※阪神・淡路大震災を源とする物語(フィクション)です
尚、ピンクのポンポンの時計は、今も去年の夏の代々木体育館で止まったままなので、登場人物が過去の出来事を考える時、1年の時差が生じますので、ご了承下さい。
「ほんまやなぁ、変な月や。今、地震もあったやろ?」
父は私と並んで赤い月を見ながら、そう言った。
「アレ、やっぱり地震やったん?」
「うん、多分な。神戸で地震は珍しいけど、まぁ、小さかったしな」
「さっきのまで、月が上下に伸びた満月やった」
「そうか…… けったいな月やな。まぁ、でも雪が降ったから、雪がとけた水分が空に浮かんで虫メガネみたいなレンズの役目でもして、そんな風に見えたんかもしれへんな」
「ふーん」
それから、母に呼ばれるまで、私と父はベランダに並んで、赤い月を見ていた。
「ココア、できたわよ」
台所から母の声が聞こえた。振り向くと、母がココアをテーブルに並んでいた。父と共に部屋の中へ入り、リビングの向こう側にあるダイニングテーブルへ向かった。
母が作るココアは、今でも金型で絞った生クリームとシナモンがデコレーションされている。
ココアパウダーと黒糖、シナモンを牛乳で溶かし、仕上げの生クリームは糖きびを入れてホイップするので、クリームに少し黄色いっぽい色がつく。そして、とのクリームはテーブルの上で絞ってくれる。神戸の家では、仕上げに香付けのためのココアパウダーと、スライスアーモンドか、クラッシュアーモンドを生クリームの上にたくさんトッピングしてくれていた。
その夜のココアはアーモンドスライスのトッピングで、そのココアを飲んでいた時間が、最後の一家団欒になってしまった。
父がココアを飲み始めてから言った。
「フイルムの残りが少ないし、せっかくやから、写真、撮ろか。その方が結婚式の写真も早う(はよう)、焼ける」
「外で撮っちゃえば、良かったのに」
「そやな、せっかくカメラ、持って出たんやし、雪の中で撮ったら良かったな。今日、買うたマフラーと帽子と手袋で、撮ろか?」
「ヤッター!」
父の提案に、私が声を出してから妹の方を見ると、妹も嬉しそうだった。
「でも、雪が融けるまでは、外で使わないでね」
母に釘をさされたけれど、家の中でも新品を身に付けることができることが嬉しかった。
ココアを飲んでから、妹と一緒にお風呂に入り、パジャマの上にセーターを着てから、買ってもらったばかりの帽子とマフラーと手袋をはめた。
パジャマもセーターも、神戸の家では妹とずっとお揃いだった。外出する時や学校へ着て行く服は別々のこともあったけれど、母がお揃いの物を好んでいた。
最後にココアを飲んだマグカップも、家族で色違いの四つ葉模様の絵柄の入った物だった。父が緑、母がオレンジ、私がピンクで、妹は赤だった。おじいちゃんが青、おばあちゃんの物は赤紫色だった。
リビングのソファに座って、写真を撮った。妹と私のワンショット、妹と私のツーショット。そして、三脚を使って四人で写真を撮った後、
「パパとママの写真も撮りたい!」と行った私に、父がカメラを渡してくれた。そして、ソファに並んだ両親の写真を撮り終えたところで、カメラからフイルムを自動的に巻き取る音が聞こえた。
「よっしゃ、明日の昼休み、現像に出してくるから、明日の夜には見れるで」と、父がカメラからフイルムを抜き取って、フイルム用のケースに入れてから、テレビの上に置いた。
「パパ、忘れんといてな」と妹が言うと、
「ほんまや、気をつけんとな」と言い、父が笑った。
※今は、写真に関しては、『印刷』か『プリント』という言葉しか使いませんが、以前は『焼く』『焼き増し』という言葉を遣っていました。
撮影済みのフイルムをお店に持って行くと、
・現像のみ
・現像+焼く
選べるお店もありました。なので、現像だけお願いして、現像したフイルムを引き取りに行った時、発光台の上にのせて、焼きたい写真と枚数を指定して、改めて焼きの注文を出した方が安かったのです。
スピード印刷や、安い所だと写真の仕上がりが今一つだった上に、艶消し(表面がボコボコか、ザラザラ)が対応して貰えなかったので、現像だけ安い所へ出して、焼きはちゃんとした所へ依頼するということまでやってました。
若い人にとっては、浦島太郎の世界でしょ?(笑)
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<(_`_)>
{ 扁桃腺が腫れました
ヤバい……
「昨日だけ」か、「昨日から」なのかは?
今は、昨日の時点なので不明です ]