6月30日(日)、大府市の愛三文化会館で行われたひばり弦楽四重奏団とピアノの牛田智大によるコンサートに行きました。
知多半島育ちなので、大府市は知っている街ですが、会館の最寄り駅「共和」へ訪れるのは初めてです。
行きは雨が降る中、傘をさし、会館まで10分ほど、歩きました。それほど強い雨でなかったので、助かりました。
木の向こう側に、愛三文化会館の文字が見えます。
ホールに入ると
七夕飾りがありました。いつの間にかそんな季節になっていたのですね。
ホーるへの入り口です。
この文化会館は、地方によくある複合施設の中にホールが設置されています。演奏会が行われるのはもちのきホールです。
【プログラム】
グバイドゥーリナ:シャコンヌ(1962)…ピアノソロ 牛田智大
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第8番 ハ短調 Op.110
ショスタコーヴィチ:ピアノ五重奏曲 ト短調 Op.57
ひばり弦楽四重奏団(1stヴァイオリン 漆原啓子 2ndヴァイオリン 漆原朝子 ヴィオラ 大島亮 チェロ 辻本玲)
演奏機会の少ない曲が並ぶプログラム。そして、お客を呼ぶのが難しいと言われる室内楽。実際、牛田さんが出なかったら、たぶん、行くことはなかったと思います。あと、比較的、家から近い場所(といっても1時間半ぐらいかかりましたが)での開催だったのも後押しになりました。
今回は馴染みのない曲でなおかつ新しい時代の作品なので、予習はしませんでした。ピアノの楽譜を手に入れるのも難しそうだし、ちらっと聴いた感じ、とんでもなく難しい曲で、音をたどるのも大変そう。当日、当たって砕けろで行こう!
ピアノ以外の曲はもともと、予習しないので、ショスタコーヴィチの作品も事前学習なしで臨みました。
1曲目は、牛田さんのソロ。調性、拍子なしのいかにも現代音楽。刺激的な音が飛び込んできて、独特な音楽の世界に連れていかれます。これをわかろうとするとつらいですが、音の表現を素直に受け取ると、いろいろな感覚を呼び起こされて、気分が高揚していきます。この音楽をBGMとして聴こうとは思いませんが、ホールで奏者と一体となって体験するのはとても面白い。フォルテの連打もたくさん出てきましたが、牛田さんのピアノの音が素晴らしいのでうるさく感じませんでした。旋律というより、音が舞っている感じがして、音が流れていくというより、空間を作っている感じがしました。この曲が作られたのは1962年で、60年ほど前の作品なのですね。私が赤ちゃんの頃、こんな曲が作られていたとは驚きです。
2曲目は、ひばり弦楽四重奏団で、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番。プログラムの解説に「メッセージ性の強い作品」という記述がありましたが、納得です。聴いていると、美しい旋律であっても、心に重しをかけられているような感じがしてくるのです。ショスタコーヴィチが精神的な落ち込みにあった時期の作品だそうで、そのどんよりとした気持ちが伝わってくるある意味、怖い作品です。気持ちが解放されるのでは無く、追い詰められていくのを共有させられるのですから。ひばり弦楽四重奏団のメンバーは日本を代表する名手の方々なので、その表現力は素晴らしかったです。若さで勢いで突っ走る演奏と違い、熟達したテクニックから紡ぎ出される音楽は深くて、包容力のある演奏でした。
休憩後の3曲目は、ショスタコーヴィチのピアノ五重奏曲。牛田さんは、ずっとこの曲を演奏したかったそうで、そのせいか終わった後、すごく嬉しそうにしていました。
弦楽器とピアノが融合して、素晴らしい音楽を作り上げていました。名手たちとの協演を通してきっと牛田さんはいろいろなことを学んだのではないでしょうか。
アンコールはボロディンのピアノ五重奏曲の第2楽章でした。この曲が始まったとたん、気持ちがすっとほぐれていくのを感じました。ショスタコーヴィチで終わったら、気持ちが昂ったままになってしまうので、クールダウンの意味でも、ボロディンの曲はとても良かったです。
私は弦楽器が好きなので、牛田さんが見えなくても気にはなりませんでしたが、大の牛田ファンの方は見えるかどうか気にするみたいです。この日、私はチェロの辻本さんが、気になっていました。それというのも、バドミントン界の大御所、TAGOKENに、似ているよねとずっと思って見ていました。よくよく見れば違うのかもしれないけど…。
この日のコンサートは刺激的な曲が多かったせいか最近、良く陥る、うつらうつらする時間はありませんでした。新鮮な体験は眠気を吹き飛ばすようです。
この日も、休憩時間、帰りにコンサートの度にお会いする方(約束をしているわけではないのですが)と、音楽の話ができて楽しかったです。演奏者の好みも似通っていて(興味のない音楽家とか)、妙な安心感を感じました。