日高山脈全山縦走(前編) | 降っても晴れても

降っても晴れても

山に登ったり走ったり、東へ西へ・・・

 もう遥か遠い昔のことになりましたが、、、
 法政大学ワンダーマウンテンクラブの夏合宿として、日高山脈全山縦走を計画しました。
 リーダーとしては2年半の活動の集大成となる、夢の大企画です。
 1980年の記録です。
 
 7月23日~7月28日 先発隊、荷揚げデポ。
 7月29日~8月14日 本隊、楽古岳~幌尻・戸蔦別岳
 
 リーダー:私  サブリーダー:金子 ・・・3年生
 槙野・正兼 ・・・2年生
 堀口・山本 ・・・1年生   以上6人
 
  以下、手帳の記録より。
 
【7月23日】 フェリーで東京を出発。24日は終日海の上でゴロ寝して過ごす。
 
【7月25日】 苫小牧港着6:45~苫小牧駅発9:02~静内駅着10:47~タクシー出発11:10~ペテガリ山荘着12:30  
先発隊の私と金子で、縦走の中間地点であるペテガリ岳へ一斗缶のデポを揚げるべく出発した。デポには後半戦の乾燥食料や燃料を入れてある。
注:今はタクシーは入れません。
 
【7月26日】 曇り一時小雨  
ペテガリ山荘出発4:25~1050m地点6:15~ペテガリ岳山頂11:08-45~ペテガリ山荘14:53
ペテガリ岳西尾根を登る。所々に熊が掘り返した跡がある。アップダウンの厳しい尾根だ。ガスがかかると幾つものニセピークにだまされる。10時間30分の行動。
太陽が出ないだけ救われたが、長旅の直後だけに非常に苦しい荷揚げだった。
夜は北大の人に焼酎をふるまわれて、意識がなくなるまで飲んだ。
 
【7月27日】 晴れ  激しい二日酔いだった。山荘からタクシーで静内駅へ。そして電車で様似へ向かう。バス停でステーションビバークする。
 
【7月28日】 曇り一時晴れ  待ちくたびれた頃、本隊の4人が様似駅へ着く。すぐにバスで広尾へ。再びバス停でステーションビバーク。いよいよ始まる時がきた。長い長いアプローチだった。
もうあとはどんなことがあっても計画を遂行し、夏の「全山縦走」を成功させるのだ!
 
【7月29日】 曇り一時晴れ 
登山口出発6:53~渡渉点7:25~尾根取付(幕営)8:03
タクシーは地図の道より奥まで入り、1時間も歩くと取付に着いた。数回の渡渉はあるが道はしっかりしている。やっと始まった合宿の初日がこれでは気抜けしそうだが、計画通りに消化することを旨とし、明日から気合いを入れていくことにする。
 
【7月30日】 晴れ  
出発5:25~楽古岳8:48-9:15~コル手前のコブの手前(幕営)14:52
10:18に正兼がネンザする。正兼は空身で歩き、ザックはデポと往復の繰り返しで前へ進めていく。
今度は堀口がネンザした。残る4人で交代で6個のキスリングを搬送する。
暑さも昼飯まではガマンできたが、コルまでのヤブは想像以上に深く、重荷に足もとられて皆くたくたである。少し気がたるんでいるようだ。
とにかくえらく暑かった。
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             楽古岳にて
 
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       楽古岳より北を望む
 
【7月31日】 ガスと風  
出発5:20~十勝岳9:15-40~オムシャ手前のコル13:23~オムシャ間のコル(幕営)15:10
終日ほのかな霧雨混じりの強風が十勝側から吹きつけてガスっていた。
正兼の足を気遣い荷物を分担して軽くさせる。出だしから槙野がえらく遅い。
みんな遅くて、ゆっくり歩くとかえって疲れるので最後には腹がたった。リーダーのキスリングだって軽くはないのだ。天気のせいかヤブは昨日ほどきつくは感じない。ハイマツとお花畑がほとんどで、ずっと日高側をからんでいく。ところどころフミアトがある。
オムシャ周辺は巨岩をぶちまけたような奇怪なところだ。
ツェルトを張る頃、ガスの中に西峰がすっくと立ち上がった。様似の海岸もここから見える。
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 軽量化のため、6人でツェルト×2張とした。キスリングにはポンチョをかける。ヒグマには無防備だ。
 
【8月1日】 
出発4:44~オムシャ西峰5:25-35~水場のコル8:11-9:50~野塚東峰10:33-43~幕営地点14:52
オムシャ西峰でブロッケンを見た。上空は晴れ。稜線は強風にガスが流れていく。
アポイやカムイまで見える。水場のコルからは往復1時間をかけて沢へ水汲みにゆく。(下り12分・登り25分) 縦走中はたいへん貴重な水である。
野塚東峰南のコルから西峰やや北までの間はフミアトがあって非常に歩きやすい。
後半は皆とてもバテていた。幕場に着いてもなかなか動かない。驚くほどだった。
正兼はだいぶ正常に歩けるようになった。堀口が精神的につらそう。みんなの顔色や体調を常に観察する。今は日数の長さは考えない。今日の最後はトヨニの夕焼けを眺めながら冷ややっこを食った。
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【8月2日】 
出発4:48~6:31金子倒れる~トヨニ北峰11:58~幕営地点16:35
2回目の休憩の瞬間に金子が倒れ込んだ。水と軽食を与えて回復を待つ。10時を過ぎたらもう暑さの極致である。岩陰でうだ~っとする。水汲みは春別川へ下る。冷たい!
幕場に着くと雲の彼方に楽古岳が秀峰の名に恥じない姿で立っていた。
この先の長さを思うより、来し方の山並みがなつかしく思われる。
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【8月3日】 快晴 
出発4:58~1513m7:31~幕営地10:28
稜線上は十勝側からの風が強い。ガスがどんどん流れては消えていく。金子がいまだに不調のため、ピリカ登らずに幕とする。十勝側の斜面で、整地を要する場所である。ゆっくり半停滞。
隊員の不調は休養日の大義名分になるが、その分前には進まないので良いともいえない。
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       ピリカヌプリを望む
 
【8月4日】 晴れ 
出発5:20~ピリカヌプリ6:39-50~1529m9:02~ソエマツ山頂(幕営)10:51
今日のルートはヤブもあまり深くない。部分的に歩きづらいのみ。
金子も順調。幕営後、水汲みに行く。南のコルからソエマツ沢へ下り20分・登り40分。
水は汲みづらく、場所も危険。
 
【8月5日】 非常に寒い 
出発5:32~神威山頂(幕営)12:46
入山以来一番寒い日だった。稜線から見るソエマツ沢も水は少ないように見えた。パウパウを飲んだ。
台風が鳥島の東方に来ているので停滞があるかもしれない、そんなつもりで神威までがんばった。
他の山は見えない。何故か他の山行のことばかり考えていた。
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       神威岳の雄姿
 
【8月6日】 快晴無風 
出発5:15~ベッピリガイ尾根分岐の頭直下のガレ場(幕営)13:28
今日の行程はヤブが深かった。正兼が腹の痙攣を起こすが2分でおさまった。
幕場から水汲みに行く。下り10分。流水多くて冷たい、最高の場所。
それほどの暑さではないが、中たるみなのか自分も体がだるい。
歩くのがつらくなると、何のための全山縦走なのかと考えてしまう。日々が惰性になってきた。
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        朝の中ノ岳にて
 
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【8月7日】 ガス 
出発4:37~中ノ岳5:03~下降尾根の頭10:10~ペテガリ岳12:41-13:33~Cカール(幕営)14:53
朝はまるで秋のようにカラッとして、気持ちのいい風が吹いた。
中ノ岳~下降尾根の頭の間は、笹・スズタケ・ダケカンバなどのヤブが非常に深い。
1839m峰がよく見える、朝のペテガリの眺めは爽快だった。
台風の影響らしき絹のような雲がペテガリの上を覆っている。
2年生のペースが遅いのであるが、彼らは様々なアクシデントや逆境に耐えてよく頑張っている。
ここまで予定通りに来れたことは天候の状態や体調なども含めて幸運だった。
いよいよ合宿は後半を迎えた。一日くらい休養日が必要かと考える。
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ペテガリ岳山頂にて。デポを回収し、また重くなる。
後編へ続く