※3年前に開催されたフォーラム
―第12回 京都大学地球環境フォーラム―
「幸福」の価値観と次世代環境人材育成
のレポを順次再掲載していこうと思います。
プライベートでブータンの話題が出たのをきっかけに
思い出して読み直したのですが、個人的に勉強になったので
まだ読まれていない方はよろしければどうぞ。
(頂いたコメントも残しています)
次に教壇に立たれたのは
京都大学こころの未来研究センター准教授、
社会心理学・文化心理学者の内田由紀子先生でした。
内田先生は
理路整然としたわかりやすい解説でありながら、
楽しそうにお話されていたのが印象的でした。
また聴講に行きたいと思える人でした。
講演のアウトラインは以下の通りでした。
・幸福感の意味と文化
・内閣府での議論の現状
・東日本大震災の影響
ブログでは幸福感の意味と文化というテーマをレポします。
内閣府での議論の現状、
東日本大震災の影響というのは、
データが中心となりますので、
②のリンク先でご確認いただきたいと思います。
幸福と言えば「ブータン!」
そもそも何故ブータン=幸福の国として注目されるようになったか?
GDP ではなく GNH(Gross National Happiness)であるからという話。
GDP(国内総生産)世界第3位であり、
国民一人当たりの経済的な豊かさが非常に高い日本に比べ、
ブータン王国は世界161位であること。
GNPと主観的幸福感の図では、
日本はGDPが高い国の中でも
幸福感が低いことが示されていました。
GDPが低くてもブータンのように幸福度の高い国があります。
これは幸福のパラドックス(1974)と言われる、
経済成長が人々の幸せに結びついていないことと一致しています。
スターリンは所得と幸福度の関係を分析し
「幸福のパラドックス」という表現で示しました。
こうした論理的に矛盾したジレンマが
日本にも同様に起こっているということでした。
お金が幸福をもたらすというわけでないことは、
日常生活の上でも切に感じることですね。
でもお金はあればあるほど制限なく自由が得られることがありますし。。。
しかし自由には相応の責任が伴うと考えるとパラドックスへ・・・
何故日本の幸福は低いのか?
◆日本社会不幸説というのがある
・自由選択が乏しい
・働く時間が長すぎる
・格差が広がっている
・夢や希望がない
◆日本人不感説
・そもそも幸せだという人生論やウキウキした感覚に乏しい
などの悲観的日本論があることも理由として挙げられています。
しかし、「幸福」とはこうあるべきだ、という価値観が
世界において一元化していないか?
実際の日本の幸福の中身とは?
ここで日米の幸福観の比較研究すると以下の通りだそうです。
日本 | 北米 |
「おだやかさ」 | 「うきうき」(Tsai et al.,2006) |
良いことと悪いことのバランス の重視 | 良いことがさらなる幸福を招く、 上昇的幸福(ji et al.,2001) |
関係志向 | 自己価値・自尊心 (Uchida et al .,2008; Uchida&Kitayama,2009) |
人並み志向・比較志向 (Hitokoto et al.,2008) | 自由選択 |
日本では人とのつながりや関係性を重視し、人と比較して
自分の位置を確認する傾向があります。
その関係性を重んじると感情を制御していく精神性でなければ成り立たず、
また関係性において得られる幸福感は他者と共感できることに多く含まれていそうです。
一方、北米では条件的幸福を望む傾向がみられるというのが
表で示されています。
「幸福」とは、
若くて健康で、よい教育をうけており、収入が良く、
外向的・楽観的で、自尊心が高く、勤労意欲がある者・・・・
若くて健康で、よい教育を受けたというリソースを使い、
自分の環境を向上させていくことに幸福観があるそうです。
北米の方はまわりのことが気にならないわけではなく、
個人個人が互いを尊重し合える関係であるということでしょうか。
関係性を気にする日本人は、平均値から自分がどの位置にいるのか、
人並みだったらとりあえず、安心みたいなところがありそうですね。
留学などして他国を知る人とは少し考え方も違いそうですね。
②につづきます。