イタリア・ワイン探求(その70)トスカーナ州「ラ・ピネタ2022・ポデーレ・モナステロ」(トスカーナIGT)

 これ前から飲んでみたかった「ピノ・ノワール(ピノ・ネロ)」。なぜならあのロマネ・コンティと同じ「777クローン」ピノ・ノワールの苗木で造られているのです。
 産地はキャンティの中心地区「カステリーナ・イン・キァンティ」で「サッシカイア」の生みの親であるジャコモ・タキス氏が「イタリア・ワインのベストのひとつ」と絶賛しているんですねえ。
 1stVtgは2006なのですが、年々注目度は高まり、2015Vtgが『ヴェロネッリ』2018で最高の栄誉とされる「イル・ソーレ」を獲得。2020Vtgは「ルカ・マローニ97点、ビベンダ2023で5グラッポリ」、2021Vtgは「ビベンダ2024で5グラッポリ獲得、ヴェロネッリ2024でトレ・ステッレオーロ」、本2022Vtgはなんと『ルカ・ガルディーニ』で99点を獲得。
 ちなみにトスカーナはキャンティなどに使われるサンジョヴェーゼ種がメインですが、2012Vtgがイタリア・ソムリエ協会2014ベスト・トスカーナワインを獲得。
 並み居る銘醸のサンジョヴェーゼを抑え、このピノ・ノワールが最高の一本に選ばれているんですね。評では「凝縮感ある果実味にトスカーナ特有の酸味がプラスされた極上の味わい」。

 生産本数も少なく年産3500本。畑はピノ・ノワールのみ植えられているわずか1.5ha標高495mの東向き斜面で、石の多い石灰質土壌。
 松林に囲まれているのでイタリア語で松を意味する「ラ・ピネタ」と命名されています。
 仕立てはグイヨ方式、選定時のブドウ樹1本あたりの芽は5~6個。
 1株から収穫するブドウは400g以下に抑えていますね。
 フランスアリエ産のバリックの新樽で12ヶ月熟成。ノンフィル・ノンコラ(無清澄、無濾過)でリリースされます。お値段8000円程度です。

 さていつもならキャンプ場でBBQなんですが、寒い・・
 週末は暖かいとの情報から摩耶山・掬星台で軽く宴会しようということに。


 アテは強力なものは控え、パン・ド・カンパーニュなど、ワインの味を引き立てる簡単なもので。

 


 抜栓直後の香りはそれほどでもなかったですが、徐々にふわ~と立ち昇る、チェリーの果実香。
柔らかなまさにピノ・ノワールですね。
これは美味しいです!


 ワイナリー「ポデーレ・モナステロ」は、ボルドー1級「シャトー・ ラフィット・ロートシルト」とのジョイント・ヴェンチャーで誕生したワイナリー(ロッカ・ディ・フラッシネッロ)の醸造長を務めるアレッサンドロ・チェライ氏のプライベートワイナリー。
 ジャコモ・タキス氏から「イタリアの明日のスター」と指名される今後のイタリア・ワイン界を牽引する造り手だそうです。
 氏は小川に沿った谷の北の斜面、周りの土地よりも気温が低い冷涼なミクロクリマという特徴があり、昼夜の寒暖差も夏は昼35度、夜15度と大きく、石灰質の土壌である畑を見て、「ピノ・ノワールに適しているに違いない」と確信したそう。

 早速「ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(DRC)」の苗木家アンリ=グザヴィエ・ギョーム氏を招き、詳しく調査してもらった結果、ロマネ・コンティの畑で栽培されているものと同じピノ・ノワールのクローン777を提供してもらったそうです。

 こうして誕生した「ラ・ピネタ」は初リリースから世界各国で大反響だそうで、ワイン・スペクテイターは、「これは豪華なピノ・ネロだ。イチゴ、花、ミネラルの香り。フルボディで、洗練されたタンニンと上品でブレの無い正確な味わい。今飲んでも楽しめる。」と大絶賛コメント。

 他にも「カベルネ・ソーヴィニョンとメルロー」のブレンドによるボルドー・スタイル「カンパナイオ」も造っており、こちらはすでに金剛山キャンプ場でBBQしながら飲んでいます。(探求編第2回)

 ワイナリー「ポデーレ・モナステロ」。
イタリア最高のピノ・ノワール造りに情熱を燃やしていたチェライ氏は2000年にポデーレ・モナステロ (Podere Monastero)を設立。
ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティの苗木家を招聘して畑を造成、ロマネ・コンティの畑と同じブルゴーニュ最高の777クローンのピノ・ノワールの苗木を植樹してワイン造りを開始。
 いきなりパーカー・ポイント92点を獲得する快挙。
ブルゴーニュ・ワインでもこの点数は極めて高いハードルだそうで(の、割にはパーカーさん濃厚なスペイン・ワインには90点以上連発しますが・・)2005年物のブルゴーニュでPP92点を獲得したワインには、「ジャン=イヴ・ビゾ氏のヴォーヌ・ロマネ1級」、「アンリ・ジャイエの孫娘であるセシル・トランブレー氏のヴォーヌ・ロマネ・ヴィエイユ・ヴィーニュ」、「アンリ・ペロ=ミノ氏のヴォーヌ・ロマネ」など、そうそうたる顔ぶれなんですね(飲んだことありませんが:笑)。

 チェライ氏は残りの1.5haの区画でカベルネ・ソーヴィニョンとメルローを栽培し重厚なボルドー・スタイルの「カンパナイオ」を造っています。(上述)
このワインも初Vtgから『ワイン・アドヴォケイト』と『ワイン・スペクテーター』の両誌で同時に90点を獲得しています。

 ピノ・ノワールはイタリアの環境には適さないと言われていますが、世界最良の品種の1つでもあります。
 トスカーナはピノ・ノワール以外のブドウ品種で有名ですが(サンジョヴェーゼしかりスーパー・タスカンしかり)、いかにしてこの地で素晴らしいピノ・ノワールのワインを造るかということを追求。
 土地の選択が最も重要な要素で、クローンや台木選びと同様に入念な調査を実施。
 地質調査はフランスの最も有名な苗木家で、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティやドメーヌ・ルロワの専属苗木家を務めているペピニエール・ギョーム氏が担当。
 苗木もロマネ・コンティの畑で栽培されている最上のピノ・ノワールのクローンである777をペピニエール・ギョーム氏から提供してもらい、カベルネ・ソーヴィニヨン(クローン169)、メルロー(クローン181)と共に2001年に植樹。すべて最上のフレンチ・クローンの苗木なんですね。

 現在、ブドウ畑は3ヘクタールで、そのうちの1.5ヘクタールでピノ・ノワール、残りの1.5ヘクタールでカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローを1/2ずつ栽培。
 ピノ・ノワールが栽培されている「ラ・ピネタ」の畑は、アラビア( Arabia)川という小川に沿っているため昼夜の寒暖差が大きく(夏は昼35度、夜15度)、周りの土地よりも気温が低い冷涼なミクロクリマ。土壌は石灰質で、東向きの斜面で、ブルゴーニュのコート・ドールのようなテロワールだそう。
 温暖なトスカーナでピノ・ノワールの栽培が可能になった最大の理由は、この特異なミクロクリマにあるそうで、「カンパナイオ」は、「ラ・ピネタ」から500-600m離れた丘のほぼ頂上にある南向きの畑。
ここはメディオインパストと呼ばれる石灰と砂質の土壌。

 栽培は化学物質を使わない有機農法。薬品は唯一ボルドー液のみで、害虫などの駆除にはバチルス・チューリンゲンシス(BT剤、真正細菌の一種、微生物殺虫剤として、世界各国で使用)の散布で対処。
畑はピノ・ノワールのみが植樹された1.5haの区画で、標高495メートルの東向きの斜面で、石の多い石灰質土壌。
 「ラ・ピネタ」とは松を意味するイタリア語。「ラ・ピネタ」の区画が松林に囲まれていることから命名されラベルにも描かれています。
 仕立てはグイヨ方式。植樹比率は1ha当り5,900本。剪定時のブドウ樹1本当たりの芽は5-6個。収穫時に残す房の数は最大で3房で、1株から収穫するブドウは400グラム以下。
手摘みで収穫、90%除梗後、12時間の低温マセレーション、その後フランス、アリエ産のオークの発酵槽でアルコール発酵。
 発酵温度は25度で、発酵期間は約1週間。発酵終了後も18日間のマセレーション。
発酵と果皮浸漬の間は1日2回のポンピング・オーバーと1日1回のパンチング・ダウン。
圧搾後、フランス、アリエ産の容量225リットルのミディアム・トーストのバリックに移し、マロラクティック発酵と熟成を実施。
 熟成はシュール・リーの状態で行い、バトナージュは行わず、熟成終了後、無清澄・無濾過で瓶詰め。
ちなみにイタリアでは「ピノ・ネロ」ですね。

 最後にワインガイド評価でも。
『ルカ・ガルディーニ』99点(本2022Vtg)
 濃厚で鮮やかなルビーレッド色。レッドプラムとサワーチェリーの香りに、バルサミックがバックにあるピンクペッパー、バラの茎とローズマリーのワイルドなタッチを感じる。
味わいは張りがあり、非常にエレガント。酸味がピンクグレープフルーツを思わせる赤い果実を支えている。最後はユーカリで締めくくる。素晴らしい深み、非常に飲み心地良く、塩気がある。(2024年4月)

『ワイン・アドヴォケイト』92点(2020Vtg)
 暖かく日照に恵まれたヴィンテージで、ワインはまろやかで熟しており、全体的に良好なバランスと力強さが表れている。ワインには、トスカーナらしい直線的なミネラル感があると感じる。これはきっと、この地域のユニークな土壌と関係があるのだろう。このワインはユニークな視点と、少し大柄でより寛大なスタイルを求める人にお勧めだ。

『ワイン・スペクテーター』90点(2019年Vtg)
 バニラとトーストの要素を伴う、スパイシーなオークが特徴で、しなやかなテクスチャーとサクランボの果実を軸に調和している。終盤は、長くスモーキーな余韻。調和のとれた、その新鮮な果実を輝かせるのに、約2年かかるだろう。2023年~2032年までが飲み頃。

 しかし昨日は暑かった・・