先日訪れた冬の八ヶ岳。桜平を起点として、根石岳へと登り根石岳山荘に一泊して帰ってきた。



根石岳山荘はとても快適な山小屋で、冬の時期に僕が八ヶ岳での登山を楽しむことができたのは、この山小屋があったからだ。



この小屋があるおかげで、桜平までの送迎もしてもらえるし、重い食糧など運ぶ必要もなく、冬用装備でも僅か30Lのザックでお釣りが来るくらいの荷物で済んでしまう。


小屋の中は暖房でポカポカ。夜寝る時は暑くて肌着一枚になったくらいの快適さ。



そんな感じで冬山登山の貴重なベース基地となるのが山小屋だ。


しかし、山小屋にはもう一つの顔があることを下山中に再認識。



冬期は休業中のオーレン小屋に立ち寄った時、ガイドさんが冬期避難小屋の存在と入り方などを教えてくれた。



オーレン小屋の別館が冬期は避難小屋として機能している。



表玄関は雪で埋もれているので、その場合は裏手に回って窓から中に入るようだ。



実際に行ってみると、窓の鍵は開いていて、たしかに中に入ることができるようになっていた。



中は結構な広さがあって、仮に荒天に見舞われたとしても、しっかり風雪を凌げる環境だと思う。


ここに辿り着く前に身体が冷えていなければ、何とか生き延びられるのかなと感じた。



後から写真を見ていて気付いたのだが、非常食も置いてあるようだ。


しかも、ただの非常食ではない。遭難者のご遺族からの寄贈品とのこと。


「今アナタの無事下山を多くの人達が待っています。二度と遭難の悲劇のない八ヶ岳にして下さい。生きろ!! 遭難者遺族より」


切実なメッセージを読んで、少しゾッとする思いがしたと同時に気を引き締めなければと思った。



そして、これ。こんな当たり前のことを注意書きとして書かなければならない現実。


冬期に限らず、山小屋は宿泊施設としての機能に加えて、避難小屋としての役割も担っている。


冬期休業していても、わざわざ鍵を開けっ放しにして、いざという時の避難小屋機能を提供するという公益追求の姿勢。



しかし、残念なことにそんな有難い好意を踏みにじる非常識な人間もいるようだ。



少し古いニュースになるけど、昨年の冬山シーズンにあり得ないような荒らされ方をした山小屋があったという話を聞いた時には驚きを隠せなかった。



今シーズン、初めて冬山という環境に身を置き、実際に避難小屋の様子を見て、いかに大切な機能であるかを実感しただけに、こういうマナー違反(ほとんど犯罪行為)がなくなることを心の底から祈りたい。