夜話 1329 ムクゲが咲いた | 善知鳥吉左の八女夜話

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夜話 1329 ムクゲが咲いた 


梅雨のこのごろ 訪れる人もいない しばし玄関に出ることもなかった 

今日は朝からの画塾の指導日だ  

運動を兼ね 門のまわりの掃除に出て驚いた 庭のムクゲが八分咲き 薄紫の花弁に梅雨がしつとりと降り注いでいる 

華に注ぐ雨を「紅雨」という  よって老生「紅雨」を号とした
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十年前 「坂本繁二郎アトリエ跡」の垣に四十本ほどムクゲを植えた 

今は亡きご遺族の依頼だった 

恩師が好きな花と聞いた 

絵を描く園芸家田中君にたのんで苗木を用意してもらった 

坂本先生は夏が好きだった 

ムクゲは夏の花 しかもさりげない咲き方をする

「真夏に咲くムクゲを」とご遺族がが希望されたのも そのため 

白のムクゲが欲しかったが 苗木では判断がつかず 薄紫も混じった 

菩提寺無量寿院の坂本先生の「筆塚」の側にも植えた

そのとき わが家に分けてもらった一樹が今朝花を開いたのだ 

この木はほとんど手入れ不要 

これも恩師の気に入りだつた理由だったそうな

わが家の前の公道にもムクゲ二株がある それらはまだ開花していない 

市道の並木として植えた柘植が 痛み 枯れても 手入れせず替え木も植えない 八女市最大の片がわ二車線の公道である

くりかえし役所に言っても無駄 ママヨ 市道は市民の財産 

そこでムクゲを公道の並木として二株植えた 当方寄付したつもり

この木は役所がほったらかしても 枯れはしない 

花の少ない真夏の公道を彩るのにもってこい 

韓国の國華とか 

我等の筑紫君磐井もアチラの血をひく  

ムクゲの向うに磐井の生前墓の岩戸山古墳が見える 

この風景も真夏の楽しみ 

山本健吉は「軽み論」のなかに芭蕉のつぎの句を使った 

道のべの 木槿は 馬にくはれけり 

恩師は「馬の坂本」と云われた 

俳句にも一家言あった恩師 承知の句だったかも 


懐かしい俳人森澄雄もムクゲを詠った次の句を残している

白木槿 暮れて 越後の真くらがり


木槿はムクゲのこと 花は葵に似る 季語としては秋

(敬称略)