冬山に行くのであればぜひ行きたいと思っていた山がある。
浅間山の第一外輪山で最高峰2,404mの標高を誇る黒斑山だ。
黒斑山そのものに登りたいというよりは、そこから見える浅間山の絶景を拝みたい。
通称ガトーショコラ。雪化粧をまとった浅間山がそう呼ばれていることを知ったのは、登山を始めてしばらく経ってから。
これまで幾度となく家族旅行で訪れた軽井沢から浅間山の姿を目にすることはあったが、すべて夏の話なので、ガトーショコラはまだ見たことがない。
インターネットで見る雪化粧の浅間山はとにかく美しいの一言で、ため息を漏らさずにはいられない。
そんな浅間山を間近で観られる機会がようやく訪れた。
黒斑山へは車坂峠を起点として、槍ヶ鞘、トーミの頭と言われるポイントを通過して山頂に至る一般的なコースで登る。表コースと呼ばれているようだ。
下山は気分を変えて、中コースと言われる樹林帯コースで下山するというのが今回のルート設定。
深夜の関越道、上信越道を駆け抜けて小諸インターで高速を降りて、車坂峠へ。
前回の北横岳と同様に道路の凍結を覚悟していたのだが、拍子抜けするくらいの路面状況。駐車場以外は雪や凍結箇所はなし。
やはり人気の山とあって7時前でもかなり駐車場は埋まっていた。
この時間だとビジターセンターはやっていないので、近くのホテルでトイレを借りる。
支度を済ませたら登山口でアイゼンを着けてから出発。
最初のうちは比較的なだらかな道を歩く。トレースはしっかりついているので、道に迷うことはない。
しばらくして富士山を発見。距離としては結構離れているので、富士山は見えないかなーと思っていたところに嬉しい誤算。
最近、新幹線や飛行機から見てカッコいいなぁと惚れ惚れしているのが御嶽山。今日もカッコいい姿を見せてくれた。夏になったらぜひ登ってみたい。
木々に雪が積もっている姿も美しい。開けた場所での景色も楽しみだけど、こういう森の中を歩くのも気持ちが良い。
気持ちよく歩いていると、突然目の前に浅間山が出現。まだ全容は見えないが、ついにガトーショコラとの対面だ。
早くガトーショコラの全体像を見たい!と先を急ぐ僕の目の前に現れたのは避難シェルター。
ガトーショコラなどとほんわかした名前で呼んでいるが、浅間山は立派な活火山。現在の噴火警戒レベルは2。
正直、いざと言う時にこの避難シェルターの近くにいる確率を考えると、気休めにしかならないかもしれない。
しかし、避難シェルターが存在することで、普段から登山者に浅間山が活火山であることを意識させているとすれば、その効果はあるかもしれない。
僕も念のためヘルメットはザックからすぐに取り出せるよう忍ばせてある。有事を考えれば、本当は予め被っておいた方がよかったかなと避難シェルターを見て感じた。
美しいの一言。あまり長く立ち止まっていると身体が冷えそうだが、それでもしばらく見惚れてしまう美しさ。
誰が最初に言ったか知らないが、確かにガトーショコラという表現は絶妙だ。本日は、随分と砂糖がたっぷりではあったが。
しばしガトーショコラを堪能して、その後は崖沿いの道を歩いてトーミの頭というピークを目指す。
崖沿いと言っても道幅はかなり広いので、そんなに危険を感じるレベルではない。
やや急な登りを頑張った先にあるのがトーミの頭。先ほどに増して、素晴らしいガトーショコラがお出迎え。休憩がてらしばらく写真撮影に勤しむ。
角張った感じが全くない丸みを帯びた山容、それでいて均整のとれたプロポーションが浅間山の魅力だ。
それに加えてこの雪化粧。「美しい山」という基準でランキングを作れば上位に来るのは間違いない。この景色が黒斑山の価値の根源をなしていると言ってよい。
浅間山に繋がる稜線も、浅間山を引き立てるのに一役買っている。外輪山との共演でも絵になる山だ。
こちらは太陽との共演。どんな角度からでもいける。
しかし忘れちゃいけないのがこちら。やはり活火山。もくもくと噴煙を上げている。
ズームしてパシャリとした後、思わず先ほどのシェルターを思い出す。
この美しさと裏腹に、もし大噴火を起こしてしまえば、突如としてそのイメージは変わるだろう。
そういう美しさと凶暴性の二面性すら、もはやこの山の魅力なのかもしれない。
トーミの頭でしばし浅間山に酔いしれた後に黒斑山を目指すと、今度はこちらも美しい真っ白な森が待ち受けていた。
標高が低い場所では所々に雪が乗っかっているだけという印象だったが、この標高まで来ると全体的に真っ白。
そうこうして歩いていると唐突に黒斑山のピークが目の前に。
外輪山の最高峰である黒斑山の山頂から観る浅間山も素晴らしい。
そして、非常にベタかもしれないが、ここでガトーショコラとガトーショコラ。
わざわざコンビニでガトーショコラを買って登るのはこの山だけだろうし、次回来る時にはもうやらない気はする。
そんな初回限定特典みたいなこともやりつつ、砂糖たっぷりのガトーショコラに別れを告げて下山の途に。
下山は中コースと言われる樹林帯コースを利用。登ってくる人も少ないので静かな山歩きとなる。
雪がとても綺麗な森の中。
ちなみに今回活躍したのがコレ。前回の北横岳でグローブをぶら下げている人がいるのに気付いて早速購入。
これがあれば外したグローブを脇に抱えたりする必要もなくなるのでとても便利。今回使ってみて、僕的には欠かせないアイテムだと感じた。
下山も順調で11時前には登山口に戻る。小腹がすいたので、登山口のベンチで早めのランチ。
というわけで、念願かなって黒斑山に登り雪をまとった浅間山、通称ガトーショコラの絶景を堪能することができた。
気温は低かったけど、快晴でほぼ無風、絶好のコンディションの中、さしたるトラブルもなく、人生2回目の冬山登山が終了。
これでもかと言うくらい浅間山の美しさを褒めちぎってしまったが、確実にまた来たいと思わせる絶景であったのは間違いない。
口に入れたガトーショコラは若干しつこかったが、目に飛び込んできたガトーショコラを存分に堪能した冬の素晴らしい山行であった。