ピンクのポンポン★80(80-122)
※阪神・淡路大震災を源とする物語(フィクション)です
尚、ピンクのポンポンの時計は、今も去年の夏の代々木体育館で止まったままなので、登場人物が過去の出来事を考える時、1年の時差が生じますので、ご了承下さい。
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新しい生活が始まって、半年も過ぎた頃には、父の存在を心の奥に残しつつ、母と妹の三人での生活を当たり前のように感じるようになっていた。震災から一年も過ぎていなかったのに、震災も避難所での生活も遠い思い出のように感じられた。
そして、母が働いて得られる収入は、神戸の頃とは違うことは、私も妹も自然と理解できていたので、欲しいものがあっても我慢することが当たり前になってていた。
周囲の友達か皆、持っていると思っていても、ちゃんと見ると、全員が持っている訳ではないことにも気づけたし、母の服の数は、毎年のように買い直さなければならない子供服とは違い、部屋着やパジャマさえも、同じ服を何年か、大切に着ていた。
贅沢はできなかったけれど、テレビに映る関西弁を喋る二人組のアイドルに興味を持ち始めるようになっていて、お小遣いで買った雑誌を毎日のように読み返したり、出演している番組を見るようになっていた。
同じアイドルを好きになったコ達と、雑誌を交換して読むことで、読める雑誌が増えたり、出演番組をたくさん知ることが出来ることも楽しかった。でも、他のコ達のように、コンサートに行ったり、何か物を買って欲しいと母にねだる気にはなれなかったし、服や小物を買ってくれたり、時には映画や食事に連れて行ってくれる祖父母にねだる気持ちにもなれないでいた。