5分で分かる「純喫茶ぎふまふ奇譚」 | ニュータウン裏山探検記

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やのみー探検隊が行く!
by Yanomii Tanken-Tai

 

前作のスピンオフとして、軽い短編を書くつもりだったが、14万字超の長編になってしまった。

 

舞台は現代の矢野。前作の小説のモデルとなった人々の現実の世界だが、スピンオフではなく、独立作品となっている。

ライトなラブコメディの雰囲気で始まるが、徐々に不条理な「奇譚」に突入。主人公たちが夢と現実を行き来し、やがてその境界が曖昧になっていく。

弟が行方不明になっているという重い背景の中、愉快で優しい登場人物が「広島弁」で織りなす、恋と料理の物語。

 

小説投稿サイト「ノベルアッププラス」に全文をアップしている。

 

 

 

 

 

あらすじ

 

僕(伊藤山翔27歳)は、岡山県警の警察官。メンタルを弱らせて、2週間の休暇を取り、広島に帰郷。

母になんと説明しようかと躊躇い、駅を降りると実家とは反対の方向に歩く。

自分が通っていた塾の建物が喫茶店になっていた。現れた美しい女店主(君島三佐子)に一目惚れをしてしまう。

実家に戻って母と話すうち、三佐子さんは、3年前から行方不明になっている弟(武瑠)の彼女であることが分かる。

 

僕は休暇中、喫茶店を手伝うことになる。工場長、技能実習生、郷土史会長、占い叔母さん、気の良い常連さんたちとの交流がある。

僕の気持ちはすぐにバレバレになる。三佐子さんにも伝わるが、武瑠の失踪で前に進めない状態。

僕は、三佐子さんが苦しくならない位置で、彼女を守っていこうと、心に誓う。

母は彼女に会いに行き、「あなたのせいだとは最初からこれっぽっちも思っていないから、自由に生きて」と伝える。母と三佐子さんは、料理談義をしながら意気投合していく。

 

僕は、毎晩のように不思議な夢を見る。

塾長は脳梗塞で倒れて植物状態、病床から思念を送って、僕に夢を見せているらしい。

自分の書いた小説「ぎふ蝶が舞ふ春に」の場面を交えながら、武瑠の居場所を教えようとしているが、大蘇鉄の実、極楽天神の地図、魔女の呪文、教皇の鍵など、よく意味が分からない。

 

夢の中で何度か見た「痩せ過ぎの女」が現実に現れる。

それは三佐子さんの親友(リンダ)だった。リンダさんは三佐子さんの介抱により健康を取り戻す。

リンダさんと話をすると、僕と同じ夢を見ていたことが分かる。

ついには、三佐子さん、リンダさん、母、僕の四人が同じ夢を見始め、そこに武瑠が現れた。武瑠は、十六世紀でもう一人の三佐子さんとともに、戦国時代を生きていた。

僕と三佐子さんは結ばれることになる。

 

1年後、婚姻届を提出に行くが、どんでん返し。

1年の記憶はなくなり、場面は1年前の最初の日に戻る。喫茶店にはリンダさんがいる。

三佐子さんはすでに死んでいた。僕のことが好きで堪らなかったという話を聞く。

塾長が三佐子さんのために書いた未完の小説があるという。

タイトルは「純喫茶ぎふまふ奇譚」。

 

最後に、再どんでん返し。

元の世界に戻るが、果たしてこれは現実なのか。

 

登場人物紹介

●伊藤山翔(いとう・やまと)

 「僕」という一人称で、物語の話者となっている。岡山県警刑事部の巡査長27歳。愛称はヤマショウ。サッカー少年として育ち、県警の銃剣術大会では常に上位の腕前とか。メンタルを病んで休職し、郷里の広島に戻り、喫茶店に立ち寄る。その店主・三佐子に一目惚れをするところから、物語が始まる。翌日から喫茶店を手伝うことになる。

●君島三佐子(きみじま・みさこ)

 純喫茶ぎふまふの店主。愛称はサンザ。薬剤師と管理栄養士の資格を持つ。鮮やかな手際の調理に、魔法じみた動作を織り交ぜる。三年前から行方不明の山翔の弟の恋人であり、年齢は三十歳であることが分かる。

●伊藤武瑠(いとう・たける)

 山翔の弟で、三佐子の恋人。三年前から行方不明。

●菊池時彦(きくち・ときひこ)

 純喫茶ぎふまふのオーナーで、先代の店主。小説家でもある。喫茶店をやる前はその建物で、中学生専門の塾を経営していた。山翔も三佐子も武瑠もその塾の卒業生であるため、塾長と呼ばれる。遷延性意識障害で寝たきりとなっているが、「夢で縁者に思念を送る」とエンディングノートに残している。

●母さん

 山翔と武瑠の母親。五十代らしい。夫は、武瑠が失踪する直前に心筋梗塞で亡くなっている。地域のお年寄りと一緒に、地域活動をしている。料理の話で三佐子と意気投合。

●林田美沙子(はやしだ・みさこ)

 三佐子の親友で、菊池塾出身。愛称はリンダ。フォトグラファーとして世界を飛び回り、たくさんの外国語ができるようだ。二年も音信不通になっていたが、激やせして、三佐子の元に戻ってきた。

●工場長

 純喫茶ぎふまふの朝の常連客。毎朝、山翔を激励してくれる。

●占いママ

 昼下がりの常連客。三佐子の叔母で、スナックを経営している。母の弟の妻であり、血は繋がっていない。名刺には占い師とも書いてある。

●郷土史会の会長

 占いママと同じ時間にいる常連客。塾長の友人で、町の生き字引と呼ばれている。

●グエンさんたち

 東南アジアからの技能実習生。店には紺色の服のグエンさん、緑色の服のグエンさんが来る。二人のガールフレンドであるホーさんとレーさんは、工場長の工場で自動車部品を作っている。