伊豆の小さな旅の二日目は沼津市大平地区です。ここは6年前に訪れて、なかなか面白かった記憶がある。狩野川に面して隠れ里のように息づきながら、たくさんの石仏を抱えている。本日はそこへの再訪。
【2024年2月11日】
沼津市大平地区7:55-10:45~沼津市歴史民俗資料館~静岡陶芸美術館~沼津市明治史料館
大平地区センターに駐車して出発です。ここは石仏巡りの拠点にもなっている。
まず目の前の角に、伊豆型道祖神のお出迎え。立て札が結構、撮影のじゃまになる。しかし良い眺めではあります。赤い前掛けも良く似合ってる。
大平地区は沼津アルプスと狩野川に四方を囲まれている。三島・沼津の市街地の喧騒からも隔絶されている。盆地状の真ん中は全部田んぼで、山際に集落が密集している。
朝一番の富士山が見えた。下まで真っ白!
反時計回りで北西に向かって、小山庚申堂の十字路左手に善光寺如来の小堂がある。大きな手を振ってらっしゃる。近くにあるはずの道祖神を探していたら民家の人が「何か探しものですか」と聞く。サイノカミを探してますと言ったら通じなかったので、道祖神と言い直した。サイノカミを知らないとはね。
そのサイノカミは頭のない姿で、小山庚申堂に移されていた。
ついでに庚申堂の裏山の三嶽神社に登ってみた。特別なものはなかった。
その南麓に「どうめんさん」がある。応永9年(1402)に大干ばつや地震があったので、ここにお堂を建てて祈祷したらご利益があった。その主役が道免さんだったという。
石龕の中の阿弥陀如来と如意輪観音。
山際に沿ってしばらく西へ。天王社の左手に、横松石仏群がある。不明瞭な道祖神も2体。
左には南無阿弥陀仏の六字名号塔、唯念塔だ。一番下に唯念の花押がある。
さらにゆくと、何だこれ?! クライミングウォールのように見えるのは法面崩落防止工事の姿だった。左手の壁を見ると、ここは石切場跡らしい。その下を沼津アルプストンネルが貫いている。トンネルの名称も秀逸だ。前回来訪時には工事中だった。このトンネルによって沼津市街から中伊豆へのバイパスになるらしいが、まだ中途半端のよう。車はひっきりなしに通っている。
大平地区の裏道小道でも、あちこちで車が多くて落ち着かなかった。
朝の晴天も掻き消えて、ここで雨が降ってきた。そんな予報ではなかったが、山じゃなくても予報は当たらない。
バイパス下をくぐったら、「おばしどころ」がある。ここも石丁場跡で、大岩を削った石段の上に石仏がある。
美しい聖観音像など。
石の屋根壁に守られて、色合いも表情も穏やかである。
大井公民館が一番西の奥まった部分で、そこから東へ向きを変えていきます。さっきのトンネルが見えた。雨は降ったり小降りになったり。そんな天気のせいか、気分も沈みがちである。
御前帰の石仏群。立派な唯念塔も見える。所々にはこういう良い石造物もあるが、はっとするような伊豆型道祖神にはなかなか出会えない。会えないとつまらなくなってくる。
谷津田の奥に一体あるはず、見晴らしがいいのに見えてこない。畦道途中の小島のような繁みに隠れていた。
笏持ちで、ゆったりと座っていた。こんなふうに地味な姿を見ると、やはり赤い前掛けの存在は大事だと思う。供え物も。
坦々と進んでいきます。
右手の森を背にして、石段上の祠の中に。
戸ケ谷集落の辻の2体。こんな外れでも車が通り抜けていく。
鷲頭神社の2体。
山口集落の小公園の隅にも。逆前掛けと帽子スタイル。
吉田集落の南外れにて。マフラースタイルで着こなしていた。
これはちょっといい容姿です。南蔵の新興住宅地の東側、円教寺そば。はっきりした顔立ちで、大きくうつむいている。笏を隠し持っている。実に印象的です。
伊豆型道祖神の原型と言っていい。大平地区では数少ない美形である。
県道北側の住宅地に入ると、路傍に2体。これもよくわからない。
その少し先には、なんとファミマもできました。バイパスは延伸するのだろうか。用地を取得してる様子もなかったが。車があふれるのは好ましくないけれど、ここへまた来ることもないだろう。
阿弥陀堂跡を見て北へ向かえば、もうすぐ駐車地点だ。
その道筋に一体。交通事故にでも遭ったのか、痛々しい姿だった。
二度目の大平は期待したよりも感動が少なかった。期待が大きすぎたか、天気が悪すぎたか。あるいは昨日の伊豆の国市の伊豆型道祖神が面白すぎたか。
Tunnel
大平を撤収して、さっき仰いだ沼津アルプストンネルをくぐり抜けていく。めざすは沼津御用邸だ。そこに歴史民俗資料館があるので、見学していきます。しかしちょっと寒々としすぎていて、印象は良くない。とりあえず、いろいろと見ていきました。
明治の窓ガラスらしく、微妙にゆがんでいて味がある。
次は静岡陶芸美術館です。ららぽーと沼津の隣にある。新春特別企画展で「人間国宝のすべて」をやっていた。落ち着いた平屋建ての新しい美術館だ。来館者も稀で、静かなのがいい。
濱田庄司から始まる。
これは別の方の、沖縄壺屋焼風。
伝統的モチーフの唐三彩馬。現代風で美しい。
酒井田柿右衛門の十八番です。
この形の壺を「蹲(うずくまる)」というそうだ。室町時代に農民が穀物の種を保管するために焼いたという。後に茶人がその美を見出して、茶室の花入れに転用した。
また一つ、焼き物の知識を覚えました。
退館しようとしたら、呼び止めるものがあった。柿右衛門手の沼津宿之圖。これで五十三次一揃えあったら、値段はおいくらだろうか。高級車が数台買えそうだ。
今日の最後になります。頭も疲れたけれど、がんばって行こう。沼津市明治史料館です。国道1号線に面しているのに、カーナビは狭い裏道にこだわる。
うんちくは抜きにして、午前中に大平地区を歩いていたらポスターを見つけたのである。今日はこういう企画展。ならば寄らないわけにはいきません。
こんなマップもあるらしい。大平地区センターでもらえる。
いろいろと大平の歴史を勉強しましたが、こんな写真に目が止まった。大正時代の石切り場の風景。まさにあの沼津アルプストンネルの出口がここにできたのです。時代の変遷というものは凄いです。
今日は大平に始まり、大平で終わった。では富士宮へ移動します。
つづく