ピンクのポンポン★80(80-94)
※阪神・淡路大震災を源とする物語(フィクション)です
尚、ピンクのポンポンの時計は、今も去年の夏の代々木体育館で止まったままなので、登場人物が過去の出来事を考える時、1年の時差が生じますので、ご了承下さい。
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父が優しく宥めてくれているのは分かったけれど、避難所である体育館を出られなくなったことで、私の心は悲しくて辛いままだった。
父が不在の間、母がどれだけ辛い思いや悲しい思いをしたのかということを分かっていないし、妹がどれだけ恐がって泣いたかも分かってはいない。話には聞いても実際に自分の目で母や妹の姿を見ていないから、『ここに居ようと思う』なんてことが言えるのだと思うと、腹立たしくも感じられたのだった。
校舎の前でしゃがみ込んでいたいた時も黙って傍についていてくれた母が、校門近くでしゃがみ込んで泣き続ける私に、やはり黙って傍についていてくれた。
「何で、パパの言うこと、聞くん?」
母の本音を知りたくなった私がそんな質問をすると、母が言った。
「だって家族だから。それに、私達が寮へ入ったら、パパとは毎日は会えなくなるのよ。家族全員が無事に生きているだけで幸せだなって、おばあちゃんの家族とお話ししていて思ったの」
「ママ、我慢、出来るん?」
「パパが居れば、大丈夫よ。多分だけどね」
そう言うと、母が笑った。