働くということ・07 大西健丞さん | くるまの達人

くるまの達人

とか、タイトルで謳いながら、実はただの日記だったりするけど、いいですか?

NGOピース ウィンズ・ジャパン
統括責任者 大西健丞さん


僕、現場へ行くと安からな顔になるん
です。

現場というのは、アフガニスタンであ
ったりイラクであったり、つまり頬を
かすめて弾丸が飛んでいくような場所
のことです。

ひょっとしたら自分の人生が、1発の
弾丸で簡単に終わってしまうかもしれ
ない、というくらいの知識は持ってい
るし、実際何人もの知り合いが命を落
としているけど、それでも僕はそこで
安らかな気持ちになれるんです。

あのね、死を意識したこと、あります
か。

人間って必ずいつか、死んでしまうん
ですよね。

僕の親父は、病院でホースに繋がれて、
生死の選択権もなく延命させられたあ
げく、結局死んでいきました。

まだ若かった僕には、とても衝撃的な
記憶として残ったんです。僕はこんな
死に方をしたくない。自分の中のパッ
ションを燃焼させてる真っ最中に逝っ
てしまう。そんな選択ができたら、そ
っちのほうがよっぽど幸せに違いない。

初めてイラクで海外のNGOの活躍に遭
遇したのは、ちょうどそんな思いを強
く抱いてたころです。

彼らは、政府顔負けの組織力と行動力
で、紛争地帯に起こるあらゆる問題に
取り組んでいました。

日本には、政府と経済界に次ぐ彼らの
ような組織がない。

自分の手で、そういう組織を立ち上げ、
民意に支えられた第3の勢力として根
づかせたい。

若くてピュアでしたから、あっという
間にハマっていったわけです。

困った人を助けなくては、みたいな、
そんな崇高な使命感に突き動かされて
いるわけではないんです。

悲惨な状況の人たちに、毛布や水を配
って喜んでもらって、自分も気持ち良
くなりたいというような感覚じゃない
んですよね。

ただ、社会に関わっていくからには、
破壊行為ではなく世の中の役に立つ事
業のほうが、当然はるかにやりがいが
あるでしょ。それが、僕のNGO観です。

もし自分の中に何らかのパッションが
存在することを感じているにも関わら
ず、その燃焼方法が分からずにストレ
スを抱えてる人がいるとすれば、それ
はとてつもなく不幸なことだと思いま
す。

でもきっとその原因は、自分自身にあ
るんじゃないですか。つまり、そうい
う人はやはり怠惰なんですよ。

仕事ができる人というのは、みんな負
けず嫌いですから。

途中で諦めるか、諦めないか。

頑張るヤツは、取り組もうとすること
に対するセンスがあろうがなかろうが、
必ずある程度のところまで上ってきま
す。

どんなにええもん持ってても、やらへ
んかったら終わりでしょ。

それが、自分の中のパッションの燃や
し方。つまり、やりがいを感じる生き
方だと思うんです。

あと何年、今のような活動を続けるの
かなんて、僕にもわかりません。

毎回、これで終わりにしよう、今度こ
そ死んでしまうかもしれないって、本
気で思いますからね。

でも日本に帰ってきて、なにか突き抜
けない気持ちで暮らしていると、次は
あの土地で進行中のミッションをもう
1段階先まで進めるために現地へ入ろ
うって、気がはやってくるんです。そ
して、また彼の地を踏むことになるわ
けです。

なんて言うんだろう。すごく自然な状
態で自分の中のなにかが完全燃焼して
る感じがするんですよね。

そこがどんなに危険でも、自分らしく
生きてる手ごたえが、心地いいんです。

Interview, Writing: 山口宗久


かもめ・2004年7月号掲載
※内容は、すべて取材時のものです

※記事掲載への思いについて。


山口宗久(YAMAGUCHI-MUNEHISA.COM)
Twitter / nineover
facebook / Yamaguchi Munehisa