長い時間の流れの中で【27】 1・17 思い出が消える時 | ぴかるんのブログ

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ピンクのポンポン

ピンクのポンポン★80(80-27)



※阪神・淡路大震災を源とする物語(フィクション)です

 尚、ピンクのポンポンの時計は、今も去年の夏の代々木体育館で止まったままなので、登場人物が過去の出来事を考える時、1年の時差が生じますので、ご了承下さい。


§☆§★§☆ V⌒⊥⌒V ☆§ ★§☆§

 家に戻ると、ガス管からガスが漏れている家から鞄等の荷物が運び出されて、外に置かれていた。そして、その家の人が私達の姿を見つけると、駆け寄ってきた。
 「頼むわ、荷物、置かして(置かせて)!」
 「あの……」
 母は返事もしていなかったのに、
 「何で、あかんの? ウチとここんな状態やで、荷物くらい冒してえな!」と言い、母を睨んだ。母が何も言えなくなっていたので代わりに、私が言った内容が、相手の怒りに火をつけてしまった。
 「私んとこ、小学校へ荷物、預けてきたで。ママ、それが言いたいんや、思う」
 「何、それ? ウチとこが火事になって燃える言うんか? 縁起悪い! こん地震や、どこの家がこんなんなっても(どの家がこういう状況になっても)、おかしいなかったんやで! それやのに…… よう、そんなんするな! あんたとこが燃えたらええんや!」

 妹が大声で泣き出したせいか、外に出ていた近所の人が間に入った。
 「あんた、気が動転してるから言うても、言い過ぎや。まだ、出したい荷物があるんやったら出して、取り敢えず、逃げる準備しとき。あんたらも、もう暗いんやし、中、入っとき、寒いで」

 玄関の中へ入っても、暗いままだったけれど、何もしていないのに怒鳴られた恐怖から解放された分だけ、いくらかは気持ちも落ち着いた。妹はまだ泣いたままだったけれど、母も既に妹を宥める声を掛ける心の余裕を失っていた。
 「ママ、懐中電灯は?」
 私は真っ暗な中、靴を脱ぎながら訊くと、母は小さな声でゆっくりと言った。
 「ガス漏れしている時はね、使えないの。スイッチを入れた時の小さな静電気でガスに火がつくことがあるから……」
 「分かった」
 私はゆっくりと、両手で階段をさぐりながら二回へと上がった。
 手さぐりでリビングのソファへ辿り着くと、母も妹と共にソファへ来て、黙って昼寝の時に使った布団を私と妹に掛けてくれた。そして、
 「あのね、もしも火事になったら、布団を持って家を出てね。さて、パパの分の布団も下ろしておこうかな」と言い置いて、に三階へ上がろうとした時、外から爆発音が聞こえると同時に、家の中が明るくなった。
 「ママ!」
 妹か叫び声を上げた後の記憶は無かった。気付くと、他の御近所の人達と共に、坂道へ出る角の所で母と妹と三人で家事を見ていた。
 火元はガス漏れしていた家とは違う家だったけれど、炎が大きくて、あっと言う間に隣の家へ燃え移っていて、当時、小学三年生だった私にも、自宅が燃えてしまうことは理解できた。

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{ 只今、☁空
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