水路の造形(3)水路から田んぼに水を取る方法について | 16番ゲージレイアウトのこと..など

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16番ゲージの鉄道模型レイアウト・白縫鉄道川正線の制作記です。

 4月から6月は、私の仕事の繁忙期。主宰する会議や出席する会議が数多く、大きな主催イベントもあって、目の回るような忙しさです。

 そんな訳で、今回は工作の報告ではなく、田んぼの取水方法に関する検討結果を報告します。

 

 下写真が、現在制作中の”緩やかな棚田”です。

 水路から取水するのは、一番上の田んぼだけで、下の田んぼへは”田越し灌漑”で水を送ります。(田越し灌漑については、以前の記事に書きました。)
棚田の取水箇所と灌漑方法

 

 私が近在で目にする田んぼでは、下図のような取水方法が多いようです。

 水を入れる必要がない時は、パイプの口を板などで塞いでおきます。

取水方法図1

 この方法は、水路の水位が、水田の水位より高い場合に用いるものです。

 ところが、作成中の水路は、下左の試作品のように、擁壁を少し高くする予定なので、水田との関係が下右のようになり、この方法を使うのは困難です。

 

水路の試作&取水方法図2

 

 このような場合、図にも書いたように、堰を設けて水位を上げる手法を取ることがありますが、当レイアウトでは、それも難しいのです。

 棚田の一番上の田んぼの畦の高さは、線路の路盤の高さに迫ります。そして、この水路は線路の下を潜るので、あまり水路の水位を上げたくないのです。もっとも、以前も紹介したように、富山地鉄では、こんな風に「線路のすぐ下が水路」という場所が珍しくないそうで、これも面白いかしら、とは思うものの、他の方法も検討してみましょう。

 

 さて、これが現代のレイアウトであれば、揚水ポンプを設置することで解決するのですが、私のレイアウトは昭和40年代初頭の設定です。当時の揚水ポンプの普及具合がわかりません。

 そこで、その頃の田んぼへの揚水方法について、文献を漁ってみたところ、かなり古い文献ですが、面白いものを見つけました。

 

 この文献の冒頭に、揚水方法の変遷が書かれているので、引用してみます。

 

「土地の自然傾斜を利用して灌水する事の不可能な場合には、水を重力其他の抵抗に打ち勝たせて揚水する必要がある。

(中略)

 我國に於いて古くから用ひられて居る撥釣瓶、振釣瓶、踏車(水車)、揚水水車等は

(中略)

 是等は何れも流動作用を伴はないで、所要の水を容器と共に移動させる極めて簡單なものであ り。水車以外は人力に依るのであつて、揚程效率は何れも小さいものであ る。今 日でも最も多く用ひられて居るものは踏車、撥釣瓶であつ て、

(中略)

  是等簡單な揚水器具は後述の動力に依る喞筒利用の以前は極めて多く用ひられた事は云ふ迄もないが、今日でも尚用ひられて居り、昭和13年1月。 農林省耕地課調査に依る「人力に依る耕地の灌漑」に依れ、北海道以外の内地で水田約7萬5千町歩、畑約5千町歩が灌漑され、踏車役10萬、撥釣瓶約5萬2千箇を數へて居る。

(中略) 

 次に高度に進歩した動力に依る揚水機で我國農業上最も重要なもめは渦巻喞筒と縦型喞筒であ り、こ の爾種が殆ど大部分を占めるが、他に少數の軸流ポ ンプ、往復ポ ンプ、揚水車等がある。本稿で取扱はうとする揚水機は是等であつて、人 力に依るものは漸次是等動力に依る揚水機に代へられて居る。」

 

引用元:動力に依る灌漑用揚水機の地理學的研究 (1) 竹内 常行 地理学評論 17 (1), 35-59, 1941

 

 この文献の発表は1941年(昭和16年)です。もう少し読み進めていくと、すでにこの時点で、揚水ポンプが相当普及していたことがわかります。

 したがって、私のレイアウトでも、田んぼへの取水にはポンプを使うことにしようと思いますが、この文献で、へえ~と思ったのが、踏車なる揚水器具です。昔はこんな仕組みがあったんですね。Wikipediaのリンクをご覧ください。私と同様、踏車を知らなかった方にとっては、とても興味深いと思いますよ。

 なお、撥釣瓶(はねつるべ)や振釣瓶(ふりつるべ)については、揚水器具としての使い方がよくわかりませんでした。

 

 これで、水路から田んぼに水を取る方法が決定しました。畦の上に、ちょっとくたびれたポンプ小屋を作るのも良いかもしれませんね。

 このストリートビューは、久留米市三潴町高三潴にある”旧三井寺ポンプ所及び変電所”という、昔の農業用水施設で、登録有形文化財です。

 私の作るポンプ小屋はこんな立派なものではなく、木造を考えていますが、駅のランプ小屋みたいなレンガ造も一興かな、と思っています。

 

 ところで、今回の記事も、ここまで鉄道の話が皆無だったので、最後はレイアウトの動画で締めたいと思います。

 久しぶりに、未だ未塗装のアリイのプラモデル(EF66と24系)を走らせました。

 EF66の下回りは、パワトラを2台使って、Digitraxの廉価版デコーダーでDCC化したものです。

 アリイのプラモは、ボディの厚みやディティールに難がありますが、こうして走らせてみると、ちゃんと鉄道模型に見えるから立派なものです。

 

 本日も、ご訪問ありがとうございました。