長い時間の流れの中で【69】 1・17 失い続ける時 | ぴかるんのブログ

ぴかるんのブログ

ピンクのポンポン

ピンクのポンポン★80(80-69)



※阪神・淡路大震災を源とする物語(フィクション)です

 尚、ピンクのポンポンの時計は、今も去年の夏の代々木体育館で止まったままなので、登場人物が過去の出来事を考える時、1年の時差が生じますので、ご了承下さい。


§☆§★§☆ V⌒⊥⌒V ☆§ ★§☆§

  確かに、祖母の顔色はいつもと違っていたし、苦しそうな顔つきだった。でも、三日前に元気な姿を見た私には、信じられないことだった。
 妹が私の隣に座り、私と同じように手を伸ばして祖母の頬に触れた。
 「おばあちゃん、寒いんちゃあう? 顔、冷たいで」
 祖父がポツリと言った。
 「来てくれて、ありがとう。でも、死んだら、寒いも暑いも関係ないから、大丈夫や」
 「そうなん?」
 「そうや」
 「おばあちゃんの元気な時の顔だけは、忘れんといてな」
 「うん」
 妹が返事をした後、ただ沈黙が流れた。

 いつの間にか祖母の枕元に座った母が、布団の中へ両手を伸ばし、祖母の手を握っているようだった。
 「お義母さん、東京から嫁いできた私によくして頂いて、ありがとうございました」
 母は静かに涙を流していた。母が布団から両手を出して立ち上がると、入れ替わりで父が祖母の枕元に座った。そして、コートのポケットから隠すように物を出すと、両手を伸ばして布団の中へ入れた。
 「向こうの体育館で、隣におるおばあちゃんから、お袋に渡して言われたもん、渡したからな。こんなもんしか持たせられへんけど、我慢してな。何も無いよりは、マシやで……」


 「今日、昼から、家へ帰って、写真探してくるわ。家も、結局は壊されてしまうことになるやろしな」
 祖父の一言で、やっと父に渡し忘れていたフイルムのことを思い出した私が、言った。
 「おじいちゃん、お正月の写真あるで。ママが火事やのに、フイルムを取りに、家へ戻ったんや」
 「ほんまか?」
 「うん」
 そう言うと、私はジンパーの右側のポケットのファスナーを開けて、フイルムケースを取り出した。
 「ほんまや!」
 父が興奮して、先に声を上げた。私は父にフイルムケースを差し出すと、父は受け取りながら言った。
 「ありがとう、良かった」

 久しぶりに、父の笑顔を見ることができた瞬間だった。

バナー

ポチ&ポチと応援、宜しくお願いします!!!
<(_`_)>
{ ★出して頂けることは、
嬉しいし、有難いことなのですが……

画像が荒すぎ
>誰か、文句言って下さい
(他力本願 )

 明日から映画 も公開!
>多分、行けないけど……
(お城よりも、歌舞伎 に遣いすぎ )
 ]