比叡山東門院 守山寺(滋賀) | 星の道

星の道

写真横向きブログにようこそ。
神社巡りの記事ばかりです。

先日、滋賀県守山市にある守山寺に行ってまいりました。



こちらは延暦年間(782-805)に比叡山の僧坊のひとつとして伝教大師最澄が開いたお寺で、正確には「比叡山 東門院」と言って、桓武天皇の時代から「比叡山を守る東門」として寺号と5村350石という大きな寺領を賜った、という縁起が伝えられる古刹の寺院です。

桓武天皇から賜った「守山寺」の名はずばり「山(比叡山)を守る寺」という意味。

そういった深い繋がりがあるから山号も比叡山なんですね。


このお寺は、実は数回くらい参拝に来ております。
うっかり携帯を持ち忘れて写真を撮ってなかったり、また別の時は写真は撮ってはいたのだけれど多忙で書くタイミングが合わなかったりで、「いつか書こう…」と思いつつ、なかなかブログ記事にはしてませんでした。

今回はこちらに来た時の出来事なんかをまとめて書く予定なのですが、写真だけは去年の秋頃に撮影したものメインとなっています。
ご了承くださいませ。




本堂から見た境内の様子。

こちらのお寺はJR守山駅から歩いていける距離にあり、毎月17日は守山観音様の縁日と言うことで境内でマルシェをやっておられます。

写真にもあるように楼門周辺や境内にテントを張って、そちらで軽食や飲み物、アクセサリーや着物などを販売されてました。



注連縄を撒いた立派な銀杏の木。
(後で調べてみてわかったんですが、室町時代からこちらにあると伝わる大木なんだそうです)
この銀杏の木の横には重要文化財に指定されている石造の宝篋印塔が建ってたんですが、写真を撮るのを忘れてしまいました…。




当日の沢山の地元の方が来られてました。
人で混むマルシェを抜けてまっすぐ進むと目の前に本堂があって、こちらのお寺のご本尊である十一面観音が祀られています。
まずはそちらにご挨拶。



本堂の写真がこちら。
マルシェ周辺は賑わっていたけれど本堂前は不思議と自分ひとり…みたいな感じだったので、正面で手を合わせて御挨拶をした後はそのままじりじりと横に移動して、はじっこのほうでごにょごにょと小声で短いお経をあげてました。



この写真で言うと右側(上側と言うか…)の端のほうです。


お経が終わって後ろを向くと、春物らしき薄手のスーツを着たお爺さんが私の真後ろのあたりに少し離れて立っておられました。

そのお爺さんは私に「あちらの護摩堂に不動明王がおられますよ。今日は御簾もあがっているのでそちらもどうぞ」と、本堂右側にある護摩堂を案内してくださいました。



親切な方だなー、と思いつつお礼を言ってそのまま護摩堂の前に移動し、お不動さんにもご挨拶をさせていただきました。



こちらが本堂右側にある護摩堂。

お堂の中にはご本尊の不動明王と脇侍の制托迦童子と衿羯羅童子、そして左側には大日如来が祀られていました。
あと、不思議なことに空海さんのお弟子さんの方の像がありました。
(どうもこちらでお祀りされている不動明王に縁のある方のようです)



お堂の前に立って手を合わせていたら、先程のお爺さんに「屈んで拝めばお不動さんの姿が見えますよ」と教えられたので、「それでは」ともう一度しゃがむ格好で手を合わせつつお堂の中をじっとみつめると、暗がりの中で確かにお姿が見える。
内部が暗いのではっきりとは見えないんだけど、御簾の奥に座っておられる不動明王像の足腰あたりがおぼろげにわかる感じでした。

こちらのお不動様は座像なんだなあ…と思って見ていると、「この大きさのお不動さんは他にはそうそうない。この辺りだと他には京都の東寺くらいです」と、お不動様について詳しく教えてくださる声が再び後ろから聞こえてきました。


このかた、すっごいこちらのお不動さんに詳しい人なんだなあ…
こちらのお寺と繋がりのあるお近くの方なのかな…?と、あくまで「お寺に詳しい地元のお爺さん」の感覚で聞いていたら、そのお爺さんはお堂の前に移動して施錠してある鍵を開け、格子扉を半分ほど手で開けられました。


…?!


…なんでこのお爺さん、お堂の鍵をあけられるの…?!?!


…と本気で驚いたんですが、結論から言うとこのお爺さんはこちら(東門院)のご住職でした…。

(いでたちが僧衣じゃなくて洋装だったんで、本当にまったくお坊さんだとは思ってなかったです…)


その後そのまま、護摩堂の前で色々とご住職からお寺のお話を聞かせていただくことに。

結構色々とお話ししてもらったんですが、天台宗と真言宗の護摩の違いとか、こちらのお不動さんは元々は上に書いた空海のお弟子さんにあたる高僧が護摩を焚いてお守りをされていたのだということとか。


「なるほど、空海のお弟子さんの像が天台宗のお寺にあるのはだからなのね」と話を聞いて納得しました。

それ以外にも色々と教えてもらったんですが、実は今回ご住職から聞いて初めて知ったことがあって、それは「人が亡くなった時に迎えに来るのは不動明王」ということです。

なんとなくだけど人があの世に行く時に迎えにきてくれる仏様って、浄土担当の阿弥陀如来さんなのかなー…とぼんやり思ってたんですが、不動明王なんだそうです。
私はこれが結構意外でした。
よくないものから守ってくれる役割の仏様なんだというイメージが強くて、あの世からのお迎え役でお不動さんがやってくる…というのは全く予想もしてなかった。


柔和な仏様じゃなくて仏様の中でも強面の不動明王がやって来るっていうのは、やっぱりあれなんですかね。
無くなってまだ間もない霊にちょっかいをかけてくるようなたちの悪い存在も現世にはいるから、そういうのを追い払ったり退けたりするために不動明王がボディガードのような役割で来てくださるんでしょうかね…?

ご住職にそこまでは聞いてないので正解なのかどうかはわかりませんけが、自分の頭で考えたらこういう理由なのかなと思いました。



こちらが護摩堂におられる不動明王と脇侍の制托迦童子と衿羯羅童子。
画像は守山市のサイトからお借りしました。




パーツごとに作って組み立てたものではなく、大木の幹を彫って作られた像なのだそう。
脇侍の二体も同じく一本の木(おそらく桜)から作られた像で、お不動さんと併せて国の重要文化財に指定されています。

こちらのお不動様と脇侍は数年前に半年間だけ東京国立博物館でお披露目をされていたんだそうです。

なんせ重要文化財ということもあって(しかもほぼ秘仏)博物館側は「せめて一年はこちらで展示したい」と借りる時にお願いされたそうなんだけど、ご住職曰く「そうは言っても信仰してる仏さん。博物館にあったら誰もお不動さんに護摩焚けないし、半年以上は無理です」と断られたんだとか。
それ以降はずっとこちらの護摩堂におられるんですが、護摩堂も特に開帳日などはなく、強いて言うならマルシェのある日に運よく御簾が上がっていたらガラス扉越しにお不動様を見ることが出来ます。

ただ、マルシェ日は必ず御簾が上がっているかというとそうでもなくて(別の月に行った時には御簾が降りていてなんも見えなかった)、お不動様が見られるかどうかは純粋に運がモノを言う感じですね…。
なので東京国立博物館で半年展示されてたのを見られた人は凄くラッキーだったんじゃないのかな、と思います。
(近いからと言って見られるわけでは無いので)




『のうまく さんまんだ ばざらだん せんだ まかろしゃだ そわたや うんたらた かんまん』

こちらはその時に教えてもらった不動明王の真言。


凄く気さくに色々と話してくださるご住職だったので、結構な時間、護摩堂の前で立ち話をさせてもらいました。
そしてそろそろお暇しようと思い「色々とためになるお話をありがとうございました。また参拝に来させてもらいます」と短くお礼を言ってそのまま帰ろうとしたときに、後ろから「さっき、なんで声をかけたのかと思う?」とご住職の声が。

「…?本堂の前でお経あげて手を合わせてたから、ですかね?」
「まあそうなんだけども、あの時な、お不動さんがあなたに「こっちもあるぞ」と声をかけてた。だからかわりに私が声をかけて護摩堂に案内をした」


…?!


びっくりして「お不動さんが何言ってるのか、ご住職には聞こえるんですか?!」と尋ねると、不動護摩の時などに脳内でお不動さんの声(というか思い)が伝わってくるのだそうです。
上にも書いたように過去にもお不動さんの声が護摩の祈祷中に聞こえたことがあって、その時の出来事も詳しく教えてもらいました。

かなり力を持ったお不動さんなんだな、というのが話を聞いた感想です。

あの空海さんのお弟子さんが護っておられた不動明王だし、さもありなんですが。




こちらは守山寺の花手水。
これは秋に行った時の写真ではなくて初夏頃だと思います。
花も薔薇ですしね。



こちらは手水舎の隣にあった仏像。




東門院、なんとも不思議なお寺でした。
数回行ってますが、そのうちの1回はお不動さまのいる護摩堂を開けてもらえ、ガラス扉越しではなく直接手を合わせて御挨拶が出来ました。
もう一度は本堂の中に入れてもらえ、なんとご本尊の十一面観音にも近くで手を合わせて御挨拶が出来たんだけど、もちろんこれも参拝者全員にそうされてるわけではなくて、ご住職が人を見て仏様の近くに招いてくださってるっぽいです。
(護摩堂の時のようにご住職の意思で人を選んで…ではなくて、他の何かの意思で声をかけておられるのかもしれない)



ただ私個人としては「短くてもいいからお経をあげて真剣に手を合わせる」、これをしていたらご住職から声をかけてもらえる可能性は凄く高くなるんじゃないのかなー…と思ってます。
その後にお堂を開けてもらえるか、本堂に入れてご本尊に会わせてもらえるか、というのは横に置いといて(これはもう運だと思う)、とても話の面白くて気さくなご住職なので、色々と興味深い話が沢山聞かせてもらえるんじゃないでしょうか。