※阪神・淡路大震災を源とする物語(フィクション)です
尚、ピンクのポンポンの時計は、今も去年の夏の代々木体育館で止まったままなので、登場人物が過去の出来事を考える時、1年の時差が生じますので、ご了承下さい。
かりん糖を食べ終えると、
「ちょっと待っとってな」と言い、おばあちゃんは、再度、居間を出て行ったけれど、今度はすぐに戻ってきた。手にはお菓子の缶入れと、皮革表紙のアルバムを持っていた。
「これな、おばあちゃんの宝物なんやけど、体育館へ持って行っとこ思て、昨日、探したんや」
そう言いながら、おばあちゃんがお菓子の缶の蓋を開けると、中にはたくさんの絵葉書が入っていた。
「わー、凄いなぁ。見てえん(見せて貰っていいの)?」
「ええで」
私は手を伸ばして、葉書を一枚、手にとった。表を向けると、見たことの無い切手が貼られていて、外国の文字で消印が押されていた。
「外国から?」
「うん。そやから、切手もスタンプも日本のとは違うやろ?」
「うん」
一度も外国へ行ったこともなければ、外国から手紙も葉書も貰ったことの無かった子供の私にとっても、お菓子の缶の中に入っていた外国からの絵葉書は、宝石の様に見えた。
「こんなに、ようさん、どないしたん?」と訊くと、
「おばあちゃんの子供が、外国で働いていとうから、送ってくれたんや」と教えてくれた。
確かに、震災の次の日、体育館でそんな話を聞いた記憶があったことを思い出した私は訊いた。
「ほな、おばあちゃんも、外国、行ったことあるん?」
「ない、ない。『一回、来てな』って何回も言われとうけど、外国は怖いわ」
「何で怖いん?」
「行ったことあらへんし、どんな場所かも分からへんから」と言って、おばあちゃんは笑った。
「ふーん」と、気のない返事をしつつも、私は絵葉書に見入った。
暫くするとおばあちゃんが言った。
「みかん、どないする?」
「……」
私は返事に困った。母や妹はかりん糖を食べていないし、かりん糖を小学校の体育館へ持って帰れないことは分かっていた。それに、子供心にも、自分ばかりが食べることは良くないと考えたのだった。黙り続ける私におばあちゃんが言った。
「ジャンパーのホケットに、二個、入れとき。外でお母さんと妹さんに渡したげ」
「うん!」
私が大きく頷くと、おばあちゃんはみかんをネットから四つ取り出し、二つを私の前に置くと、かりん糖と残りのみかんを手に立ち上がり、居間を出て行った。
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{ マシュマロはどうなるのでしょう?
>さすがに、新ネタ希望
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正しくは、
義経が主人公でも、
別角度からの切り口が観たいのですが……
杉花粉の量が昨日から減った気がします。
そのせいか、やたらと眠いです
ただ、黄砂が本格的に飛来してくるシーズンな訳で……
喘息、大丈夫かな?
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