今回は山に登ったのではなく、山を見に行っただけだ。ただ山を見るためだけに、片道6時間以上をかけた1泊2日のちょっとした旅行。でも、これからの登山につながる旅だったのでここに記すことにした。





新宿駅で朝8時発の特急あずさに乗り込み松本へ。松本でバスに乗る。平湯バスターミナルでバスを乗り換えて終点の新穂高ロープウェイへと向かう。

今年の夏は、上高地から涸沢カールまでの往復と、西穂独標への登頂を計画している。それに先駆けて2人で冬の北アルプスを感じるというのが、今回の旅行の目的だ。

同時に息子には山の圧倒的な凄さみたいなものを、本当の冬山を目の前にして感じ取ってもらいたいとも思っている。

そんなわけで新穂高にやってきた。



この日はあいにくの天気で、お昼から少し雪が降ってきており、西穂高口に設置されたライブカメラの様子を見ても完全にガスっていて視界不良の様子だった一方、明日は朝から完全に晴れる予報だったので、初日はロープウェイに乗らずに早々とホテルにチェックイン。



宿泊は新穂高ロープウェイ駅の隣に位置するその名もホテル穂高。息子と2人でチェックインして、この日はゆっくりと過ごす。

最近、温泉に浸かるのが好きだと言い始めた息子にとって、雪見の露天風呂は初めての体験で、結構感動していた様子。



2日目は、朝から雲一つない快晴。昨日は何も見えなかった部屋のベランダからも綺麗な山が見える。多分、方向的には笠ヶ岳かなと思うが、確信は持てない。

朝食を済ませてチェックアウトをし8時半前にロープウェイ駅へと向かう。ホテルの隣がロープウェイ駅なので本当に便利だ。





ロープウェイの始発は9時だが、30分前のこの時点でそれなりに行列ができている。この寒い中、何十分も並んでロープウェイの始発を待っている人のほとんどは観光客ではなく登山者。みなさん気合いが入っている。

僕たちがこんな雪山を登山するなんて想像もつかないことだが、僕が想像した以上に登山者が多くてびっくりした。駅に入ってからも続々と登山者が我々の後に列をなして、かなりの人数となる。並んでいる人の8割くらいは登山者という感じ。







首尾良く始発のロープウェイに乗って西穂高口へ。登っている間にも雄大な西穂高岳をロープウェイから望むことができ、その存在感に圧倒される。





展望台からは真っ白な西穂高岳や槍ヶ岳の頂上が目の前に広がる。別の方角には笠ヶ岳や焼岳などもよく見える。西穂高岳をよく見ると、西穂高口からいくつかのピークを越えて西穂高岳に至る様子がとてもよく見て取れる。



この夏に息子と2人で登る予定の西穂独標のピークもしっかりと確認する。西穂高岳の頂上から視線を移動させると、わずかながらジャンダルムも見えている。

息子は穂高岳の主要登山ルートは理解していて、夏に西穂独標に登る計画の話をしていると、「奥穂高岳から西穂独標まで行くのー?ジャンダルム通るってことじゃーん!それはヤバイよー!」なんて冗談を言ったりしている。一度、地図を見せて説明しただけなのだが、よく覚えているものだなと驚くばかりだ。





今回は登山ではないけど、いつものようにリュックに綿菓子は入れてきたようで、西穂高岳をバックに綿菓子を食べ、また売店で売っていた「頂」という漢字の形をしたチュロスもペロリと完食。









展望台からの絶景を楽しんだ後は、頂の森というエリアで雪遊び。雪に覆われた森、寒いけど素晴らしい景色だ。息子はひたすら雪を手に取り僕に向かって投げてきたり、思いっきり空中にぶちまけてみたり。こっちは、周りの観光客に迷惑をかけないかヒヤヒヤ。

そうして雪遊びを存分に楽しんでから、ロープウェイにて下山しバスに乗り込む。ここからは再び長い旅路だ。

今回は山に登るわけでもないのに、あえて長い時間をかけて新穂高を訪れた。長い時間をかけて行くだけの価値はあった。息子もとにかく山が凄かったと言っていたし、幼児なりに何かしら感じるところはあったのではないかと思う。次は夏にまた来ようと息子と約束をして新穂高への一泊二日の小旅行を終える。


【番外編】



今回、西穂高口から見たのと同じような景色を、昨年12月にヨーロッパで見てきた。出張で訪れたオーストリアのとある街で、ケーブルカーとロープウェイを乗り継いで、標高2,256mの雪山を訪れた。







この山の面白いところは、頂上まで標高にして残り70mの地点までロープウェイで行けるということと、そこからほとんど危険箇所なく頂上まで歩いて行けるという点だ。観光客が登山装備ゼロの状態で2,000mを超える雪山の頂上に立つことができるわけだ。そんなことで、僕もまさかのビジネスシューズで2,256mの雪山の頂上に立つという経験をした。



頂上の直下にロープウェイの駅を設置できるくらいの平坦な場所があるという地形的な特徴と、ここを観光資源にしようというビジネス的な発想で実現された珍しいケースなのだろう。親子登山とは関係ないが、今回の雪山の絶景がオーストリアでの経験を思い出させてくれたので番外編としてちょっとだけ記しておくこととした。