「お金は交換するもの、それ自体に価値などない。」
そう思えるようになったのは、ジョニーがまだ売れていなかったころ、「商品の向こう側にいる顧客に、どのような価値を提供するか？」を真剣に考えているときだった。私の中で何かが壊れ、新たな価値の創造がはじまったことを憶えている。
「ディート不使用」
「生分解する材料で製造」
「ヤマビルの嫌悪感を払拭するネーミング」
「高品質スプレー」
「親しみやすいプレゼントキャンペーン」
「ヤマビルに対する質問にしっかり対応すること」
「ちょうどよい忌避効果」
ニッチ商品だけに、どれだけがんばっても鳴かず飛ばずで、経営はまったくうまくいっていかなかったけど、事業に掛ける思いは日に日に増すばかりだった。「どんな狭い領域でもいいから日本一になれ！」という教えだけが支えだった。
…
事業をはじめるとき、「ついに西村は狂った」とか、「ヤマビルなんかで食えるわけがないだろう」とか、「なんでヤマビルなの？気持ち悪い」とか、「次の選挙で当選するのにもったいない」とか、肯定的な意見はまったく聞こえてくることがなかった。当時の私は満身創痍であったことは間違いない。でも、創造性もなく、ただ生活のために退屈な時間を過ごすことだけはしたくないという強い意志だけは明確にあった。
正直、ヤマビルじゃなくてもよかったし、スモールビジネスを選択したというよりも、お金がまったくなかったので節約と効率を突き詰めていった結果、現在の経営状態ができあがったとしか言いようがない。来社する人は一様に驚く、「ここで作っているんですか？」19年間でつくり上げた私の日常は珍しいらしい。
私の思考も珍しいらしい。安定という名の地獄に身をおけるひとには特に理解されない。挑戦したい人間、挑戦している人間の応援をすることの価値が理解できないのだろう。「妬み、ひがみ、嫉み」で自らを正当化する連中をいっぱい見てきた、みんな群れていた。
この道を行けばどうなるものか。
危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし。
踏み出せばその一歩がみちとなり、
その一歩が道となる。
迷わず行けよ、
行けばわかるさ。
熱狂という地獄を経験しなければ、心の安寧を得ることはできない。
…
まあ生きることなどそれほど意味はないから、のんびり楽しいことをしていきます。
合掌