現在でも、盲導犬や介護犬、警察犬、レスキューの現場で活躍する犬の姿を見た方もいるかもしれません。
少し前は、家の安全を守るための番犬が日本の家庭でも多くいましたし、牧場では家畜を守り統率する牧羊犬、狩りの場では多くの犬たちが活躍してきました。
私たち人間と一緒に仕事をするために、さまざまな姿になった犬の歴史は「仕事の歴史」ともいえるのかもしれません。
そんな犬の「仕事の歴史」の中でも、古い犬の仕事のひとつと今考えられているのが、人間や荷物を運ぶ「そり」を引く、そり犬。
シベリアンハスキーやサモエド、アラスカンマラミュートといった寒冷地出身の犬たちは、もともと犬ぞりを引く犬として活躍してきた、ということは有名です。
雪を弾く分厚いダブルコートの被毛、力強い体、重いものを引いても耐えられる骨格、そして長い道のりを駆けていく精神力を持っていることが特長といわれています。
でも、この犬たちが最も古い「働く犬」なのではないかといわれるようになったのは、とある遺跡で発見された犬のゲノムの調査が進展したから。
ロシア、シベリアにあるジョホフ島は、北極にもほど近い小さな島です。
1年を通して周囲が流氷でおおわれるこの島には、なんと9500年前から人が暮らしていて、その暮らしの様子をうかがい知ることが出来る遺跡があることが分かりました。
そして、この遺跡からは犬の下顎の骨が発見されました。
この骨からDNA犬のゲノムが検出され、当時のシベリアで暮らしていた人々と、犬との暮らし、そして9500年前の犬の姿を探るべく、さっそく調査が進められていたのです。
ジョホフ島で発見された犬のゲノムからは、9500年前の犬が、現在のそり犬たちと同じ祖先を持つことが分かったのです。
多くの場合、犬はオオカミやその仲間の動物との交雑が行われたり、それぞれの地域に適応した犬の仲間との交雑が行われ、その過程で犬たちはさまざまな姿かたちや性格などを手に入れたと考えられています。
しかしそり犬たちに関しては、オオカミなどとの交雑の痕跡が見られず、9500年前のそり犬と現代のそり犬たちの遺伝子がほぼ同じだったそうです。