昔ながらの喫茶店・赤いビロードの椅子 | 遊歩徒然(NOBUのつぶやき)

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                                                   京都

 

ドアから中へ

古風な椅子

赤いビロード

 

もう忘れる程

昔々

喫茶店ではよく見かけた

 

赤いビロードの椅子

 

もう忘れるほど

昔々

東京の渋谷

壁には帆船の絵

 

椅子はビロードの赤

煙草の煙が漂う

クラシックのレコードが優しい

 

指定された喫茶店

 

話しは別れ話

学生だった

三年も付き合っていた

 

不都合な出来事がいくつか

重なっていた

 

いつもの部屋ではなく

 

赤いビロードの椅子のある喫茶室

 

話しの内容は予想していた

別れるにはいつもの場所では

ない事が大事だった

 

予想していたことでも

胸の痛みは計り知れない

 

心の中で

「別れたくない」という言葉が

渦を巻いた

 

言葉にはできず

 

ただ頷いた

 

何年か引きずった痛い想い

 

新しい恋が訪れるまで

劣等感と戦った

 

新しい恋は

全心身を肯定し

包みこんでくれた

 

それは愛

蘇生

自分らしく活きる

 

赤いビロードの椅子の

喫茶店

いま、まだあった

京都の街中に

 

歳月はその時の痛みさえ消し去り

若さを遠く懐かしむ

 

歳月は赤いビロードの椅子を

懐かしむ

 

異郷の地の喫茶店

 

                      2022.5.15 曇 23℃