早朝の小田井宿から小諸経由で海野宿を歩いてきた続きです。車で上田市郊外を大きく巡りながら、上田市内をめざしていきます。絹遺産とシルクカードを追い求めて。
奈落の底のような風穴の底、冷気に包まれる
【2024年5月1日(水)】 小田井宿~小諸~海野宿~別所温泉氷沢の風穴~上田市内の絹遺産
海野宿からR152・254と進んで松本につながる道を走る。目指すは 丸子郷土博物館。
ここは「信州シルクロード」パンフレットによると、絹遺産スポットの一つとして挙げられているので、見学してみます。昭和3年の建築で、旧丸子町役場をモチーフとしている。また、上田市公文書館も併設されている。
実はシナノケンシ㈱絹糸紡績資料館というのも、前述のパンフレットで絹遺産として掲載されている。しかし2021年にその資料館は閉館して、展示物は信州大学繊維学部と上田市に寄贈された。後者のものがここに展示されている、と入館してみて知った。とにかくその一部を見学できて幸運だった。
ずいぶん大きな籠で飼っていたようだが、畳の上ではフンの始末がたいへんだろう。
いろんな商標があったのがわかる。上段は旭社のもので、下段のYODASHAは依田社である。
実に多くの製糸工場があったことに驚くばかり。
繰糸鍋もだいぶ見慣れてきた。
輸出用の梱包は洋俵という。生糸の形で出荷された。
秤なのでしょう。
こういった感じで地味ではあるけれどそれなりに面白く、知的探究心を刺激してくれた。
別所氷沢の風穴へ だいたいのタイムスケジュールは作ってあって、ほぼ予定通りに進んでいく。丸子郷土博物館から独鈷山の山裾をくぐって別所温泉へ向かっていく。温泉郷の南の山懐に、氷沢の風穴がある。林道に車を停めて出発。歩いて10分です。
すぐに三嶋神社が見えてきた。風穴への道は、この右手の森の奥へ延びている。
急斜面になると丸太階段が整備されていて、
まず右へ行ってみると、風穴と言うよりも埋もれた石垣のよう。こんなのが幾つか点在していた。風穴では冷風を利用して蚕種を保存した。孵化を抑制することによって、春蚕しかできなかったものを夏・秋蚕もできるようになった。
群馬県では荒船風穴が有名で、小諸市にも4箇所の風穴・蚕種貯蔵所がある。
ではメインエリアを覗いてみます。これはびっくり。縦7.4、横2.9、高さ3.6mの巨大な穴。
階段が作られている。手すりもあるので降りられそうだ。
山で見かける小さな横穴の風穴とはぜんぜん違う。本当に中は冷たいのか?
石段を降りたらまたまたびっくりです。冷蔵庫に入ったみたい。
石の隙間から風が吹き出してるわけでもないのに。真夏でもここなら快適に過ごせそう。
小諸の古い風穴は元禄期から使われていて、明治に入ると風穴の需要も高まった。
以上、風穴のお話でした。
道の駅あおきへ さて別所温泉には入らずに、丘を越えて青木村に入る。用があるのはここだ。シルクカードをいただいていきます。大黒天が生糸を梱包するという図柄。
次は上田市中心部へ向かう。ここで4箇所を巡ります。まず上田市観光会館。
シルクカードは夕焼けの北アルプスで、マンホールカードには六花文とツツジが散りばめられている。六文銭を花に見立てて円形に配置したのが六花文で、上田市のシンボルマークだ。
さすがは真田家のお膝元だけあって、観光案内所も明るくて活気がある。各種資料も充実していた。ここでシルクをもらったら、東北信・中南信の各5市町村のものが集まった。そうすると特別なシークレットカードが3枚もらえることになる。書類を1枚記入して、後日郵送とのこと。ここでゲットできて、縁起が良い。
次です。重文常田館製糸場 見学用駐車場に入ると目の前に四階繭倉庫が建っている。
常田製糸場は明治33年の創業で、昭和59年で幕を閉じた。7棟が重要文化財に指定されていて、内部を見学することができます。(右上がシルクカード)
事務所兼館主住宅だった建物。一階と二階で雰囲気違うのが面白い。
中庭には、譽れ高き桑の木が植えられていた。
とても瑞々しい色をしている。旨そうな葉だ。
敷地の奥には五階繭倉庫が連なっていて壮観だ。
こちらから中に入っていきます。
内部は和紙アートのギャラリーになっていた。
手前の三階繭倉庫の入口が開いていて、見学可のようだったので入ってみた。
急な階段が上へと延びている。左には荷物用EVがある。所々に残っている業務関連の貼り紙が、操業時を偲ばせていた。
繭倉庫はこんなふうにして役割を果たしていた。
見学通路はここまでです。これまでに見てきた絹遺産とは、ひと味違う雰囲気に触れることができました。
上田蚕種協業組合事務棟 という、どこで区切って読んだらいいか難しい場所。西友とボーダーレスな敷地に建っているので、必然的に西友Pをちょっとお借りした。
大正5年に設立した会社で、建物は翌年の建築。洋風の外観にインパクトがある。
入口上の庇は、カイコガと繭のデザインだった。
太平洋戦争の時代には軍需工場に転用されたこともあったが、今なお健在の事業所である。なのでしげしげと覗き込むのはご法度です。
向かって右手の八十二銀行側から見たところ。いかにも大正チックな外観である。
これは反対の西友側から。昔懐かしい木造校舎の小学校みたいだ。
敷地の奥にも気抜き屋根の乗った棟が建ち並んでいた。ちょっと雨が強くなってきたので、本日の終盤へと歩を進めていきます。
ゆきむら夢工房 は物産館である。上田菅平ICを過ぎて菅平高原方面へ車で5分ほど。中に小さな観光案内所がある。
平成18年までは、これより山側は真田町だった。当然ながら真田一族発祥の地である。上田市に合併したおかげで、上田市街地でも堂々と六文銭の旗を挙げられるようになったのかもしれない。マンホールカードには真田十勇士。子供みたいでかわいいところがミソだ。
これでひとまず上田市の見どころも終了。
今夜は戸倉上山田温泉のリーズナブルな宿です。それでは。
つづく