働くということ・28 石崎由則さん | くるまの達人

くるまの達人

とか、タイトルで謳いながら、実はただの日記だったりするけど、いいですか?

石崎産業株式会社
代表取締役社長 石崎由則さん


私の親父が木箱製造業として興したの
が、この会社の始まりです。創業当時
は従業員もわずかな小さな会社で、夜
の夜中まで内職のようなことをやって
るおふくろの姿を見ながら学生時代を
過ごしたことを覚えてます。

浮き沈みなんて生やさしい言葉で表現
できないほど大変でしたが、それでも
私の代になってようやく安定し、最先
端の梱包材や環境事業など、幅広く活
動する企業に成長させることができま
した。

ところが組織が大きくなってくると、
それまで気にも留めなかった問題が悩
みの種になるんですよ。

つまり従業員たちと密にコミュニケー
ションを取ることが難しくなってくる
んです。

私は、企業=人だと確信しています。
働いているみんなが職場で何かを感じ
て、いろんな意味でやりがいを持って
くれて、生活の場でもあることが何よ
りも大事ですし、経営者はそれを実現
していかなきゃならないわけです。

もちろん経営的にどうなんだという
数字を追うことも大切ですが、瞬間的
に業績が芳しくないからといって、そ
の事業をすぐに畳んでしまうというの
は違うと思うんです。

その仕事に携わっている従業員たちに、
良くしようという意識があって、改善
のためのアイデアを持ち寄って実践し
ようという行動力があるのなら、よし
もう一踏ん張り頑張ってみるかと旗を
振ってやることが、私に求められてい
る役目だと信じてますから。

けれども組織の肥大化は、私の目の届
く範囲を限定してしまいます。従業員
100人くらいで頑張っていた若い頃の
ほうが、よっぽど気持ちが通じてたな
と、つくづく思うくらいです。

ただ、だからといってどうせ上には届
かないと考えるのではなくて、必要だ
と思ったことは声を大にして主張する
ということは、とても重要なことです。

私もなるべくすべての従業員と接点が
持てるように頑張らなければならない
のですが、なかなかその機会がないと
いうのなら、直属の上司に意見を主張
することから始めてもいいわけです。
ただし、自分で何も努力せずに、ただ
文句ばっかり言ってくるようでは話に
なりません。

意見を述べるということは、自分自身
がその裏付けになるような行動を取っ
ているかどうかが問われる行為なんで
す。

実は私も、自分の行動や発言が他人に
どうとられているんだろうということ
が、とても気になる性格なんです。

精神的に弱いところがあると思います。
少し贅沢をしてるなと自覚すると、社
長なら贅沢してもいいのか? と、誰
かが思ってないだろうかなんてことが
気になる方なんです。

けれどもある時、そんな自分の気持ち
に見切りを付けましてね。

人生一回きりだから、やりたいことは
やると決めたらやるんだ、って。

その代わり、オレはやらなければなら
ないことも、誰よりもこなしているん
だって自覚が持てる行動をとるんだっ
て。

そうすれば、コソコソすることなんか
何もないじゃないかって、そう考える
ようにしたわけです。

もし私が、そういう気持ちでいられな
くなってしまったら、その時は潔く今
の立場から退くべきでしょうね。組織
が成り立たなくなってしまいます。

今は誰に後ろ指指されることなく人一
倍やっているという自信があるし、だ
からこそ経営者として先頭切って走っ
ているわけです。

それこそね、何かあったら腹斬る覚悟
でやってるんですよ。だって、そうじ
ゃなきゃ人はついてこんでしょ。

Interview, Writing: 山口宗久

「かもめ」2006年6月号掲載
※内容は、すべて取材時のものです


※記事掲載への思いについて。




山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
Twitter / nineover
facebook / Yamaguchi Munehisa