定の根拠として主張されてきたのは、「外国の国旗を汚したり破ったら拘禁刑を受けるかもしれないのに、日本の国旗はどう扱ってもいいのはおかしい」という論法である。だが、現行の法体系において外国国旗の損壊が禁止されているのは、もっぱらそれが外交上の問題を引き起こし、国家間の関係に影響を及ぼすという理由によるものであり、自国の国旗損壊を禁ずる法律制定の根拠とすることはできない。自国の国旗に対する敬意を強要する立法はこれとは次元を異にし、表現の自由を侵害するだけでなく、市民の内心に深く立ち入って思想および良心の自由を侵すおそれがあり、強く警戒されるべきものである。

 戦前の日本社会の経験が示すように、国旗・国歌などのシンボルは歴史的に見て、国家主義を強化し、市民に国家への忠誠心を植えつける機能を果たしてきた。「愛国心」が押しつけられる中で、それに異を唱える人びと、国家による統制に抗して個人の市民的自由や権利を守ろうとした人びとは弾圧され、また外国人や植民地支配下の人びとへの差別感情が強化された。さらに、国旗・国歌は侵略戦争や植民地支配への動員に利用され、植民地や占領地でも日の丸の掲揚が強要された。日の丸は、戦争・植民地支配・同化・排除の歴史と深く結びついてきた。

 国民主権・基本的人権の尊重・平和主義を掲げた憲法のもとで新しいスタートを切った戦後日本においても、日の丸や君が代は戦前さながらの国家主義的路線への回帰をめざす潮流のシンボルとして絶えず用いられてきた。特に「国旗国歌法」制定(1999年)以降、教育現場への強制によって、子どもや教職員の思想および良心の自由を脅かす重大な人権侵害が生じていることは看過できない。「国旗損壊」に実刑を科す今回の法案が成立すれば、教育現場の萎縮、さらには学術・思想界一般、社会全体における同調圧力の強化が一層進むことは火を見るよりも明らかである。

 国旗をあたかも神聖不可侵のものであるかのように扱い、市民の上に置いて、これを損壊する者には刑罰を科すという「国旗損壊罪」制定の動きは、国家権力による「愛国心」の押しつけであり、市民の思想・信条の自由を真っ向から否定するものである。それは人びとを国民と「非国民」に選別する差別と排除の動き、「スパイ防止法」をはじめとする戦時体制づくりへの道に直結し、戦後を通じて維持されてきた民主的社会の諸原則から私たちを逸脱させ、再び国家主義・軍国主義の只中へと導いて行くことになるだろう。

 以上の理由から、歴史に学び、歴史研究の向上発展を通じて民主的で平和な社会の建設に寄与しようと努めてきた私たちは、「国旗損壊罪」の制定に強く反対する。
2026年6月24日

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【アムネスティ・インターナショナル日本】

 アムネスティ・インターナショナル日本は、国旗や国家的象徴への侮辱・不敬を禁止する法律には明確に反対の立場をとっており、この立法が単に国旗の問題にとどまらない可能性も懸念します。国家の象徴に対する「侮辱」や「不敬」を処罰する考え方が広がれば、将来的には、かつての不敬罪のように、国家元首や政府高官、あるいはその他の国家的象徴に対する批判的表現をも刑事罰の対象とする立法へと拡大する危険性を否定できません。このような動きは、社会に不可欠な政治的言論の自由を著しく萎縮させるリスクを伴います。

 私たちの社会において必要なのは、異論や抗議を含む多様な意見が自由に表明される環境を保障することです。表現の自由に対する制限は、国際人権法上、目的が正当であり、かつ、その制限が本当に必要で、目的に対して過度な制限になっていないという「必要性」と「比例性」の厳格な要件を満たさなければ認められません。さらに、暴力、憎悪、差別の扇動など、極めて限定的な場合を除き、表現は保護されなければなりません。本法案については、その要件を満たしているとは到底考えられません。

 アムネスティ・インターナショナル日本は、日本政府および国会に対し、国際人権法および日本国憲法が保障する表現の自由を尊重し、本法案の今国会における成立方針を撤回するよう強く求めます。
2026年6月25日