日高山脈全山縦走(後編) | 降っても晴れても

降っても晴れても

山に登ったり走ったり、東へ西へ・・・

  以下、1980年夏の記録の続きです。
 
【8月8日】 快晴 
出発4:51~ルベツネ6:07~1600m峰8:47-9:15~ヤオロマップ13:15
1600m峰を越えてから非常に暑くなり、風の当たらない場所も多く、ペースも上がらない。
全体的にフミアトがあって迷うことはない。1パーティとすれ違った。
まるで東京の夏のような空だ。雨はこの先も降る兆しはない。
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【8月9日】 晴れ 
休養日とする。一日中空腹との戦いだ。なんとなく体がだるい。
7人と4人のパーティが北から来た。ヤオロマップの頂上に今夜は17人が泊まる。
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【8月10日】 晴れ 
出発4:13~コイカクシュサツナイ最高点5:59-6:10~1823m頂上(幕営)9:37
暑さを考慮しての3時メシ。非常に好調に歩いたが最後の1本はクソ暑くてバテた。
近くの山も霞んでよく見えない、いやな天気だ。早く出て良かった。
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【8月11日】 
出発4:11~ピラミッド7:18~カムイエクウチカウシ8:48-9:30~九ノ沢のコル10:35~1917m12:20
今日のルートは草地帯はルート明瞭だがハイマツ帯は枝がかなりうるさい。ルーファイの必要は全くない。八ノ沢も九ノ沢も雪渓が残っている。
九ノ沢の雪渓は近く、フミアトもある。水はさらにほんの少し下ると冷水がどうどうと流れている。
雪をビニール袋に入れて幕場へ運び、アイスコーヒーを飲んだ。うまい!
暑くて苦しい登りを終えて頂に佇み、一体何を考えたらいいのだろう?
無心、無我の思いだ。今日の行動はいいパターンだった。
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    ピラミッドピークの夏
 
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        カムイエクウチカウシにて
 
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        九ノ沢への水汲み
 
【8月12日】 晴れ 
出発4:18~エサオマントッタベツ8:20-50~上二股13:20
水量がかなり少ない。10時半より、ワラジをつける。大滝二段15mは左岸を巻く
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【8月13日】 晴れ 
出発5:13~七ツ沼の沢出合9:20-50~七ツ沼カール10:55-11:05~幌尻岳12:02-20~幕場13:13
登りは昨日よりも滝が多い。高巻き2回あり。申し分のない天気。
七ツ沼は全て涸れていた。
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        戸蔦別岳への稜線
 
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        幌尻岳山頂をめざして
 
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幌尻岳に、ついに登頂! でもまだ先は長くて険しい!
 
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         七ツ沼カールへ下る
 
【8月14日】 雨 
出発5:07~戸蔦別5:58-6:20~河原7:38-50~幌尻山荘8:35~林道10:55~行動終了17:30
夜の12時半頃、半分夢の中で突然ツェルトが真っ赤に映えた。
なんだか解らない騒ぎになっている。一瞬火事だ、と思ったが「クマだ」という誰かの叫びを聞いた。
急いで外へ出てみると七ツ沼カールの幌尻岳寄りにテントを張っていたS工大山岳部の3人がいた。S工大のテントがクマに襲われて、命からがら逃げてきたとのこと。かなりショックを受けていた。
金子が突然「あ」と言う。カールバントに熊の目が光ったという。
すごいスピードでその光が近づいてきたとも言った。
みんなで外に立ち、食器を叩き、笛を鳴らして騒ぎ続けた。爆竹も鳴らした。
あたりは真っ暗闇で、稜線と空の区別がつくに過ぎない。恐怖の時間が過ぎてゆく。
 
4時を回るとあたりは少し明るくなってきた。
これで下山するべきなのか、判断に迷った。クマに出遭って下山というのは正しい判断なのか?
芽室岳までのヤブの激しさを考えるとうんざりするし、水も得難い。
楽古岳から幌尻岳まで、「ほぼ全山」は縦走できたし、この事件が良い機会なのかもしれない。そうと決めたら一刻も早く逃げなければならない。
二人ずつ交代で撤収・パッキングをした。こんな時にも1年生の行動ののろさにいらだつ。
 
戸蔦別の稜線へ登り始める。悪夢の七ツ沼カールが足元になっていく。草付が多いが茂みの中は不気味である。戸蔦別岳の一つ先のコブから下る道は地をはうハイマツの枝や、下のほうでは深い笹ヤブがあって、とても一般ルートとは思えない。
林道までの数回の渡渉でみんな靴の中がプールになった。
気の遠くなるような最後の林道歩き。
 
夏合宿は終わってしまった。振り返ればあっという間だった。
日高山脈全山縦走は終わった・・・
初めての雨、合宿の終りを告げる激しい雨にうたれて・・・