冬山は怖い。リスクが高過ぎる。


登山を始めた頃はそんなイメージを持っていて、冬山はやらないと決めていた。



そんな僕が今年、冬山デビューを果たした。


と言っても、まだ冬山初心者のド定番、北横岳、黒斑山に登っただけ。




玄人から見れば冬山と言えるレベルではないかもしれない。


人によってはチェーンスパイクだけで登る人もいるし、ましてやピッケルを使う必要性も乏しい山だと思う。


冬山と言えば、ガッツリ爪のついたアイゼンとピッケル。勝手ながらそんなイメージを持っていた。


昨年、息子と二人で訪れた新穂高ロープウェイでも、ロープウェイを待つ間、登山者のザックに取り付けられたピッケルが何とも格好良く見えたものだ。



その意味では、僕はまだ本格的な冬山デビューは果たしていないのかもしれない。


しかし、ゼロベースの僕が自己流でそういう装備を使いこなせる気もしない。冬山ハウツー本からある程度情報は得られるが、やはり不安は残る。


そこで、それなら人に教えてもらえばいいということで、冬山講習に参加してみることにした。


場所は谷川岳。内容はアイゼンとピッケルの使い方という初心者向けの講習だ。


朝から関越道をドライブ。途中で事故渋滞に捕まりながらも谷川岳ロープウェイ駅に到着。


ラスト数キロはかなり気を遣って運転するような路面コンディションであったが、VRX3を履いている安心感は強い。



ロープウェイ駅の駐車場は、天候がイマイチなこともあってかガラガラ。



冬の谷川岳はかなり人気で、稜線に人の列ができている写真を見たこともあるのだが、この時期だからなのか、天候の影響なのか、はたまた両方なのかわからないけど、週末なのにそんなに人が多い感じはしない。



ロープウェイ乗り場で集合。ガイドさんは2人で、参加者は10人ちょっと。ひと通り説明を受けてからロープウェイに乗り込む。





ガイドさんによれば例年と比べて随分と雪が少ないらしいが、僕にとってはこんなに雪の多いところに来たのは初めてだ。




トレースのないところを歩くと、平気で膝くらいまではズボッと足がハマってしまう。本来なら太ももくらいまで埋まるらしいから、この辺がいかに豪雪地帯なのかよくわかる。


最近登った北横岳、黒斑山とはレベル感が全然違う感じだ。本当の冬山に来てしまったという感覚。


仮に降雪直後のトレースのない登山道で、一歩一歩、膝まで埋まる状況だったら、確かに登るのに相当な時間がかかるだろうし、体力も消耗するんだろうな。



講習はロープウェイ天神平駅から少し歩いたところの手頃な斜面で行われる。午前はピッケルを使った滑落停止の基本、午後はアイゼン歩行、そして最後にアイゼンをつけてザックも背負った状態での滑落停止トレーニング。



12本爪アイゼンは既に北横岳、黒斑山で経験済みだが、ピッケルを使うのは人生初。



ガイドさんに見てもらいながら、何度も斜面を滑ってピッケルで止める練習に勤しむ。その後は、ピッケルを使った耐風姿勢のレクチャー。


事前に本で解説や写真などを見てはいたものの、やはりこういうのは実際にやってみないとわからない。


付け焼き刃で練習したところで本当に滑落してしまえば、そう簡単に止めることはできないから、そんな練習しても意味がないという意見もあるだろう。


もちろん、この数時間の練習で、咄嗟の時にこれができるかどうかは怪しいところだ。基本的にはピッケルでの滑落停止技術を使うことのないように、しっかりと歩行技術を高める必要があるのは間違いないだろう。


だけど、実際に難しさを経験してどういうものかを知る意味は十分あるし、これを機に常にピッケルの使い方をイメージしておくことで、全く知らないゼロの状態よりは、いざという時に使える可能性が僅かでも上がるのならば、練習する意義もあるだろう。



そういった意味でも非常に有意義な機会であった。午後のアイゼン講習も非常にためになった。まずは易しめのところで何度も練習して、もっと自然に歩けるようにしていきたい。


今回は冬山ウェアの機能性の高さも身体で実感できた。


正直、北横岳と黒斑山の時には、雪がウェアにつくことすらほとんどない状況だったが、今日は雪の上を滑りながら身体の向きを変えてピッケルで止めるわけだから、当然だが雪だらけになる。


しかし、これだけ雪まみれになっても、アルパイン用パンツ、ハードシェル、冬山用スパッツ、そしてアルパイン用登山靴などの威力は凄まじく、全く身体が濡れたり寒さを感じることは皆無であった。


使い方も学んだ。ハードシェルのゴムを締められることや、袖口の絞り方などを教えてもらったりして、いかに雪をシャットダウンするか意識することができた。


総括すると非常に充実感のある講習であった。夏山シーズンの間に忘れることもありそうなので、初心者のうちは冬山シーズンの最初に改めて受けてもいいかもしれない。


さて、次はどの山を目指そうか。