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※この記事はあくまでも私が感じた総体的な印象と、「こんな子におすすめ」、「こういう子なら書きやすいかも」 という点だけピックアップしています。私個人の感想や作品のあらすじ、書き方のポイントなどには一切触れませんのでご承知おきください。
森に帰らなかったカラスジーン・ウィリス 作山﨑 美紀 訳
ジーン・ウイリスさんは、広告代理店勤務を経てデビューされた作家さん 幼少期から森で遊んだり、生き物と触れ合って育ったそうで、英国で数多くの児童文学作品を発表されています。
翻訳の山﨑美紀さんは児童書を中心に、フィクション翻訳やリーディングに携わり、吹奏楽の演奏活動もされている方です🎷あとがきでは、作品の時代背景や、舞台となったロンドンに関して、日本のカラスとの違いなどを丁寧に説明されています。
(原題はカラスの名前のみ。この邦題をつけた翻訳者さんの感性がすてきです)
列車とともに翼を広げる黒い鳥と青い空、そんな様子を眺める少年ふたりが目を引くのが、こちらの作品。(カバー装丁はしらこさんによるもの)
舞台は1950年代、第二次世界大戦の歴史上の終止符より12年のロンドン郊外。主人公の少年ミックは実在の人物で、本作は彼の体験の実話に基づいて書かれた物語。怪我をしたカラスのひなを保護し、なついたカラスは成長してミックやその家族、地域住民に溶け込んでいくお話です。
今夏の課題図書の中で数少ない、戦争に因んだストーリー。文章そのものは小学生にもすんなりと伝わってくる、読みやすいものです。(私はよく言いますが、翻訳者さんのテクニックです)英国ならではの料理や、慣習については本文中に注釈がありますので、小学生も混乱なく読めます。
ただ読書感想文を書くという観点でみると 海外の、それも1950年代という設定、イギリス視点での戦争のエピソードに関して物語を読解していくことは、ほかの課題図書に比べて少々ハードルが高めと感じます。(※私見です)
時代、文化の違いについては仕方ない描写は多いのですが、子どもが「一服やろうよ」と喫煙するシーンもあるので、色々と心配になりました昨今すぐ小説やアニメ、漫画のせいにされますからね。1950年代のイギリスは年齢による制限が非常に寛容的だったのです。
と前置きが長くなりましたが……
本作の内容は野生動物と触れ合う少年の成長、そして人々の心身に残る戦争の爪痕、そのふたつが主軸となっています。
作中で、ミックは野生動物を自然に帰すこと、野生動物を野生の危険から守ることの是非について、大人に囲まれながら考えます。鳥や動物が好きな子、小さなうちから飼育したことがある子は、そんなミックに共感するところも多いと思います
病気や怪我、環境などなにかしらの理由で自由の制限を経験した子も読んでみてほしいです。巻末で触れられているとおり、現在のイギリスでは野生動物を持ち帰って飼育することは法律で禁止されています。(日本も鳥獣保護法により禁じられています) それがなぜかも含め、お子さんが作品と向き合えたら、大いに意義があるものではないでしょうか。
そして……主人公ミックの父は、第二次世界大戦で自由を奪われる経験をしています。この作品は、お父さんが大好きな男の子に読んでもらいたいところです。お父さんは大抵、お子さんの前で弱さを見せないかもしれませんけれど。
『森に帰らなかったカラス』、ぜひ読んでみてください。
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お読みくださりありがとうございました♪