今日の夕空
大伴坂上大嬢(おほとものさかのうえのおほいらつめ)大伴宿禰家持に贈る歌
我が名はも千名(ちな)の五百名(いほな)に
立ちぬとも君が名立たば惜しみこそ泣け
万葉集・4-731
(私の浮名はどんなにひどく立っても我慢できますが、あなたの浮名が立ったらそれがくやしくて泣かずにはおれません)
大伴宿禰家持が和(こた)ふる歌
今しはし名の惜しけくも我れはなし
妹によりては千たび立つとも 万葉集・4-732
(やっとお逢いできた今はもう、名を惜しむ気持ちなど私にはさらさらありません。あなたのせいなら千度も浮名が立ったとしても)
伊藤博・訳注
万葉の歌の激しい恋も、相手のためならば忍びますという健気な心歌
現代では少なくなったかもしれない忍ぶ心
心を騙しだまし歌に想いを託して晒す潔さも感じる
持続可能なことではなくても、いっときの燃える想いは、痛手、深手を負っても想い合えたら無上の喜びであろうかと
何もなく平穏で幸せな時
何もなく幸せであると
騙しだまし生きること
それはそれで幸せ
平穏無事が幸せと感じられない
不幸もの
それはそれで不幸ものの
幸せ
そうでなければ
死んだも同然の
不幸ものの
幸せ
今日は昨日になる
騙しだましの一日が
幸せであること以上に
不幸せだと勘違いする一日が
明日という今日になっていく
何事もない日を
騙しながら生きる
不幸ものの泪
あなたも
私も
本当は幸せなのかもしれないのに
本当は幸せに違いないのに
2022.5.17 曇・夕方晴 23℃