夜話 1330「さだまさし」の『かすてぃら』待望 | 善知鳥吉左の八女夜話

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夜話 1330 「さだまさし」の『かすてぃら』待望 


梅雨の候 益々被災地訪問などにお元気にご活躍のご様子 蔭ながら 感激しつつ お慶び申し上げます 

先般の佐賀でのコンサートの折りはお忙しい時間を割いて お会い戴き 深く感謝申し上げます 

なおそのおりのフイナレ―の『防人の詩』には 山本健吉先生の学恩を導きとしている老生 声を抑えて涙しました 

満洲育ちの老生 すでに あの歌が映画『ニ百三高地』の主題歌と承知してはいましたが あの高地で旧制中学の野戦訓練を数回受けた者として涙があふれました 

健吉先生はあの歌を「御詠歌」として愛唱されたとか 

先日 映画『ニ百三高地』に再々接しました 

乃木希典が次男の戦死の報を聞く場面では 『ニ百三高地』中腹あたり
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にあった「乃木保典君戦死之所」(右)の碑前で学友一同と捧げ銃した七十年ほど前の記憶が鮮やかによみがえりました 


さて八女の山本健吉先生ご夫妻の記念文庫も 今年度中に市民の期待に応えるべく整理が着々と進んでいます 

さださんが昨年健吉先生廿五回忌に参加していただいた御行為に感激された市長さんの深い肝入りによるものと存じています 


健吉先生の最後の論文が文学誌『新潮千号記念号』に発表された『百瀬博教という詩人』であることを初めて知り 入手困難と聞きましたが最寄りの図書館の好意で昨夜やっと読みあげました 

既に御承知のこととは存じますが 健吉先生はこの詩人をフランソア、ヴィヨンになぞらえ 百瀬の詩集『絹半纏』について『日本唯一の游俠詩人の作品』として好意的に論じておられます

詩集はどうやら稀覯本らしく まだ老生の手もとに届いていませんが 近々手にすることができそうです 健吉先生にはまさに 長崎びと特有の侠気が色濃く流れていたと存じていた老生 百瀬なる詩人が隣人のように思えてなりません

このような事を書きますのは 八女市長さんが昨年のさださんの御好意をいたく感謝し「長崎の人は男儀があるな」と嘆じられたこと それに健吉先生の『防人の詩』をご詠歌と断じる詩心 其れに加え健吉先生は晩年 熊野出身の中上健次との厚い交友を持っていたことなど 百瀬にヴィヨンを見届ける論客の姿勢に通底する游俠の心根を思わずにはおられません 

こんな取り留めもないことを書きますのは 御著をもとに間もなく放映されると聞く「かすてぃら」に この老人 大変期待をしています 

長崎生まれのきっぷのいい 味でいえば「岩永梅寿軒」の「カステラ」のような また「寒菊」のような 意気のいいものではないかと 早々と想像しています 

これはすでに申し上げたことかも知れませんが健吉先生は

あの「岩永梅寿軒」の前にあった「石橋(忍月)弁護士事務所」の隣下村産婦人科で生れておられるのも 何かのご縁でございましょう 

このことを知る端緒をつくっていただいたのは「梅寿軒」の先代ご主人でした

らちもない こんなこと並べ立てますのも つくづくと老いを感じる近況のもたらすもの お許しください 

一日も早く「かすてぃら」の意気のよさに接したく存じます

お忙しいおりのお耳を汚した無礼を おなじ長崎生まれの老人のたわごととお聞き流し下されば この老人感謝に堪えません 

ご健闘とご健康を祈り  末尾ながら 先般お世話戴きましたスタッフの皆さまによろしくご伝言くださいますよう お願いいたし擱筆さていただきます                 

                                        不尽                                 

さだまさし様