夜話225 川口孫治郎の『自然暦』
「ぶらりといつもの古本屋に入ったら、目についた『自然暦』。これを本日とりあげねばなるまいる。なにしろ古本の値段がとびきり安かった。お礼奉公のつもり。」いつもの自慢話めいたところが紅雨亭のにくいところ。以下は紅雨亭のしゃべるところ。
川口孫治郎は和歌山県のひと。東京高等師範を経て京都帝国大学卒。大正九年に中学明善高の校長。野鳥の生態、民俗学の研究者として著名。
『日本鳥類生態学資料』 『自然暦』 『飛騨の白川村』の名著がある。のち津軽海峡での海鳥研究中、断崖より落下して重傷。昭和十二年三月十九日死亡。64才。
その著名な『自然暦』からこの筑後地区に関係のあるものを少し上げてみる。
・「梅の花が白く咲きそろったら杉の葉がこげ茶になる」
・「クワンドウ(フキのとう)を食うと狸は馬鹿になる。
・マンサクの黄花の盛り頃はヤマドリが罠にかかり時。
・蕨の出るころウサギの仔が多く産まるる。
・ムツゴロウが出なけりゃシギが帰って来ぬ。
・浜千鳥は若鮎を食って鳴き始める。
・ヒヨドリは椿の花を吸い始めると苦くなる。
・三月さうの(旧三月の鶏の肉は味える。(「さ」は早いこと、「うの」の「の』 は唯やわらかく長めしもの)。
・若鮎が四つ手網にかかり始めると白エビもかかり始める。
・桜イダ(ウグイのこと。桜咲くころイダは矢部川筋に大群で現れる。桜咲くころの鮒はうまくない(卵を持ち始める)。
・菜の花が咲くと鰹が釣れる。蘆の葉の芽ぐむころからエツが盛んにとれる。
・上茶ツツジ(霧島ツツジの咲き始めるころは茶摘みがはじまる。その茶は上等品)。
・落第花(明善校の進級査定が終わるころコブシの花が咲く)。
続きは後日 。紅雨亭ひとやすみ。